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番外編SS-貴方/君に会える日を

時系列は卒業式から3ヶ月後、クラリスとアルベルトのそれぞれの生活模様です…!

糖度は低めですが、互いを思い合う二人の心情を思い浮かべてお読み頂けたら嬉しいです♪

途中からアルベルト視点に変わります。

「……んー……」




 とある日の昼下がり。

 私は机上に置かれた数枚にわたる便箋と睨めっこを続けていた。



(……手紙って、どう書けば良いのかしら)



 送り先は、今滞在しているであろう海の向こうの国……のアルに向けたもの。

 思っていることを書き綴ってはみたものの、これでは近況をただ記しただけの連絡事項のようなものになってしまった。



(“恋人同士のお手紙”には全く見えないわね)



 そうして苦笑いすると、新たに便箋をとる。



 ……しかしこれ、何枚目になるかしら。

 彼此軽く2時間以上は経っていると思う。



「……紙でなくて、直接言えたら良いのに」




 と呟いた瞬間、別の声が耳に届いてきた。




「そのお望み、叶えて差し上げましょうか?」

「!?」




 私は驚いて窓の外を見やる。

 すると、開いた窓からひらり、と降りてきたのは、少しだけ伸びた白い髪をさらさらと揺らす、紫眼の瞳を持つ男性の姿だった。



「……リアム、貴方も来年にはバートン伯爵家の跡取りとして立ち振舞わなければならないのだから、窓から部屋に入るなんて言語道断よ。 しかもここは、淑女の部屋なんだから」

「はーい」




 分かってるんだか、と私は盛大にため息をつくと、ルナが「失礼致しますっ」と珍しく慌てた様子で部屋に入ってきた。



「ルナ、どうしたの? そんなに慌てて」

「っ、り、リアム様が、ここにいらっしゃるのではないかと思って……! って、あ! やっぱり!」



 ルナは怒ってリアムに詰め寄ると、リアムはどうどう、とそんなルナを抑えながら笑う。




「ごめんごめん。 伯爵家の跡取り〜とかで正式に振舞われるの、なんか堅苦しいから嫌で。

 まあ、今回はちゃんと前もって行くよ〜っていうことを伝えたからそれで許して」

「……き、気持ちは分かるわ」



 リアムの言葉に私が同意すれば、ルナは「姫様まで!」と怒る。

 そんなルナに「今日だけは許してあげて」と言ってから、リアムにそういえば、と尋ねる。



「今日は何か用事があって来たの?」

「ううん、特に何も。

 あ、でもこれから少し遠出しようかなって思ってたところなんだ」

「遠出?」




 私の言葉に頷くと、リアムは意味深に目を輝かせて言った。



「アルベルト様のところ。 ローレンス様の近況報告を、シリル伝で託されたんだ。

 シリルは行ったことのない場所にはいけないから、代わりに行って来てほしいって」

「! ……アルの、ところへ?」




 アルに会ったのはシュワード国に帰る日以来会っていない。

 ……だからここ三ヶ月、顔を合わせていない。

(……ほぼ毎週のようにお手紙のやりとりをしたり、たまに時間があるときは通信用のピアスを使ったりするけれど……)



「だから、クラリスも一緒にどうかと思って」

「!!」



 リアムの言葉に私は大きく目を見開く。




(……アルのところへ?)




 それは無論、とても嬉しいお誘いだ。

 アルに会える。

 私は口を開きかけ……、はた、と思いとどまって首を左右に振って言った。




「……ごめんなさい。 とても嬉しいお誘いだけれど、私は一緒にはいけないわ」

「えっ、どうして?」

「そ、そうですよ! アルベルト様と会えるチャンスです!」



 リアムもルナも驚きの声をあげる。

 私はそれに少し笑うと、窓の外を見ていった。



「……アルが頑張っているところに私が行ってしまったら、邪魔になってしまうでしょう?

 アルは今は、次期国王として一人で自立しなければいけない時間よ。

 どうしたって私が行けば、アルの気が散ってしまうもの」



 それに、アルと約束をした。



 “待っている”と。




 だからここで約束を違えてはいけないのだ。



 ……たとえどんなに会えなくても、アルが帰ってくるのを私は待っている。




「……だから、一緒にはいけない。

 その代わり、少しだけ待っていてくれるかしら? アルにこの手紙を届けてほしいの」




 そう言って机上に置いてある書きかけの手紙を指差すと、ルナとリアムは顔を見合わせてクスクスと笑いだす。



「……え、私何かおかしいこと言ったかしら?」

「い、いえ、何処までもクラリス様は強いお人だなぁと。 ね、ルナ」

「はい、リアム様。 クラリス様は何処までもクラリス様です」

「……それって、褒め言葉なのかしら?」



 私の言葉に、二人は縦に首を振ったけど、私は褒められてるようには聞こえないなぁと少し二人を、ジト目で見てしまうのだった。




 そして悩んだ末、手紙の一番最後に一言添えて、リアムにその手紙を託したのだった。







 ☆






(アルベルト視点)


「……はぁぁぁ」

「お疲れ様です、アルベルト様。

 明日は朝一でここを出発するので準備をお願い致します」

「……クレイグ、少しくらい僕を休ませろ」



 時刻は夜の23時を回っていた。

 この時間まで晩餐会があったのである。

 ……最近はそれが立て続けに続き、いくら体力に自信がある僕でもかなり疲労が溜まっていた。



(……あぁ、こんな時間だとクラリスと話すことも出来ないじゃないか)



 クラリス成分が足りない、と嘆いていると、クレイグは「今までの手紙を読んで我慢して下さい」と言ってくる。

 僕はそんなクレイグを恨みがましく睨み、ふとクレイグの右手についている薬指を指差して言った。




「……良いじゃないかお前は。 土日を交代までしてもらって恋人に会いにいけているんだから」

「そ、それは申し訳ないと思っていますよ。

 クラリス様から直々にお許しを頂いたので……」




 そうなのだ、クラリスは自身の侍女……ルナが可哀想だと、僕に頼みこんできたのである。

 自分達に真摯に仕えてくれているが故に、恋人の時間を奪ってしまうのは忍びない、と。



(……クラリスはたまに甘いと感じるが、まあ、そこが彼女の素敵なところでもあるからな……)



 と、僕は渋々クレイグを土日だけ外し、ルナとの時間を過ごせるように配慮したのだ。

 その結果、二人はどんどん仲睦まじくなっているらしく。



「……あー、僕だってクラリスに会いたい……」



 と、脳裏に浮かぶクラリスの色々な表情を思い浮かべ、ため息をつくと。

 コンコンっと、ドアをノックする音が聞こえた。

 僕はすぐさま来客用の仮面を取り繕い、クレイグと首をかしげる。



「? こんな時間に誰ですかね?」

「……急ぎの用か?」



 開けてくれ、そう頼むとクレイグは頷き、ドアを開け……「あっ」と驚いたような声を発する。

 そしてクレイグの隙間から顔を覗かせたのは、ニコニコと何処か楽しそうな、ここにはいるはずのない人物の姿で。



「!? リアム!? お前、どうしてここにいるんだ」

「こんな遅くにすみません。 意外と時間がかかってしまって」



 もう少し早く来るつもりだったんですけど、とクレイグと共に歩いてくる。



「え、一人で来たのか?」

「はい、そうですよ。

 ……本当は、クラリスも連れてくるつもりだったんですけどね」

「!?」




 僕は驚き目を見開く。

 が、リアムは首を横に振って苦笑いした。



「ですが、断られましたよ。 アルベルト様の邪魔はしたくないって」

「〜〜クラリス……」




 ……クラリスらしい。

 僕のことを思って、わざとそうしてくれたんだろう。



「……だがせめて一目でも、彼女に会えたら良いのに……」

「我慢して下さい。 クラリス様も我慢なさったのですから」

「そうですよ。 クラリスの思いを踏みにじらないで下さいね」




 クレイグとリアムの容赦ない言葉に、僕は力無くうなだれる。

 すると、リアムが「あぁ、そうそう」と手紙を2通渡してくる。



「? これは?」

「ローレンス様からのお手紙です。

 元々これを持ってくるように言付かってきたので。 ……時間はかかってしまいましたが」

「あぁ、近況報告のことか。 有難う、リアム」




 そう言って何気なくもう一通を見……その字と送り主を見て僕は声を上げた。




「!? クラリスから!?」

「わっ、びっくりした……。 そうですよ、会えない代わりにクラリス様から持っていってほしい、と言われました」




 リアムがそう言ったのを聞き、はやる気持ちを抑えて丁寧に封を開ける。




「……分かりやすく嬉しそうだね」

「えぇ、クラリス様からのお手紙となると、いつもあんな感じです」




 何やら二人の会話が聞こえてくるが、そんなことはどうでも良い。

 僕は手紙を取り出すと、クラリスの近況を記した手紙を読み進めていく。



 そして最後に差し掛かったところで、文が途中で切れていた。




「……?」




 どうしてだろう、そう思って次の手紙……最後の一枚の便箋に目を通す。

 すると。




「……! ふふ」

「え、どうしたんです?」




 僕の突然の溢れでた笑いに、二人が驚いたように目を向ける。

 僕はその手紙を見られないよう、丁寧にしまうと、にっこりと笑ってみせる。



「何でもない」

「? ……何が書かれてたんです?」

「さ、明日の準備に取り掛かろう」




 僕はさらっとクレイグの質問を無視して、身の回りの物を整理し始める。

 それを見て二人が抗議しているが、知ったことではない。




(……これは、僕とクラリスだけの秘密だ)




 クラリスがくれた、一番最後の便箋。

 そこに書かれていたのは。





『一年後に会える時を心待ちにして、貴方が迎えに来てくれるのを待っています。

 だから、大変だと思いますが、お仕事頑張って下さい。

 ……だけど、無理はしないでね。

 愛を込めて。

 クラリス・ランドル』




(……あぁ、必ず、君を迎えに行くよ。

 だからもう少しだけ、待っていて)




 次期シュワード国の国王として、そしてクラリスを妃にすぐにでも迎えられるように、来年までに手筈を整える。

 それまでの辛抱だ。





(……大丈夫。 会えなくても、僕は君の側にいる)








 僕はそうクラリスに心の中で語りかけ、手紙をそっと胸に抱いたのだった。




お読みくださり有難う御座いました…!

次回のお話は時系列順で、クレイグとルナのデートを書かせて頂きます…!

こちらは糖度高めです(笑)

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