第20話「新団員誕生 〜前編〜」
私達は魔晶車に乗り、本部へと向かう。
乗っている間、アーシャさんから
様々な写真を見せてもらっていた。
ジャンヌさんだけの写真集、
アランさんだけの写真集、
リスラル大陸の様々な景色が
撮られている写真集など。
ジャンヌさんの写真集には、
装備性とファッション性が兼ね備えられた
鎧を着て、剣を構えたりしている姿から、
流行している、と言われている綺麗な服装を
着こなしている姿まで、様々な撮られた写真が
載せられてあった。アランさんの写真集にも
同じような感じで写真が載せられている。
「お、おぉ……」
私はジャンヌさんのかっこ可愛く、美しい姿や
アランさんのかっこいい姿に感嘆の声を
上げていた。アランさんの姿に感嘆の声を
上げていた時、その本人からは少し照れ顔で
こちらに視線を当てていたのに対し、
ユースからちょっとだけムッとした表情で
こちらに視線を当てられていたような
気もするが、次々と写真集を出していく
アーシャさんの方に気を取られてしまう。
「えーっと……あっ、これ!」
今度はリスラル大陸の様々な景色が
映し出されている写真集を見せてもらう。
「……んん……?」
此処、アステール都の壮大な景色や、
何か神々しい大樹を幻想的な木々が囲み、
何やら小さな羽の生えた人間……いや、
沢山の妖精の姿がそこに映し出された景色、
地平線まで続く海が広がり、その地平線に
太陽が沈みかけている景色、そして
火山と雪山が分かれて映し出されている
正に対比の景色、その雪山の方には何か
街のようなものが見える景色、最後に
大規模な鉱山とその近くの渓谷に造られた
渓谷都市が映し出された壮大な景色。
「………」
私はその全てを息を呑みながら見ていた。
物凄い景色の連続。しかしあることに気づく。
ここまで一気に新たな情報が入ってきても、
何も私に異変がない。記憶に何も関係がないのか。
リスラル大陸中の景色を知っても、特に何も
私は何も思い出すことはできなかった。
「ルナ、何かあった?」
「……!ううん、特には……
記憶に関係する物ももしかしたら
あったりしないかなぁ、って
思いながら見てたけど……」
特に何も無かった、と言った後、
魔晶車の中に居た、制服を着た
女性の人が「魔導ギルド本部です。
お降りの際は乗車券をお渡しください」
と言い、魔晶車は停車する。
アーシャさんは写真集を急いで
鞄に詰め込み、私達は魔晶車から降りた。
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私達は魔導ギルド本部の入り口の門に着く。
本部はただ一つの建物だけじゃないらしく、
なんと一つの町のような感じになっている
らしい。門をくぐると、そこには様々な
施設が道に沿って建っており、それは
物凄く綺麗な並びで建っている。
何か規則性があるのか、と思いながら
町のような本部の中を移動していく。
……それにしても。
「……なんでこんなに人が……」
私達が通っていく道の側に沢山の
魔道士の服装をした人々がこちらに
視線を当てていた。先ほど街中を
歩いていた程ではないものの、
流石にさっきから大量の視線を
浴びさせられて、なんだか恥ずかしかった。
「俺にとってはいつものことだよ、ルナさん」
「は、はぁ……」
アランさんはそう言うが、逆にこれが
いつものことなんて物凄い落ち着きのない
生活をしているのか、という疑問まで浮かばせる。
「まぁ、アランさんはジャンヌさんに
負けないぐらい人気だからねー」
アーシャさんがそう言いながら、
いつの間に買ったのか、串に
刺された唐揚げを一つ食べていた。
………
そうこうしていると、魔導ギルドの本部に
私達はたどり着いた。門があり、
そこを抜けると広場のようなところに出て、
真ん中に噴水と時計台が建てられている。
そして、その広場を囲むように壮大な
建築物が建てられている。
すると、噴水の近くで立っていた
女性の人がこちらに近づいてきた。
「お待ちしておりました、皆様。
魔導士の本登録の受付はこちらです」
と、何か案内するような仕草をする。
軽くアランさんが会釈した後、
私達は女性について行く。
……魔導士。
そういえば、その資格は確か入会試験に
合格しなければ取得できなかったのでは、
とふと思い出す。
「……そういえば、魔導士って
入会試験がいるんでしたっけ」
「本来であれば入会試験に合格しなければ
取得できない資格ですが、ルナさんは
ジュエリーゴーレムを撃破し、さらに
カース国の幹部の部下が率いる軍のアジトの
殲滅に一躍活躍した事から、特別に
入会試験を免除しての本登録となります」
なるほど。
女性の淡々とした説明を聞いた後、
「こちらが本登録の受付場となります」
と言う。そして広場の入り口から見て
右側の建物の入り口の前に私達はたどり着く。
アランさんに着いて来ていた魔導士の人達は
ここで別れることとなった。
そして、私はこの建物の中で
魔導士の本登録をすることになる。
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建物の中に入ると、とある部屋の一室に案内される。
部屋の中には長机とそれを囲むようにソファーが
並べて置かれている。私達は扉の入り口から見て
東側のソファーに座り、職員の人が数人西側の
ソファーに座る。私達は軽く自己紹介をした後、
「では、こちらの用紙に覚えている限りで
名前などをご記入ください」と言われ、
一枚の紙と筆ペンを私に手渡される。
名前、性別、年齢、戦闘形式、
故郷名、その他……
記入できるものなんて、限られていた。
しかし、「名前と性別と年齢は必須」だと
紙に書かれてあった。
「……年齢、分かんない……」
私はそう呟くしかなかった。
「少なくとも成人……まず
16歳以上ではあるとは思うけど……」
アーシャさんがそう言うと、アランさんや
ユースに視線を当てる。二人は軽く頷いた。
「ユース君は、ルナさん
の事何歳に見えると思う?」
「……うーん……17歳か18歳か
ぐらいじゃないですかね……」
私の年齢の為にかなり議論を
してくれている三人。
すると、ユースがその議論に
終止符を打った。
「僕の年齢が18歳だから、
僕と一緒で18歳……とかどう?」
そう言うと急に私に向け視線を当ててくる。
私は別に年齢とかはあまり関係ないとは
思ってた為、それでいいよ、と頷いた。
そして次に戦闘方式など、一枚の用紙だけでも
色んな事を覚えている限り書いていく。
戦闘方式でどう書くか悩んだが、正直に
「腕輪の力を借りて魔力で剣を精製したり
光線を放ったりして戦う」と記入した。
ついでに「この腕輪は神器かもしれない」と
記入すると、ユース以外の全員が少し驚いた。
アランさんは事前に情報を得ていたのか
あまり動じはしなかったが、他の人、
特にアーシャさんが一番驚いていた。
「え、ええっ!?神器!?基本的に
団長しか持ってないあの神器を!!?」
そう言ってアーシャさんは私が右腕に
付けている腕輪にじーっと強い視線を当てた。
私は一瞬身をたじろがせ、苦笑いをした。
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そして、用紙に覚えている事を書けるだけ
書いた後、様々な資料を手渡される。
それらは全て魔導ギルドの魔導士の資格を
取る上での契約書のようなものだった。
それらを全て読み、最後の同意確認に
同意の方にチェックを入れだ。
さらに、様々な細かい手続きが行われ、
いつのまにか昼前の時間帯となっていた。
私達は魔導士用の制服……まぁ、
戦闘用の服装を選ぶ為と
写真撮影の為に部屋を
移動することになった。
「……お、おぉ……?」
とある一室の中に、様々な制服……
いや、一部は装備と言った方が良いものが
沢山人の形をした棒に飾られていた。
先程別れたあの魔導士の人達が来ていた
ような、頭まで布地で覆い顔面以外は
全てローブ姿で隠されているような制服や、
首の上まで布地はなく、動きやすそうな
ローブ姿の服装もある。見た感じ
太腿の途中から服の布地で隠されていない。
他にも、様々な制服があるが……
「……んー……」
……多すぎて、迷ってしまう。
そもそも、自分の戦闘形式に合うような
服装にしないと後々困るのは分かってるから
ここは慎重に選ばなければならない。
「ルナちゃん」
「……はい?」
「あれ、どう?」
アーシャさんが声をかけてくる。
私はその声と共にアーシャさんが
指をさした方向に目を向けると……
「……い、いや可笑しいですよね!?」
そこには、まるで自分自身を守る気が
ないような、最早下着同様の露出全開の
鎧装備が飾られてあった。
装備の横の看板には「ビキニアーマー」と
書かれており、他の装備品は膝下からの軽装備
ぐらいしかない。一体この装備に何の意味が
あるのだろうか?そしてなぜ私にこの装備を
勧めたのだろうか?
……意味がわからない。
「えぇー?ルナちゃん絶対似合うと思うよ?」
「い、いや似合うとかそういう問題じゃ……
って、完全に着せたいだけですよね!?」
「あっ……はは、バレちゃった」
写真機を持って何故かわくわくしてる
アーシャさんを見て、完全にこの装備を
私に着せさせたいだけなのだと確信する。
そしてその姿を写真に収めたいという
欲望でさえも。
……この人やばい。
「で、でもユース君も見たいよね?」
「え、えっ??」
「ルナちゃんのビキニアーマー姿……」
いや、何でユースに振るの。
そう思った私はユースに視線を当てると、
「えっ、いや、その……」と、こちらを
チラチラ見ながら言葉に詰まりながら
顔を紅く染めているユースの姿が。
「……絶対変な事考えてるでしょ」
「へっ!?い、いやそんな事ないよ!?」
そう焦り顔を紅く染めながら言うユース。
……しかし、絶対脳内で想像してるのは
一目見たら誰だってわかる。
だけど理性で止めてるのだろうか。
正直妄想とか想像とかは止めようが
ないのでそれはもう仕方がないが……
私はもう一度ビキニアーマーの方に
視線を当てる。やっぱり身を守る気がない
意味のわからない装備品だ。
……絶対着たくない。
意味がないし、ただ単純に
恥ずかしいだけだし。
………
「……い、いやそもそも
あれはルナには向いてないと
僕は思いますよ……?」
ユースの結論はこうだった。
アーシャさんは少し残念そうに
していたが、あんな装備
着せられたくなかったから
そんなことは知ったことではない。
横で見ていたアランさんはもう
苦笑いをするしかなかったようだ。
………
「もし迷ってるなら、僕が持ってる
制服、今ここで着てみようか?」
そう言うと元々ユースが持っていたのか、
魔導士のローブ服を鞄の中から取り出した。
「えっ、いいの?」
「別にいいよ。それにそろそろ
僕も制服の方に着替えた方が
いいかなって思ったから」
そう言うと、「更衣室」と看板に手書きで
書かれ、カーテンがかけられている
箱のような所にユースは入っていく。
外からは何も見えず、カーテンを
めくらない限りは何も
見えないようになっていた。
少ししてから、カーテンが開かれる。
「……どう?」
そこには、頭まであるようなローブではなく、
動きやすい方の緑色を基調とした制服を
着こなし、頭の上には魔法使いの帽子が
被られ、魔杖を右手に持って少しポーズを
取っている姿がそこにあった。
「お、おぉ……かっこいい……」
「そ、そう?ちょっと照れるなぁ……」
少しかっこいいな、と一瞬思った私。
少しユースの頰が紅くなり、その頰を
人差し指でツーっと掻く仕草をし、
照れた表情を浮かべていた。
アーシャさんやアランさんは
私と同じような声をかけていた。
「私もそれと似たような
やつでいいかな……」
そう言って、ユースの着たローブ姿と
少し形状は似ているものの、
もう少し俊敏性に特化しやすそうな
『魔道剣士』向けの、月白色と天色で
デザインされているローブ服を手に取る。
少しファッション性にも重視しているのか、
なんだか布地がそこまで広くないような、
そんな感じがしているものの、女性向けの
鎧系の装備よりかは露出は抑えられていた。
……まあ、あのジャンヌさんが来ているような
露出が結構ある鎧やビキニアーマーなんかと
比べるのもどうかと思ったのだが……
そう思いながら、私は更衣室に入り、
カーテンを閉め、バード村で
ユース以外のアフェクト一家と
別れる際、貰い渡されていた服を脱ぎ、
下着姿になった後、脱いだ服を
畳んで鞄の中の袋に入れる。
そして先程手にした制服を着用してみる。
サイズは深々でもなく、きつくもなく、
まぁ丁度良い感じ。次に自分の姿を一度
確認して見る。下半身のスカートが太腿の
途中までしか隠せておらず、形状的にも
中の下着が何らかのアクシデントで
誰かに見られてしまう、みたいな事が
起こり得そうで少し怖いものの、
動きやすさは先程の服装よりも格段に
上がってそうな感じがしていた。
「どう……?」
私はカーテンを開ける。
私がいの一番に視線を当てたのは、
勿論ユースだった。
「おお……!え、待って、
めっちゃ似合ってるよ、ルナ……!」
「えっ、そ、そう……?」
感嘆の声を上げてくれたユース。
その次に、アーシャさんやアランさんが
感嘆の声を上げてくれた。
「え、すごい、めっちゃ似合ってない!?
あわわ……これ、写真集に載ってても
全然おかしくないよ……!!」
「ここまでその制服が似合ってる人を
見るのは初めてだな……凄いよ、ルナさん」
カメラを手に取り、その手が興奮で
震えながら感嘆の声を上げてくれる
アーシャさんと、かなり大袈裟な表現で
感嘆の声を上げてくれるアランさん。
なんか、凄い嬉しいけど小恥ずかしい。
頰が少しだけ熱くなるのを感じた。
「じ、じゃあこの制服にします」
「分かりました。では、本登録用の
写真を撮影しますので、こちらへ
移動をお願いします」
職員の人にそう言われると、アーシャさんが
「早く撮りたいなぁ……」と、わくわくを
抑えられないような表情を浮かべながら
写真機を手に持っていた。
私は制服を着たまま、その場所へ移動した。
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