28.大切な仲間達
「クラリス様……!!」
「っ、ルナ!」
ルナは私に駆け寄ってくると、大泣きしながら私に飛びついてきた。
少しよろめきながらもそれを受け止め、ルナの頭を撫でると、リアムが呆れたように言った。
「本っ当に、クラリスは僕達の寿命を一体何処まで縮めれば気がすむの!?
永遠に目覚めないかもとか思ったよ!」
「……ご、ごめんなさい」
私が誤れば、アルが私を庇いリアムを睨む。
「僕の婚約者を困らせるな。 疲れているんだから」
「……うわ、出たよ。 アルのクラリス限定の過保護仕様……」
ローレンスはうわーという顔をして隣にいるミリアさんの肩に手を回す。
ミリアさんはその言葉に少し笑うと、私に聞いてきた。
「クラリス様、お加減はいかがですか?」
「えぇ、お陰様で、よく眠れたわ」
わたしが肩をすくめてそう返す。
それにクスクスとミリアさんは笑ったかと思えば、急に私に向かって頭を下げてきた。
驚く私に、ミリアさんは口を開く。
「……助けて頂き、有難うございました」
「えっ、か、顔を上げて!
私だって、それは同じだわ!
ミリアさん、それからここにいる皆がいなかったら、悪魔を封印することは出来なかったわ。
……皆、有難う。 そして、心配かけてごめんなさい」
私がそう言うと、皆は少し笑ってみせる。
そして、シリルが口を開いた。
「……本当に、良かったです。
目の前で、貴女が死んでしまうと思った時は、生きた心地がしませんでした」
シリルの言葉に、黙って聞いていたエドガー王子がシリルに賛同する。
「……そうだね、こうして今、皆が無事でいられらのは、本当に奇跡だ。
だけど、私は信じていたよ。
……君もアルベルトも、ここにいる皆も、この国の者達も誰一人欠けることなくこの戦争を終わらせることが出来るって」
エドガー王子の言葉に、皆は顔を見合わせて頷く。
そうして笑っていたら、不意にシリルが口を開く。
「……それと、確認しておきたいことがあるんです。
アルベルト様の魔法について」
「あっ、それ多分私も同じことを聞きたいと思っていたわ!」
私も手を叩いて賛同すると、アルにずいっと身を乗り出して聞いた。
「アルも私と同じ、“千年に一人の使い手”だったの……!?」
その言葉に、知らなかったルナとクレイグは「え!?」と驚く。
アルはひらひらと軽く手を振って言った。
「僕のは、クラリスと違って“先天的”ではないんだけど、まあ精霊王を召喚出来るという意味ではそういうことになるのかな」
「先天的……? なるのかなって……、意味がよく分からないわ」
私がそう口にすれば、アルはふふっと笑って言った。
「まあ、僕のこの力は、いわばクラリスを守りたいと思って磨いた力なんだよ。
それ以上は、精霊王と交わした約束もあるから、教えてあげられない」
「……そうなの?」
私が知らないことが少し残念に思えてそう言えば、アルはにっこりと笑って人差し指を立てて自分の口に当てた。
「まあ、一つや二つ、秘密があった方が魅力的、でしょ?」
アルの締めくくりに、皆がえー、と不服そうに声を上げる。
私はアルの言葉にクスクスと笑うと、「えぇ」と頷いてみせた。
二人でふふふと笑い合っていると、皆が「幸せオーラ全開……」と呟き、ローレンスが口を開く。
「あー、お邪魔虫は退散した方が良いな。
ミリア、行こう」
「ふふ、分かりました。
クラリス様、もう少しゆっくりと休まれて下さいね」
「えぇ、有難う」
ミリアさんの言葉に私がそう返せば、ミリアさんは淑女の礼をしてローレンスと共に部屋を出て行った。
シリルとエドガー王子もそれに続き、部屋には私とアル、ルナとクレイグが残った。
「……ルナ、大丈夫?」
私の言葉に、ルナは顔を上げた。 その顔は、涙でひどいことになっていた。
「あ、あら、ルナ、涙を拭いて。
折角の可愛い顔が台無しよ」
「……ううっ、クラリス様が、生きていて下さらなかったら、私……!」
ルナは私が渡したハンカチを受け取ってからも尚、泣くのを止めない。
私も涙を零すと、ルナの頭を撫でながら言った。
「ルナ、貴女には、私が一人で魔法を使おうとしているのを隠すために、酷いことを言ってしまったわね。
……ごめんなさい」
私の言葉に、ルナは何も言わずにふるふると首を横に振る。
私は苦笑すると、ルナの手をそっと取って両手で包み込みながら言った。
「……貴女にはこれからも沢山、迷惑をかけてしまうと思う。
それでも、私は貴女と一緒にいたい。
……私に、付いてきてくれるかしら?」
「……!」
ガバッと、ルナが顔を上げる。
そして、涙を拭うと、大きく頷きながら言った。
「はい! 私は一生、クラリス様の味方です!! 一生付いていきます!!」
「っ、ふふ、有難う、ルナ」
私の目からも涙がポツンと、零れ落ちる。
ふふ、と笑っていると、アルがポツリと一言呟いた。
「……どうしよう、クラリスが男前に見える」
「同感です」
それに賛同したクレイグに、私は「あら、それは褒めてるのかしら?」と少し不満気に言ってみせれば、アルとクレイグは顔を見合わせて笑う。
私とルナも、思わず笑ってしまった。
すると、部屋をノックする音が再度聞こえてきた。
「? 誰かしら?」
私は首を捻ると、ルナから離れて部屋の扉を開いた。
すると、そこに立っていた人達を見て、私はあっ、と声を上げる。
「……お、お母様……」
そこには、私のお母様とニコラスお兄様、アイリスお姉様が怖い顔で立っていた。
(……どうしよう、私、怒られるわ)
守ろうとしてくれた家族を押し退けて、一人で危ない真似をしてしまった。
……それがどんなに罪深いものなのか、私も分かっていた。
固まって動けないでいる私に、お母様は手を振りかざして……
「!!!」
叩かれる、そう思った私はギュッと目を瞑った。
すると。
「……!」
次の瞬間訪れたのは、衝撃ではなく、私の体を包み込む、お母様の温かいぬくもりだった……―――




