第23話 こんな美少女、俺は知らないぞ
「そういえば、まだ名前を――」
「石野すざくさんですよね」
え?名乗った覚えなどないハズだが。どういう事なんだ?
まあ考えてみれば、学校が同じなんだから知ってたとしても不思議じゃないか。
「そうだ。俺はオスフェリア魔法学園の一-Eに所属している。以後よろしく頼むな」
「こちらこそ。それと遅ればせながら昨日はありがとうございました」
おいおい。いきなり何を言い出すんだ。
コイツとは今日が初対面のハズだぞ。
もしや、誰かと間違えてるんじゃ。
「あのさ、俺等が会ったのは今日が初めてだよな」
「えー。まさか、覚えていないなんて……」
まずい。事の他落ち込んでるぞ。
もしかして泣き出したりしないだろうな。
「すまん。気を落とさないでくれ。単純に忘れてるだけの可能性もある訳だからな」
「そうですか……なら、私が思い出させてあげます。言わずと知れた事ですが、昨日モンスター襲撃事件がありましたよね?」
「ああ」
「実は当日、私も校舎内にいたのですが、運悪く転んでしまって……自力で動く事も出来ない状態だったんです。しかし、そんな時すざくさんが目の前に現れ、抱っこして下さって」
あー!思い出した!そういえばそうだったな。
確か昨日の子も目がクリックリで鼻が小さく、唇が分厚かった。
加えて髪型もマッシュルームとあっちゃ、もう間違いないだろう。
「悪い。本来なら、すぐ気付くハズなのに」
「いいんです。どうかお気になさらないで下さい。助けられたのはコッチなんですから」
よかった。面倒な事にならなくて。
とりあえず泣き出す心配はないだろう。
「そっか。素直に感謝されて嬉しいよ。ところで君はどうして俺の家に?」
「そ、それは、すざくさんの為に身を捧げたいと思ったからです」
な……
もしかして冴えに冴えない男にも春が来たのか?
フフフフフフ。何だかテンションが上がってきたぞ!
「じゃあ、俺が望むあんな事やこんな事もしてくれるのか?」
「あ、すいません。今の冗談です」
ああ、あっちの方にお花畑が見える。
きっと迷える子羊達を誘ってるんだな。
わーい。ゆっくりと前方へ向かおうとしていると、突然顔に何かが当たる。




