第8章 命の連鎖
足が止まった。足元の、崩れた瓦礫の中に倒れた少年を見つけた。
その胸は、ほとんど動いていなかった。
ほぼ命の色を残さない頬。だが、まだ微かに熱がある。
灰の上で、尽きる寸前の命が、かろうじて燃えていた。
慧吾は膝をつき、そっと手を伸ばした。
「……まだ……間に合う」
掌が少年の胸に触れた瞬間、慧吾の光が脈を打った。
それは“癒し”ではなく、もっと根源的な──生命の火を呼び戻すような脈動だった。
「……目を…覚ませ…」
光が溢れる。慧吾の身体が震え、視界が白く染まる。
「……生きろ…!」
胸の奥で痛みが爆ぜた。光が暴走する。灰が舞い上がり、空が裂ける。
次の瞬間、慧吾の身体が崩れ落ちた。少年の胸がほんのわずかに脈を打つ。
そして──完全な静寂。
灰の中で、少年のまぶたがわずかに震えた。瞳は開かない。
だが、そこに慧吾の光が映っていた。喉を無理やりこじ開けたように、少年は掠れた声で呟いた。
「……ひか……り……」
その言葉を最後に、慧吾は意識を失った。
「慧吾!!」
蔓延るエコーズを叩き割りながら、ジャックがやっと駆け寄る。
腰のβが焼けるほど熱い。瓦礫を蹴散らして、慧吾を抱き起こした。
「おい……生きてやがんだろうな、慧吾!」
反応はない。だが、その胸の奥で微かな光が瞬いた。
同時に、ジャックの腰のβが共鳴する。鈍い赤黒い光が、慧吾の心臓に呼応して震えた。
「……なんだこれは……」
ジャックが顔を上げると、視界の端に倒れた少年が映った。
焼け焦げた衣服の裾に縫い込まれた糸が、慧吾の光に反射している。
「……クソッ……冗談じゃねぇ……」
拳を握りしめ、唇を噛む。
「……そんなわけにいくかよ……!!」
風が吹いた。灰を巻き上げ、遠くの空に消えていく。
慧吾の胸の光はかすかに息をしていた。
そしてその隣――少年の胸の奥でも、同じように何かが脈打っていた。




