↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/113

31.物語は永遠に

遂に第3章、完結です…!

「クラリス」




 アルがそう、柔らかく私の名を呼んだのと同時に、サァッと温かい風が、私達の間を吹き抜ける。


 私はその声の裏に何となく、アルが緊張してるのが伝わってきて、私も少し緊張しつつも、「はい」と返してみせれば、アルが嬉しそうに笑って言った。




「改めて言うのは少し照れ臭いけど、聞いてほしい」




 その言葉に私が頷けば、アルは少し微笑みを浮かべ、口を開いた。




「今まで、僕の側に居てくれて有難う。

 ……クラリスが、僕が側にいてくれたから心強かった、嬉しかったってさっき言ってくれたけど、それは僕のセリフだよ。

 君がいてくれたから、僕は今こうして居られるんだ。

 ……3ヶ月前だって、本当は卒業できるかどうかも危ぶまれたところに、クラリスが助けてくれた。 それがどれだけ嬉しくて心強かったか、君が考えているよりはるかに、僕は君に感謝しているんだよ」




 私はその言葉に、首を左右に振ってみせる。

 すると、アルは「そうやって謙虚なところも、君の良いところなんだよね」と少し苦笑して言った。



「……クラリスは昔から、何処か危なっかしくて目が離せなかった。

 去年の一学期からくらいには、急に悪者のフリをしてみせて人を庇ったり助けたりするし」



(ごめんなさい、アル。 それは、私が前世の記憶を思い出したからです……!)




 と内心ツッコミを入れ、苦笑いで受け入れる。

 そんな私には気付かず、アルは続ける。



「自分が傷ついてまでも他人の幸せを願ったり、だけどその裏では傷ついて泣いている君のその性格も、僕は好きだけど、もっと頼ってほしいとか、思ったりもする」



 アルはそう言って、私から視線をそらさずに言った。




「前に、僕は君と約束したよね。

 “無茶をするなら一緒にしよう”と。 ……今度こそ、その約束を果たすために、考えたんだ」

「?」



 私が首を傾げれば、アルはふっと月を見上げて言う。



「……僕は明日から、この一年間君に会えることは殆ど……いや、あれば良いほど、忙しくなってしまうと思う。

 ……それでも、クラリスは僕のことを、嫌いにならないでいてくれる?」

「!? まあ、心外だわ!」




 私はアルに少し怒ってみせ、それに驚いてこちらに目を向けたアルに歩み寄ると、ズイッと身を乗り出して言う。




「私の、アルに対する気持ちがそんなものだとでも思っているの!?

 私は貴方のことを、愛してるのに!」

「! ……ふふ、やっぱり、君には敵わないな」

「!」




 今度は、私が驚く番だった。

 それは、アルが私の腰を持ち上げたからだった。



「!? あ、アル!?」




 突然の浮遊感に驚いていると、アルは少しして、私を下ろし、今度はアルが私の前で跪いた。




「……え?」




 ドキリ、と心臓が高鳴る。




 ……これは、まさか。




「……クラリス」





 彼が名前を呼びながら、私の右手をそっと手に取り、持ち上げた。

 そして、私を見上げて口を開く。




「……僕も、君のことを愛している。

 ……だから、一つ、僕の我儘を聞いてくれないか」

「! ……っ、勿論、聞くわ」



 私がそう言って頷いて見せれば、アルは嬉しそうに笑うと、私の持ち上げた手に軽く口付けをして言った。






「僕は今年中に、シュワードの国王となる準備を全て終わらせる。

 そして来年の今日……、クラリスが卒業する日、僕は君を迎えに来る。

 ……それまで、僕の帰りを待っていてくれないか」


「……!!」







 言葉が、出なかった。

 ……いや、言葉に出来なかった。






 アルの言っている言葉の意味を理解するのに、時間を要してしまったから。




 そんな私の反応を見て、アルは、「……違うな」と呟くと、今度はその“言葉”の意味を、はっきりと、明確に言葉で示した。








「クラリス。

 僕と、結婚してほしい」




「……!!! い、いいの……?」







 声が、震える。

 体全体に、震えが走る。




 そんな震えを感じ取ったのか、アルは握っていた手にそっともう片方の手をそっと乗せ、私を見て微笑んで言った。




「勿論」





 その言葉に、私は我慢出来ず、溢れる涙を拭くこともせずに、アルに思い切り抱きついて言った。





「っ、喜んで!!」




 その言葉に、アルは嬉しそうに声をあげ、私の腰を持ち上げると、くるくると私を回す。



「っ、あ、アル! 子供じゃないんだから〜!」



 と言いつつ、私も嬉しくて二人で暫く笑い合っていると、やがてそっとアルに下ろされる。

 そして、少しはにかみながら見つめ合うと、そっとアルの顔が近付いてきて、私は瞼を閉じた。




 唇に感じた温もりに身を委ねながら、私の目から涙が一雫、頬を伝って落ちる。










 温かな春の風、そして美しく輝く月に見守られ、私達は、永遠の約束を交わしたのだった。






 ☆





 長く幸せな時間を過ごした私達は、顔を見合わせ、少し照れ臭くなってふふっと恥ずかしさを誤魔化すように笑うと、私はあっ、と大事なことを忘れていたことに気付いた。



「? どうしたの、クラリス」




 アルの言葉に、私は「学園での思い出で、し忘れていたことがあったの」と言うと、アルはえっ、と驚いたように言葉を発した。




「え、何のこと??」



 と、首を傾げるアルに、私もアルに承諾を得ることにした。



「………一つ、我儘を言ってもいい?」

「! ……ふふ、勿論」



 さっきと同じことを逆に繰り返し、私もふふっと笑うと、私はその場で一回転してみせて言った。




「私達、王家としてパーティーに出て、パーティーに参加すると言うよりは、来賓の方々にご挨拶をするので精一杯だったじゃない?

 ……だから、私と」


「「踊って欲しい」とか?」




 アルが私と言葉を被せて、その言葉がハモる。

 私は少し驚きつつも頷いて見せれば、アルは「たしかに」と顎に手を当てて言った。




「僕達、殆ど学園で一緒に踊ったことはないかも」

「でしょう!? 婚約者なのに、どうして踊らせてもらえないの!?」



 私がそう叫べば、アルはクスクスと笑って「そうだね」と言い、私に手を差し伸べた。




「それでは、会場までエスコートさせて頂きましょう。

 ……僕だけの、お姫様」


「!」



 アルがそう、畏まった口調でおどけて言ってみせたから、私もふふっと笑って頷くと、その手を取り、言ってみせる。




「えぇ、宜しくお願い致しますわ。

 私だけの、王子様」





 そんなやりとりに、二人同時に吹き出して笑ってしまう。

 そしてそのまま、アルにエスコートされ、私は煌びやかな会場へと誘われる。




 それまでの道を私は手を引かれるように後ろを歩きながら、その手とアルの背中を見つめて心の中で訴えかける。




(……たとえ会えなくても、私は貴方をずっと、待っているわ)





 ……この先、どんな未来が待っているのだろう。





 どんな未来でも、彼の隣にいれば、何だって出来る気がする。





(……そう、この先も、貴方の隣にこうして、いられるんだわ)





「……? クラリス、どうしたの?」




 アルの言葉にハッとすれば、そこには大きな扉があった。



 ……どうやら、考え事をしている間に会場に着いていたらしい。



 そんな彼に、私はふふっと笑って答える。




「……改めて、私は幸せだなと、思っていただけよ」



 その言葉に、アルは一瞬驚いた顔をした後、私と同じようにふふっと笑い、「僕も」と言ってから、扉を開けるように近くにいた衛兵に言うと、衛兵が扉をあけてくれる。




 すると、開いた扉から漏れ出た眩しいばかりの会場の光が、アルの紺色の髪を照らし、キラキラと輝く。

 そして彼は、私に向かって言った。 




「行こう、クラリス。 僕も、君と時間の許す限り、一緒にいたい」

「! ふふ、私も!!」





 そうして、私達は二人で光り輝く会場へと足を踏み入れたのだった―――














 ―――……私達の物語は、永遠に続いていく。




 愛する貴方と共に、この先どんな未来が待っていたとしても、二人一緒に歩んでいこう。






 第3章 『物語は永遠に 』 END



第3章までお読みくださり有難うございます…!

次話、クラリスのその後…!?を描いた、本編最終話です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。