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透明の心臓  作者: 水瀬 悠里
Ⅲ 風の共鳴
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第8章 命の連鎖

足が止まった。足元の、崩れた瓦礫の中に倒れた少年を見つけた。

その胸は、ほとんど動いていなかった。

ほぼ命の色を残さない頬。だが、まだ微かに熱がある。


灰の上で、尽きる寸前の命が、かろうじて燃えていた。


慧吾は膝をつき、そっと手を伸ばした。


「……まだ……間に合う」


掌が少年の胸に触れた瞬間、慧吾の光が脈を打った。


それは“癒し”ではなく、もっと根源的な──生命の火を呼び戻すような脈動だった。


「……目を…覚ませ…」


光が溢れる。慧吾の身体が震え、視界が白く染まる。


「……生きろ…!」


胸の奥で痛みが爆ぜた。光が暴走する。灰が舞い上がり、空が裂ける。


次の瞬間、慧吾の身体が崩れ落ちた。少年の胸がほんのわずかに脈を打つ。


そして──完全な静寂。


灰の中で、少年のまぶたがわずかに震えた。瞳は開かない。

だが、そこに慧吾の光が映っていた。喉を無理やりこじ開けたように、少年は掠れた声で呟いた。


「……ひか……り……」


その言葉を最後に、慧吾は意識を失った。



「慧吾!!」


蔓延るエコーズを叩き割りながら、ジャックがやっと駆け寄る。


腰のβが焼けるほど熱い。瓦礫を蹴散らして、慧吾を抱き起こした。


「おい……生きてやがんだろうな、慧吾!」


反応はない。だが、その胸の奥で微かな光が瞬いた。


同時に、ジャックの腰のβが共鳴する。鈍い赤黒い光が、慧吾の心臓に呼応して震えた。


「……なんだこれは……」


ジャックが顔を上げると、視界の端に倒れた少年が映った。


焼け焦げた衣服の裾に縫い込まれた糸が、慧吾の光に反射している。


「……クソッ……冗談じゃねぇ……」


拳を握りしめ、唇を噛む。


「……そんなわけにいくかよ……!!」


風が吹いた。灰を巻き上げ、遠くの空に消えていく。


慧吾の胸の光はかすかに息をしていた。


そしてその隣――少年の胸の奥でも、同じように何かが脈打っていた。

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