番外編SS-伯爵令嬢と国王の誓い
ヒロインのミリアとディズリー王国の国王となったローレンスのお話です。
時系列がルナとクレイグのお話と逆になってしまいますが、2学期設定です。
糖度は高めです(笑)
「……はぁ」
ぼんやりと溜息をついて、私は空を見上げる。
さっきまで晴れていた空は、雲がどんよりと空を埋め尽くし、雨がしとしとと降っている。
……まるで、今の私の心を映しているかのように。
「……仕方が、ないのよね」
私はポツリと呟いて、雨が降る外を眺めていた。
―――……事の発端は数時間前。
今日は、私の誕生日。
……去年は、夜会でローレンス様と過ごし、そして恐縮なことに、ローレンス様だけでなく、クラリス様やアルベルト様にもサプライズでお祝いして頂いた。
そして今年の今日、ディズリー王国の王様になったローレンス様が、お忙しい合間を縫って「お忍びデートをしよう」と仰って下さった、のだけど……。
(……朝になって、ローレンス様から急遽、“公務が入った”と通信用のピアスで御連絡が入って……)
そして、デートはまた後日、ということになった。
(……仕方が、ないわ)
残念がっていても仕方がない。 だって、ローレンス様はもう、一国の王様になられたのだから。
……会えなくても、仕方がない。
(……だけど)
「……せめて、一目でもお会いしたかったな」
(……なんて、言えるわけがない)
私はふーっと長く息を吐くと、ベッドに腰を下ろす。
……そういえば、昨日はあまり眠れていないかも。
ふぁっとあくびをする。 そしてそのままうとうととして……、気が付けば私は、眠りについていたのだった。
☆
―――……コツン、コツン
何かが窓枠に当たる音で、私は目を覚ました。 窓の外はいつの間にか雨が止み、空には月が雲の隙間から顔を出していた。
「……な、何の音、かしら……」
私は少し怖くなって、部屋の外にいるであろう執事さんを呼ぼうとして……、ふと、耳にカチッと時計の針のような音が聞こえてきた。
「!!」
私は飛び起きてバルコニーに飛び出れば、そこにいた人物を見てあっ、と声を漏らす。
……月明かりに照らされてこちらを見上げていたのは、銀色の髪と金色の瞳を持つ、私の大好きな方の姿で。
「……っ、ローレンス様!」
私が嬉しくてそう呼べば、ローレンス様はしーっと、口に手を当て、ピアス越しに口を開いた。
『今日は訪れられないと伯爵には言っているから、お忍びで来てしまったんだ。
少しだけ、近くに来てくれないか』
『っ、はい! 少し、待っていて下さい……!』
私の言葉に、ローレンス様は頷く。
私は慌てて部屋に入り、部屋の隠し扉……避難用の脱出通路を抜け、ローレンス様が待つお庭へと駆け出したのだった。
「ろ、ローレンス様!!」
私は嬉しくてローレンス様に飛びつくように走りこめば、ローレンス様は驚いたような顔をしたものの、破顔して、私を抱きとめてくれた。
「っ、はは、嬉しいな。 ミリアがこんなに喜んでくれるとは思わなかった」
「っ!!」
(わ、私、とんでもなく失礼なことを……!)
つい嬉しくなって勢いで、ローレンス様に抱きついてしまい、恥ずかしさで顔が赤くなるのが分かって「ご、ごめんなさい!」と謝って離れようとすると、ローレンス様はそれを阻止するように、ギュッと私を抱く腕に力を込めた。
「え……?」
「……約束を破った上に、遅くなってごめん。
お誕生日おめでとう。 ミリア」
「……っ」
私の目から、涙が零れ落ちる。
私は小さく頭を横に振って、ローレンス様の背中にそっと腕を回した。
「いえ、こうして、ローレンス様のお顔を見られただけで、私は十分、幸せです……!」
「! ……はは、ミリアは本当、何処までも優しいね」
それに、俺を喜ばせる天才だ、と私の頭を撫でて言った。
私はローレンス様の顔が見たくてそっと顔を上げると、ローレンス様が私の視線に気付いて甘い微笑みを浮かべられる。
私はそれに応えるように微笑むと、どちらからともなくそっと唇が重なったのだった。
☆
暫くそうして、甘く幸せなひと時を過ごしていると、何処からか声がかかる。
「……ローレンス様、そろそろお時間です」
「っ、あぁ、もうそんな時間なのか。 もう少しだけ待っていてくれ」
「畏まりました」
ローレンス様がシリル様にそう告げると、私に向き直った。
「……ごめんね、君の大事な記念日を、もっとゆっくり過ごしたかったのに」
「いえ! ……こうして、忙しいローレンス様を独り占め出来るなんて、私は幸せ者で……きゃ!?」
ローレンス様が私をぎゅーっと強く、抱きしめる。
そして、呟いた。
「……あー、やっぱり、君と離れたくない」
「! ……ふふ、私もです」
小さく拗ねるように言うローレンス様が何だか可愛らしくて、少し笑いながら、今度は私がローレンス様の髪をそっと撫でてみる。
すると、ローレンス様がその手を掴んで私を正面から見つめた。
「……ミリア」
「! はい」
ローレンス様の真剣な表情に、ドクンと大きく鼓動が跳ねる。 そんなローレンス様から目が離せなくてじっと見つめれば、ローレンス様は口を開いて、少し照れ臭そうに笑った。
「……ごめん。 アルに先を越されたから、せめて格好良く決めようと思ったけど、いざこうすると緊張するね」
「……さ、先を、越されたって……」
……それって、まさか。
驚き目を見開く私に、ローレンス様はふっと微笑むと、私の手を取ってそっと口付けを落とす。
そして、私を見つめたまま口を開いた。
「……ずっと、言おうと思っていたんだ。
だけど、ディズリー王国の国王として、国を代表する立場になって、君が安心して俺の隣に来られるまで、この気持ちは告げないと決めていた。
だから今日だって、そのために公務を全部終わらせて、君にしっかりと、伝えようと思っていた」
「! ……ろ、ローレンス様の、お隣に、私が……?」
私の言葉に、ローレンス様は頷き、そして言葉を紡いだ。
「うん。 ……突然予期せぬ公務が入って、大分計画が狂ってしまったけれど……、それでも、聞いてくれる?」
「! ……はい!」
その間にも、私の目からは涙が止まらなくて、代わりに大きく頷いて見せれば、ローレンス様は私の涙を優しく指で拭ってくれながら、ゆっくりと口を開いた。
「ミリア、改めて言わせてほしい。
……君のことを、愛してる。
もし、君が俺と……いや、私と同じ気持ちなら、どうか、この手を取ってほしい。
そして、これからも私の側で、笑っていてくれないか」
「……!」
そう言ってローレンス様は一歩下がって、私に手を差し伸べる。
私は涙を拭うと、そっとその手を取り、精一杯微笑みを浮かべて言った。
「……っはい、私で良ければ、是非、ローレンス様のお側に、居させて下さい」
「!! 本当、ミリアは何処までも慎ましやかというか、君には驚かされてばかりいるよ」
「えっ、ろ、ローレンスさ……んっ」
ローレンス様は私の手をぐっと引っ張ると、今度はしっかりと、口づけられる。
私もそっと目を閉じると、何度も甘い口付けが降ってくる。
そしてローレンス様はそっと、私の耳元で囁いた。
―――……他の誰でもなく、君だから、側に居て欲しいんだ、と。
そう言って再度、ローレンス様と何処までも甘く、優しい口付けを交わしたのだった。
お読み頂き有難うございました…!
本日連投させて頂きましたが、次話で番外編最終回となります!
最後はやはり、クラリスとアルベルトの後日談(糖度はうんと高めに致します…!笑)を書かせて頂きたいと思います!今週中には投稿させて頂きますので、お読み頂けたら嬉しいです♪




