第十五話:その仮面の男、謎に付き
ゼルク。ヴィクロス。ジェネガル。メリルは赤翼の盗賊団から辛うじて免れた。しかし助かった代償は余りにも大きかった。なぜならジェネガルの息子を巻き込んでしまったからだ。
ゼルクは特に自分の不甲斐なさを呪った。ヴィクロスは慰めてくれたがジェネガルは複雑そうだった。だからこそにゼルクは自分の不甲斐なさに落胆した。神の篭手でも無理だった。
いくら神の篭手が優秀でもそれを扱うのは生身の人間だ。たとえビビーと共闘したりしても生身の人間には限界がある。それにたとえ一心同体になったりしても所詮は生身の人間だ。
どっちにしてもありえないほどの速さではない。所詮は人間の延長だと云う事にゼルクは痛感させられた。そんなゼルクは亡くなられたジェネガルの息子のお墓の前で手を合わせた。
この時のゼルクは安らかに眠って下さいと心の中で念じた。ゼルクの後ろにはヴィクロス。ジェネガル。メリルがいた。ちなみにメリルは気絶状態から回復していた。強い子だった。
「行くぞ。・・・・・・お前達」
メリル以外はお墓に手を合わせた。メリルは目の前で起きた事が忘れられなかった。だから手を合わすのが怖かった。これも自分のせいなのかなと思えば思うほどに自分が怖くなる。
「・・・・・・おい。返事はどうした?」
本当は辛い筈なのに一番年上と云う事もあってジェネガルは無理をしていた。それをゼルクとヴィクロスは痛感していた。だから全員分の重たい空気が流れていた。否。流していた。
「はい」
返事をしたのはゼルクだった。ゼルクの返事はやる気がなかった。なぜなら真実を知ってしまった。人は場面が違えば見せる表情も違う。まさしくその言葉を何度も痛感させられた。
「・・・・・・声が小さいな。それにどうした? さっきまでの威勢は?」
ジェネガルは思い出す度に八つ当たりをしそうだ。だけどしそうの範囲内なのでグレーゾーンが多かった。それでも息子の死を真剣に弔わない者にはなにを仕出かすかが分からない。
「すみません」
ゼルクは自身の無力さを呪った。赤翼の盗賊団に勝てたのは間違いなくジェネガルの息子が命を捨てる勢いでアーネイルを倒してくれたからだ。そのお陰で今のゼルク達がいられた。
「まぁいい。時間が忘れさせてくれるだろう。それに・・・・・・ガーロイドの為にも俺は生きなければならない。その為のお墓だからな」
ジェネガルの云ったガーロイドこそがジェネガルの息子であった。ジェネガルの息子であるガーロイドは今あそこのお墓の下で安らかに眠っている。アーネイル達もお墓の下にいる。
決してガーロイドと一緒にはしなかったが差別もよくないので隣り合わせにお墓を造る事にした。造ると云ってもかなり簡易的なお墓だった。これはもう仕方のない事だろうと云う。
「さてと・・・・・・そろそろ帰るか。もう・・・・・・夜明けも近い」
ジェネガルの云った通りにあれからもう数時間も経っていた。それもこれも全員分のお墓を造ったからだ。どうか。全員が無事に行けますようにと願った。そろそろ帰るべきだろう。
「はい。帰るんですね。分かりました」
ゼルクだけが強く返事をした。ゼルクには守らなければいけない約束があるから強くなろうとした。ゼルクは心の奥底からジェネガルの息子であるガーロイドに何度も感謝していた。
「二人の反応がないが付いてくるなら付いて来い。一緒に帰ろう。嫌。一緒に帰らせてくれないか」
ジェネガルは二人の事を心配した。それからジェネガルの不器用さが出ていた。それでもジェネガルは云い方を変えてまでも場の空気をよくしようとしていた。ジェネガルの甘えだ。
「も、もちろんですよね? ね? その」
メリルは困惑しながらも云っていた。そして急激にヴィクロスに助けを求めるが名前を知らないでいた。だから途中から黙ってしまった。それでもメリルにしてはよく頑張った方だ。
「俺の名はヴィクロスだ。だな。そろそろ帰ろうぜ。俺達のお城へ」
ヴィクロスは優しくメリルに自己紹介した。そもそもこんな小さい女の子が気を使っているのに年上が気遣えないなんて終わっていると思った。だからヴィクロスは機転を利かせた。
「なら話は早い。早速馬に乗って帰ろう」
ジェネガルが全員に云った。本当は一足先にゼルク達を帰したかった。そして自分はお墓の前で泣きじゃくりたかった。大の大人がと云われるかも知れないがそれでも泣きたかった。
「はい!」
今度は全員が威勢よく返事をした。するとヴィクロスとジェネガルは自分の馬に向かい始めた。どうやら馬は逃げ出していないようだ。三頭共仲良く一緒にいた。なんとも不思議だ。
「メリルちゃんは俺の馬の後ろに乗るといいよ」
ゼルクは決してメリルを置いては行かずにその場でメリルに云い始めた。実のところでメリルはどうしようかと思っていた。そもそもメリルに一人での乗馬は無理だった。困惑した。
「す、すみません! わ、私! 前の方がいいです! どうも。誘拐された時に後ろに乗せられて怖くて怖くて」
メリルは誘拐された時に馬の後ろに乗せられて怖い思いをしていた。だからメリルはトラウマになっていた。今のメリルは後ろよりも前の方がまだいいらしかった。お願い事だった。
「そ、そうなのか。・・・・・・うん。ならいいよ。前に乗りなよ」
ゼルクはやや戸惑った。なぜならてっきり後ろに乗る者と思っていた。だけど無言を入れる事で冷静さを取り戻した。だからゼルクは軽く頷くとそう云い始めた。前後は些細な事だ。
「うわぁ~。有難う御座いますぅ。んじゃ後で先に乗りますね」
メリルは歓喜の声をあげた。感謝の言葉も忘れずに云った。そんな会話をしているゼルクとメリルはまだ馬のところにいない。だからメリルは後で先に乗りますねとゼルクに云った。
「ああ。その後に俺が乗るからメリルちゃんはなにもしなくてもいいからね」
ゼルクは一際メリルに甘かった。ゼルクにとってメリルは妹みたいな存在だ。ちなみにゼルクに身寄りはいない。つまりゼルクに姉も兄も妹も弟もいなかった。ゼルクの親はどこだ。
「はい!」
だからメリルの天真爛漫な笑顔を見るとゼルクはかなりの幸せを感じた。今のメリルはついさっきと比べ物にならなかった。なぜならメリルはゼルクの言葉を聴く度に回復していた。
「うん。それじゃあ馬のところに行こうか。メリルちゃん」
ゼルクはメリルと会話をやめるべく馬のところに行こうと誘導した。ゼルクは物静かにメリルを見ていた。きっとだがゼルクがそう云えばメリルは淡々と実行に移す可能性があった。
「はい!」
メリルはまたしても天真爛漫な笑顔を見せつつも云っていた。だからメリルの返事を聴いたゼルクは自分の馬の方を向いて歩き始めた。メリルもゼルクの馬の方を向いて歩き始めた。
「その・・・・・・ゼルク様。ごめんなさい」
するとメリルが歩きながらもなにかを云い始めた。どうやらゼルクに対して謝っているようだ。どうして謝ったのか。それは散々な事をゼルクに云ったからだ。心の底から後悔した。
「ううん? なにを謝ってるんだ? メリルちゃん」
だけどゼルクはメリルがどうして謝ったのかを理解していなかった。だから歩きながらも首を傾げた。そして首を元に戻すとメリルがなんで謝っているんだと云う空気を出していた。
「え? だって私・・・・・・ゼルク様に失礼な事を」
メリルは困惑した。だけどすぐさまに自分の置かれた立場を歩きながらも云い始めた。この感じからして馬まではまだ遠い感じがした。果たしてこの会話に終止符が打てるだろうか。
「はは。そんな事はもうどうでもいいんだよ」
ゼルクは重たい話は勘弁と云うような笑い声をした。ゼルクにとってメリルは特別な存在だ。そんな簡単に後悔や懺悔をして欲しいがなかった。だからゼルクは誤魔化すようにした。
「で、でも私! 私のドジのせいで!」
すると急にメリルが立ち止まり声を張り上げた。メリルは心の底でだれよりも後悔していた。もう自分ではどうしていいのかさえ分からないでいた。だからこそに誤魔化したくない。
「メリルちゃん。気にする事ないよ。俺らはいつだって命を捧げる覚悟でいるんだから」
ゼルクが云う前に立ち止まりメリルの方を向いた。そしてゼルクは諭すようにメリルに云い始めた。そうだ。ゼルク達は常に命を天秤に掛けている。だからこそに簡単な話じゃない。
「で、でも」
メリルはそれでも食い下がった。この時のメリルは両手に拳を作って力強く握っていた。だけどメリルの声はそんな力強さとは真逆に頼りない感じだった。メリルは負けたいがない。
「命の尊さなんて・・・・・・メリルちゃんにはまだ早いさ」
ゼルクはそれでもメリルの肩を持ち続けた。ゼルクはメリルに優しすぎた。それがメリルを馬鹿にしているとも知らずに。それでもゼルクの事だ。臨機応変にすぐに解決するだろう。
「馬鹿にしないで下さい! 私にだって! 私にだって! 私にだって」
メリルはゼルクの言葉に怒った。最初は勢いこそあったもののメリルの発言は途中からトーンダウンしていた。メリルは一生懸命になっていたがどこかにかなり虚しい部分があった。
「分かるんだね? 人の死が」
ゼルクはメリルがそこまでの覚悟を持っている事に心の底から信じようと思った。だからこそに冗談抜きにゼルクはメリルと会話をしていた。ゼルクにとってメリルは妹以上だろう。
「はい。だからこれは私も背負って行かなければならない業なんです」
メリルは頷くことなく返事をした。その時の顔はだれよりも真顔だった。しかもメリルは難しい発言をした。どこで憶えたのかが分からないが発言はあながち間違ってはいなかった。
「業か。なら俺は絶対にメリルちゃんを守る。だからメリルちゃんは業を元に生きてくれ」
ゼルクはメリルの覚悟を全て受け入れた。だからゼルクは難しい業と云う言葉をあえて理解しようとした。その結果は見事に理解していた。ゼルクの思った以上にメリルは強かった。
「・・・・・・はい!」
メリルは心の奥底から忠誠を誓うような感じで云っていた。沈黙の時には段々と満面の笑顔になる瞬間があった。それはまるでようやく咲いた一輪の花のようだった。分かり合えた。
「うん。んじゃあそろそろ行こうか。メリルちゃん。皆が待っている」
ゼルクは頷かずに返事をした。ゼルクはメリルとの会話が終わったと思って馬のところに行こうかと云った。ゼルクは云い終わっても振り向かなかった。なぜなら返事を待っていた。
「はい!」
メリルは機嫌よさそうに返事をした。すると返事を聴いたゼルクが振り返り馬の方へと歩き始めた。メリルもまた馬へと歩き始めた。ゼルクとメリルはより深い関係になったようだ。
「それじゃあお言葉に甘えますね。ゼルク様」
メリルとゼルクは無事に馬のところまで来れた。だからメリルは先に乗る事を決意した。この時のメリルはまだ機嫌がよかった。この機嫌がずっと続けばいいのになと密かに思った。
「うん」
ゼルクはメリルの発言に対して返事をした。決して安易に頷かなかった。比較的にゼルクもメリルばりに機嫌がよかった。だってこんなにも分かり合える事なんてそう簡単にはない。
「乗りました。ゼルク様」
メリルは云う前に足を引っ掛けて無事に乗っていた。どうやらゼルクの馬は相当に人に慣れているようだった。だからゼルクの馬は脅えて逃げる事がなかった。とにかく無事だった。
「んじゃあ俺も乗るね。馬に」
ゼルクはメリルがしっかりと馬に乗った事を確認するとそう云い始めた。ゼルクは云い終わったのに律義にもメリルの返事を待った。もうどれだけの信頼関係を築く気のようだろう。
「はい!」
メリルがゼルクの言葉を耳に入れて元気よく返事をした。頷く事はしなかったがもうお互いの気持ちが離れる事はなさそうだった。メリルにとってゼルクは兄を軽々しく超えていた。
「うむ。全員・・・・・・乗ったな? それではこれよりアルオス城目指して出発する! いいな?」
ジェネガルとヴィクロスはとっくに馬に乗っていた。そしてゼルクを待っていた。ゼルクが最後に馬に乗るとジェネガルが確認を取り始めた。あとはアルオス城を目指すだけだった。
「はい!」
馬に乗った全員が返事をした。どうやらこの感じからして来た時と同じ感じで帰るようだ。唯一違ったのは失った者が多いと云う事。きっとガーロイドが動かなかったら退散だった。
「それでは出発だ! 全員! 無事に生還するぞ! では! 行こう!」
ジェネガルはお墓を造った事で新たな一面を得ていた。だから冷静でいられた。これがもしお墓を造れないようならなにを仕出かすかが分からないでいた。もしかしたら暴れたかも。
だけどそれでもジェネガルの息子は確かにお墓の下で眠っている。それが覆されない限りはきっと大丈夫だろう。ジェネガルはここの地を離れる時にこう思った。また戻って来ると。
そしてガーロイド。お前を故郷に連れて帰ると。それまでにこの大戦を終わらせなければならない。この無益な争いを一刻も早くなくす為にジェネガルは戦い続けるだろう。きっと。
ゼルク。ヴィクロス。ジェネガル。メリルは無事にアルオス城に帰ってきた。四人は馬から下りて馬を三頭共預けた。四人は今作戦室にいるローゼリア女王陛下の前にいた。報告だ。
「ゼルク。ヴィクロス。メリル。そしてジェネガル大将軍。ああ。無事でよかった」
と思いきやローゼリア女王陛下が先に云い始めた。ローゼリア女王陛下は普通の人間なのでジェネガルの息子であるガーロイドが亡くなった事を知らない。だけど云うつもりはない。
「は! ローゼリア女王陛下! 我ら部隊は赤翼の盗賊団を壊滅にまで追い詰めましたぞ!」
ジェネガルは決して息子の死を忘れてはいない。だけどあえて云わないのはジェネガルの優しさだった。ジェネガルはローゼリア女王陛下に気を使った。そもそも云う必要性もない。
「そうですか。出来れば話し合いで解決したかったですね」
ローゼリア女王陛下は実に残念そうな顔立ちで云っていた。ローゼリア女王陛下の考えは実に優し過ぎた。ローゼリア女王陛下は自分自身が優し過ぎる事を重たい位に理解していた。
「は! 我らも尽力しましたが奴らの根性は曲がっておりました!」
ジェネガルはローゼリア女王陛下が一番最初に云い始める前から屈み左膝を床に付けさせていた。ちなみにゼルク。ヴィクロス。メリルも敬意を持ってジェネガルと同じ体勢でいた。
「・・・・・・そうですか。無事でなによりです。ジェネガル大将軍」
ローゼリア女王陛下は沈黙の時に赤翼の盗賊団の壊滅をすぐさまに受け入れる事が出来なかった。なぜなら壊滅したと云う事は死んだかも知れない。死んだのならもう生き返らない。
「は!」
ジェネガルはローゼリア女王陛下の気持ちを汲む事なく淡々と返事をした。ジェネガルは最早他人に気を使う気力がなかった。それでもジェネガルの事だ。忠誠を誓えば働くだろう。
「ところでジェネガル大将軍」
ローゼリア女王陛下はアルオス城の外で待機しているジェネガルの兵士達が不憫で仕方がなかった。たとえ昨日まで敵だとしても一気に寝返ってくれた恩義はあった。だから云った。
「は! なんでしょうか。ローゼリア女王陛下」
ジェネガルは外で待機している兵士達を忘れているようだ。否。そもそもローゼリア女王陛下のあの言葉だけではそこまでは思い出せないだろう。だから云わないとなにも出来ない。
「ジェネガル大将軍の兵士達をちょっとずつですが我がお城に受け入れたいのですがどうすればいいのですか」
ローゼリア女王陛下は丁寧な言葉遣いで云った。この時のローゼリア女王陛下は今にも寒くて外で待機している兵士達を早くお城の中で保護したかった。どんなに時間が掛かっても。
「ぬぅ。すっかり忘れていました。ならば後でこのジェネガルが責任を持って誘導しましょう」
どうやらジェネガルはローゼリア女王陛下から云われるまですっかり忘れていたようだ。ジェネガルはローゼリア女王陛下の助言で思い返した。自軍を放置すると確かに邪魔になる。
「それは助かります。なら私も付いて行きましょう。その方が手っ取り早いでしょう?」
ローゼリア女王陛下はジェネガルの機転に助けられた。まさにお互い様な感じがした。だからローゼリア女王陛下はお互い様精神に乗っ取って私も付いて行きましょうと云い始めた。
「ぬ? それもそうですが」
ジェネガルは急なローゼリア女王陛下の要望にやや困惑した。しかしジェネガルの相手はアルオス城の女王様だ。格が違うのでやや困惑も失礼だった。だけどそれでも困惑になった。
「心配はありません。ほとんどの仕事は一通り終わりましたから」
ローゼリア女王陛下は云い始める前に首を傾げて満面の笑顔を見せた。そして満面の笑顔をやめると急に真顔になり云い始めた。なんとローゼリア女王陛下は短時間の間に完了した。
「そうですか。ならば共に参りましょう。いいですかな。ローゼリア女王陛下」
ジェネガルは致し方なしな感じで云っていた。途中からはきっぱりとしながら云っていた。そして最後らへんではローゼリア女王陛下に了承を得ようとした。なんとも意外にも紳士。
「はい。行きましょう。ジェネガル大将軍」
ローゼリア女王陛下は穏やかに一度だけ軽く頷くとジェネガルに返事をした。次にローゼリア女王陛下は間髪入れないでジェネガルに行きましょうと云った。実に敬意を払っていた。
「・・・・・・行ったな。それで? 俺達はどうするんだ?」
残ったヴィクロス達は沈黙の際に外に出て行くローゼリア女王陛下とジェネガルを見ずにいた。これも失礼のないようにとの事だ。にしてももういないと思ったヴィクロスが喋った。
「うむ? そこのガリガリノッポは暇かのう? ならばちょっと手伝って欲しい事があるのじゃが」
するとマビュラスがヴィクロスの言葉を全て聴くと急に現れてはなにかを云い始めた。なんとも噂通りの地獄耳の持ち主らしい。にしてもなにやらマビュラスの手伝いがあるらしい。
「うげ。女軍師」
ヴィクロスは急に現れたマビュラスを見て拒絶反応が出た。だからついついそんな事を云ってしまった。ヴィクロスの本音は当然の話でマビュラスが苦手だった。なのになんの用が。
「うむ。相変わらず口が汚いのう」
マビュラスは頷かずに云った。マビュラスは天然だ。だから自身が先にヴィクロスの悪口を云った事を忘れていた。でもマビュラスは密かにこの前のヴィクロスの無礼の返しをした。
「どっちがだよ!」
ヴィクロスの鋭い突っ込みが入った。まさにヴィクロスは突っ込みでマビュラスがボケのように見えた。意外にもヴィクロスとマビュラスは波長が合うのだろう。不本意だろうけど。
「えーと・・・・・・マビュラス軍師。なにを手伝えばいいんですか」
ゼルクはヴィクロスとマビュラスの突っ込みとボケを見てから云っていた。その口調は厭きれていた。しかしなんとか持ち直してゼルクはマビュラスに訊いて見た。一体なんの用だ。
「お? ゼルクは話が早いのう。ガリガリノッポとは大違いじゃ」
マビュラスは間隔のよいゼルクの質問によくぞ訊いてくれた的な感じで反応していた。するとマビュラスはゼルクに感心した。そして最後にはガリガリノッポのヴィクロスと比べた。
「悪かったな。ガリガリノッポで」
ヴィクロスはこの程度では怒らないが念の為に云っていた。どうやらヴィクロス自身は自分の事をガリガリノッポだと思っていたようだ。しかしヴィクロスは気にしてはいなかった。
「あ! あの! 私もそろそろお祖父ちゃんのところに帰りたいんですけど」
とメリルが急に云い始めた。メリルはここで云わないと長話に巻き込まれると思っていた。だからメリルは思い切って云った。はっきり云ってメリルは今の自分は必要ないと感じた。
「あ! メリルちゃん! ごめん! そうだね。そろそろ帰りたいよね?」
ゼルクが慌てて反応した。確かに今のメリルは別に独立隊の一員ではない。よってゼルクはメリルに同調した。これがヴィクロスならばなんて事なんだと思うが相手はまだ一般人だ。
「はい! ゼルク様!」
メリルは嬉しかった。こうして同調してくれる事が。だから上機嫌に云っていた。ちなみにローゼリア女王陛下とジェネガルがいた時はジェネガルが先頭でメリル達は二列目にいた。
「あの! ごめん! 一人で帰れるかな」
ゼルクは右側にいるメリルに話し掛けた。ゼルクにしては素っ気ない対応だった。それもマビュラスの依頼が気になったからだ。だからゼルクはメリルに一人で帰れるかなと云った。
「あ! それは大丈夫です! んじゃ私は邪魔そうなのでさっさと帰りますね?」
メリルはゼルクの云った一人で帰れるかなにゼルクの申し訳のなさを感じ取りながらも云っていた。メリルは決して嘘を付いていない。本当に自分一人で帰れると思い帰ろうとした。
「うん! またね! メリルちゃん!」
ゼルクはまるで慌てたかのように立ち上がったメリルを見ながら云った。ゼルクは返事の時に頷かなかった。だけどゼルクはメリルの軽い右手の振りに同じ右手の振りで返していた。
「はい! ゼルク様! それでは大変お世話になりました!」
メリルは頷く事はせずに返事をした。メリルがゼルク様と云った後に振り返り四列目の距離になるまで走った。そして立ち止まりゼルク達の方を見るとヴィクロスに対しても云った。
「うん! バイバイ!」
ゼルクはその気配を感じ取りすぐさまに立ち上がるとメリルの方に振り返った。それから頷かずに云い始めた。ゼルクは今のメリルちゃんなら一人で大丈夫だろうと思い込んでいた。
「また今度です! ゼルク様! それじゃあ!」
メリルが元気よくそう云い終わると一礼してから離れて行った。メリルの一礼は癖のようにしていた。なんともそのような光景を目にしたゼルクはなんていい子なんだと思い始めた。
「・・・・・・ふむぅ。あの子が噂のメリルかのう」
マビュラスが背中を向けているゼルクに対しても云っていた。否。むしろほぼの確率でゼルクに対して云っていた。マビュラスはメリルとゼルクのやり取りからそう思い始めていた。
「え? あ! はい! そうです!」
ゼルクは急に話し掛けられたと思い慌てて振り向いた。振り向くまではやや黄昏ていたがマビュラスによって現実に呼ばれると不意を突かれたかのような声を出していた。大丈夫か。
「そうか。そうか。中々いい子そうじゃのう」
マビュラスは胸の前で両腕を組んでは深く速く二度は頷いていた。それも言葉に合わせて云っていた。そしてそのままの状態で云い終わるとほのぼのとし始めた。なんとも楽観的だ。
「おほん! ところで女軍師に訊くが俺達になにを頼みたいんだ?」
ヴィクロスがゼルクとマビュラスを現実に戻すべく咳払いをした。さらにヴィクロスは優しさの限り本題に踏み切った。ヴィクロスはなんともマビュラスを睨み付けるような感じだ。
「おっと! 忘れるところだったの! それはのう。敵の包囲網が解けた事によってのう。物資の行き来が可能になったのじゃ。つまり早い話が物資運搬の護衛役を頼みたいのじゃ」
マビュラスは唐突に元の世界に戻ってきた。そしてマビュラスは勢いのままに云い始めた。マビュラスの話を最後まで真面目に聴くとどうやら物資運搬の護衛役を頼みたいとの事だ。
「なるほどな。それを俺達に頼みたいと?」
ヴィクロスは顎下に右手を当てると納得がいったようだ。ヴィクロスとゼルクはマビュラスの云った事を理解した。だからヴィクロスは確認するようにしながらマビュラスに訊いた。
「ああ。そうじゃ。やってくれんかのう」
マビュラスは胸の前で両腕を組んだままだったが今回は頷かなかった。どちらかと云えばマビュラスは今の真顔を見て欲しかった。だからまるで睨めっこをしているような雰囲気だ。
「どうする? ゼルク?」
ヴィクロスも真顔になっていた。その上でヴィクロスはゼルクに訊いて見た。そもそもヴィクロスの隊長はゼルクなので訊くが道理だと思った。ヴィクロスはゼルクを信用していた。
「困っている人がいるなら手伝うまでだよ。ヴィクロス」
ゼルクはそんなヴィクロスを信頼していた。きっとこんな事を云ってもヴィクロスは絶対に反発しないだろうなと思っていた。それにゼルクの正義が心の奥底から溢れ出てきていた。
「お! なら話は決まりだな! それでその護衛物資はどこにあるんだ?」
ヴィクロスはゼルクの期待に応える形になった。ヴィクロスはゼルクならそう云うだろうと思っていた。お互いに結局は辿り着いた答えは一緒だった。ヴィクロスはゼルクの為にだ。
「それはのう。アルディモンテ村にある」
マビュラスが両腕を組んでいたのを解いて元の位置に戻した。それから云い始めた。マビュラスから緊張感が伝わってこないところを見るとそんなに難しくない依頼か。どうだろう。
「アルディモンテ村か」
ヴィクロスはマビュラスが云ったアルディモンテ村を知っているようだった。どうしてヴィクロスは知っているのか。それは単純にアーマデラスの依頼で行った事があるからだった。
「一体・・・・・・どんなところなんですか」
ゼルクはマビュラスの云ったアルディモンテ村を知らないでいた。なぜならゼルクは人生の大半をほぼ近衛隊で過ごしていた。しかも近衛隊は近衛隊でも姫様の専属の近衛隊だった。
「アルディモンテ村と云えば」
ヴィクロスがゼルクに分かり易いように説明しようとした。だけど云いたい事が多いのでまずはなにを云っていいのかが分からなくなった。このヴィクロスを見る限り処理が下手だ。
「ふむ。魔力の篭った原石で有名なところじゃのう」
そこにマビュラスの言葉が入り込んできた。マビュラスは顎下に右手を当てていた。そして云い終わると右手を元の位置に戻した。どうやら魔力の篭った原石が有名なところらしい。
「ああ。結構近いな。これは敵などに遭遇しなければ楽勝だな」
ヴィクロスは頷くよりも軽く受け流すような感じで返事をしていた。ヴィクロスの云うとおりで敵に遭遇しなければ楽勝な依頼だった。しかも赤翼の盗賊団を壊滅にまで追い込んだ。
「そうじゃろう? なら後は頼んだからのう。早速・・・・・・取りに行ってくれ」
マビュラスはヴィクロスの云った敵が云々にだれよりも逸早く反応した。その後のマビュラスは出来るだけ早く行って来て欲しかった。なぜなら敵が最終決戦を挑んでくると思った。
「ああ。分かった。道案内は俺がしよう」
ヴィクロスは一回だけ軽く頷きながら返事をした。ヴィクロスにとってマビュラスの依頼は楽勝だと思っていた。なぜならヴィクロスはアルディモンテ村を知っている。楽勝だろう。
「あ! あの! 物資と云えば隊長のグレイズさんですよね? 一体・・・・・・どうしたんでしょうか」
ゼルクの頭の中にフワフワとした疑問があった。その疑問をゼルクは訊かずにはいられなかった。すかさずゼルクはマビュラスに訊いてみた。確かに物資と云えば隊長のグレイズだ。
「うむ? ああ。グレイズかの。なんでも気合いを入れ過ぎて魔女の一撃を喰らったらしいのう」
マビュラスはてっきりすぐにでも行ってくれると思っていた。だからマビュラスは意外そうな声で返事をしていた。どうやらマビュラスはグレイズの事を知っているようだ。助かる。
「通りで仕事が俺達に来る訳だぜ」
ヴィクロスは飽きれたかのように両手をパーにして肩よりも高く上げていた。さらにヴィクロスは首を左右に振っていた。ちなみにヴィクロスは云い終わるまで動作をやめなかった。
「はは。グレイズさんはご無事なんでしょうか」
ゼルクは失笑気味だった。人の不幸を笑うのは失礼と分かっている。だけどゼルクがグレイズとの仲を考えたら思わず笑ってしまった。ゼルクは場の空気を入れ替える事なく云った。
「そうじゃのう。今はアルオス城内の治療室で休んでおるのう」
マビュラスはグレイズの居場所を知っているようだ。さすがは軍師と云うだけあって隊長の把握が素晴らしい。これならば軍師としての力を少しは信用してもいいと思うほどだった。
「そうですか。無事そうでよかったです」
ゼルクはマビュラスからグレイズの様子を聴くと命に別状はないと判断した。この時のゼルクはお見舞いに行くかどうかを軽く悩んでいた。しかしゼルクは大丈夫そうだと判断した。
「なぁ! ゼルク! さっさと行って護衛を完了させようぜ!」
ヴィクロスの急かす発言だ。ヴィクロスとグレイズに接点はない。だからヴィクロスはグレイズが危篤並みと云われない限りはマビュラスの依頼を取る。ただのぎっくり腰と思った。
「うん! そうしよう! それじゃあ早速行こう! ヴィクロス!」
ゼルクは一回だけ勢いよく頷きながら返事をした。ゼルクは思い切ってヴィクロスの意見に賛同した。この時のゼルクもマビュラスの云う魔獣の一撃をただのぎっくり腰と判断した。
だからゼルクは云い終わると振り返りとりあえず城外を目指した。ゼルクの行動を見たヴィクロスは慌てる様子もなく立ち上がりゼルクの後を追いかけた。とりあえず城外を目指す。
ゼルクとヴィクロスは城外に出る門にまで来ていた。そして門を潜ろうとしたその時になにやら門の中から騒がしい声がしていた。ゼルクとヴィクロスは慌てて見に行くとそこには。
「なんだ? 私はただの流浪人だ」
長身の男が全身黒尽くめで仁王立ちしていた。しかも長身の男は長いロングコートにフードを被りなんと不気味な事に仮面を着用していた。そんな仮面が災いして門番に止められた。
「嘘を付け! ただの流浪人ならばどうして仮面を被る必要性があるんだ!」
ゼルクから見て右側の兵士が声を荒げていた。確かにただの流浪人なら仮面を被る必要性はない筈だ。長身の男はどうして仮面を外さないのだろうか。素直になれば通れる筈なのに。
「そうだ! 怪しい奴め! 今すぐここでその仮面を外せ!」
ゼルクから見て左側の兵士が右側の兵士の言葉に同調していた。どうやら長身の男は門番に足止めを喰らっているようだ。それも仮面を付けているからと云う理由で。確かに怪しい。
「・・・・・・悪いがそれは出来ない」
長身の男は困っているような素振りを見せない。だが沈黙がやや長かったところを見るとなにか不味いようだった。長身の男はあっさりと断った。このままでは埒が明かないだろう。
「な! なんだと!?」
ゼルクから見て右側の兵士が驚いていた。正直のところでここまでしてでも素性を明かしたくないとなると犯罪者としか云いようがないような気がしてきた。なにかやましい事でも。
「き、貴様! 怪しい奴め! とっつかまえてやる!」
ゼルクから見て左側の兵士が門番としての仕事をしようとしていた。どうやら力尽くで捕まえて仮面を強制的にはがすようだ。そうでもしないと本当に埒が明かない。仕方のない事。
「無駄な争いをしている暇はないのだがな」
長身の男の発言は実にめんどくさそうだった。それでも冷静に淡々と云っていた。長身の男は長剣を腰に付けていた。それも不思議な長剣だ。なぜなら長剣に石がはめ込まれていた。
「なにを!? 偉そうに! おい! 行くぞ!」
ゼルクから見て左側の兵士が右側の兵士と連携をする為に云い始めた。ゼルクから見て左側の兵士が腰に付けている長剣の柄に手をやった。そして今にも抜くぞと構えを見せていた。
「おう!」
ゼルクから見て右側の兵士はなんとも頼もしい位に威勢よく返事をした。ゼルクから見て右側の兵士も云い終わると長剣の柄に手をやり抜く構えを見せた。門番対長身の男の戦いだ。
「やれやれ」
長身の男は怖がる様子もなく左右に首を振った。云い終わると首を左右に振らなくなった。それにしても長身の男は不思議な長剣を鞘から抜く動作を見せずにいた。一体どうなるか。
「ちょおっと! 待ったぁあ!」
とそんな空気にヴィクロスが割り込むように急に移動を開始し云い放った。ヴィクロスは割り込んでどうするつもりなんだろうか。ただの冷やかしならば余計な事はしない方がいい。
「あ・・・・・・ヴィクロスさん」
ゼルクの塞き止めは実に弱腰だった。と云うよりも気付いたら既にヴィクロスが動いていた。仕方がないのでゼルクはヴィクロスの後を歩いて付いていく。果たしてどうなるのやら。
「な、なんだ!?」
ゼルクから見て右側の兵士が急な呼び掛けに驚いていた。それもそうだろう。急な呼び掛けをされたらだれだって拍子抜けに遭う。一瞬のヴィクロスの判断が吉と出るか。それとも。
「だ、だれだ!?」
ゼルクから見て左側の兵士が急な呼び掛けに驚いた。一歩遅れて驚いていたが右側の兵士よりは冷静だ。一番後ろからゼルク。ヴィクロス。門番二名。長身の男の順番で並んでいた。
「そいつは俺達の仲間なんだ。ほら。そこにいるだろ? かの有名なゼルク様が」
ヴィクロスがなぜか嘘を付いた。そもそもヴィクロスは長身の男と初対面だ。つまり矛盾だらけの大嘘を付いた。ヴィクロスはなにを考えているのかがわからないが助けようとした。
「うむ? ゼルク・・・・・・。は! 神の右腕! ゼルク様かぁ!」
ゼルクから見て左側の兵士が最初は惚けた感じだった。だけどゼルクの名前を聴いて深く沈黙に入ると思い出していた。ゼルクの事を兵士達の間では神の右腕と呼んでいた。有名だ。
「なに!? それは本当か! ・・・・・・ゼルク様! この仮面の男とは知り合いなのですか!」
ゼルクから見て右側の兵士がゼルクの存在に驚いていた。ゼルクから見て右側の兵士は沈黙の時に長身の男を見ていた。そして喋り始める前にゼルクの方を向いた。どう返事をする。
「え?」
ゼルクが不意を突かれたかのような発言をした。この時のゼルクは既に立ち止まっていたヴィクロスの横に付いた。つまりゼルクとヴィクロス。門番二名。長身の男の順番になった。
「本当だよな? な! ゼルク!」
ヴィクロスが横で立ち止まったばかりのゼルクに詰問をした。ここまでくると切羽詰る思いだがヴィクロスの機転を裏切る訳にはいかない。それにこんなところで戦闘はやめるべき。
「う。確かに俺達の仲間だよ」
ゼルクがヴィクロスに続いて嘘を付いた。最初の発言は本当に切羽詰った感じがした。だけどなんとか呑みこみ。ゼルクはヴィクロス同様の嘘を付いた。一体なんの為の嘘だろうか。
「そうでしたか。・・・・・・これは済まない。よし。通ってよし」
ゼルクから見て右側の兵士が反省の色を滲ませたかのような感じで云っていた。ゼルクから見て右側の兵士は沈黙も含んで大分反省をしていて謝った。すると通ってよしと云われた。
「・・・・・・おい! あれだけ離れるなよって云ったよな? ただでさえ怪しいんだからな! お前!」
ヴィクロスは沈黙の時に門番二名の間を通ってから長身の男の前で立ち止まった。そして返事をするついでに長身の男の肩辺りを一回だけ叩いた。初対面なのでお前呼ばわりをした。
「私の名は・・・・・・ヴィゼル。お前などではない」
長身の男は自らをヴィゼルと名乗った。ヴィゼルは実に不快そうな感じを醸し出していた。ヴィクロスに助けて貰っておいてヴィセルはふてぶてしい態度を取っていた。敵か味方か。
「おお! そうだった! そうだった! な? ヴィゼル! これからアルディモンテ村に行くぞ!」
ヴィクロスはなぜかヴィゼルの歩調と合わせてくる。一体なんの為にそこまでの演技をしているのだろうか。まさか後でなにかを要求でもするつもりなのだろうか。分からない事だ。
「・・・・・・そうだな。行くとするか」
ヴィゼルは沈黙の時に平和的にそして合理的に切り抜けれる方法はもうこれしかないと思った。だからヴィゼルは考えを改めて同乗する事にした。門内に入れないがまだマシだろう。
「どうやら本当に仲間のようですね。なら我々はもう関与はしません。では・・・・・・そう云う事で」
ゼルクから見て右側の兵士が完全に嘘を信じ込んだ。まんまと門番二名は騙された。すると門番二名は云う事がなくなった。だから元の位置に戻り始めた。どうやら成功したようだ。
「ああ。お勤めご苦労さん」
ヴィクロスが労いの言葉を門番二名に投げ掛けた。それも聞こえるか。聞こえないかの声量で。ヴィクロスは門番二名が元の位置で監視し始めた時を見計らってヴィゼルに近付いた。
「おい。お前。ちょっと来い」
そしてヴィクロスがヴィゼルの横をすり抜けた時にヴィゼルだけに聞こえるように云っていた。するとヴィクロスが先頭を歩きヴィゼルがヴィクロスの後ろを歩くと云う形になった。
「あ! ちょっと待ってよ! 二人共!」
ゼルクの置いてけぼり感が凄かった。それにしてもヴィゼルとか云う仮面の男は一体何者なのだろうか。ヴィクロスの大嘘の機転で救われたが本当に救うべき相手だったのだろうか。
ゼルク。ヴィクロス。そしてヴィゼルと云う仮面の男は門番の耳に会話が届かないように門外で落ち合う事にした。果たしてヴィゼルは何者なのだろうか。今は何者かが分からない。




