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第24話 冷てー。誰だー!俺の顔に水をぶっかけたのは!

 あれ?さっきまでお花畑が広がっていたのに今は薄暗い光景が広がっている。

 てか、ここは丸っきり俺の家じゃないか。

 一体、どうなってんだ。

  

 う……

 顔だけが異常に冷たく感じる。まさか、冷水でもぶっかけられたんじゃ。

 くっ。やっぱり濡れてやがる。よく見たら、服も床もずぶ濡れじゃないか。

 ちっくしょう。誰だ。こんな事をしたのは!

 周囲を見回してみると、右斜め前方でバケツを持った赤月が目に入る。


「という事は、お前が犯人かー!」

「ど、どうしたんですか? 般若みたいに恐ろしいですよ」 

「うるさい! なぜ水なんて引っかけた?」

「それは誤解です。かけたのは私じゃありません」

「嘘つけ! ならなぜそんなモノを手にしている?」

「うっ……」

 

 全く。悪質ないたずらをするだけでなく、嘘まで付きやがって。

 絶対に許せん!赤月の目の前まで移動し、こめかみに拳を押し当てる。

 

「な、何をする気なんですか?」

 不安そうな赤月を無視し、拳を半回転させてはまた元に戻す、通称グリグリを食らわす。


「きゃー。いったーい」

 フフ。なかなかいい反応を見せるじゃないか。

 本来ならもう止めてやってもいいが、まだ気が収まらない。

 

「やめて下さい。私はただ、ご主人様が放心状態だったから行動を起こしたに過ぎません。決して故意ではありません」 

 何がだ。

 今更、機嫌を取ろうたってそうはいかんぞ。

 

「ようやく罪を認めたな。ならば、今回だけは許してやろう」

 一旦動きを止め、こめかみから手を離す。


「ありがとうございます。助かりました」

「よかったな、痛みから解放されて。さぞかしホッとしただろう。だが、そもそも俺が放心状態になったのは、お前がたちの悪いジョークをぬかしたせいだろうが!」

「え? 私、何か言いましたっけ?」

「ほう。この期に及んでもまだ悪態を付くか。よーし。分かった……じゃあ、グリグリは続行という事でいいんだな?」

「な、なんでそうなるんですか?」

「問答無用だ!」

 渾身の力を込め、再び赤月にグリグリを見舞う。


「きゃー。もう何するんですか……すざくさんのバカ!」

「フン。なんとでも吠えやがれ」

「くー。なんて憎たらしいんですか! なら今度はもっとひどい事をしちゃいますからね」

「やれるもんならやってみろ。ベロベロバー」

「フフ。なんですか、それ。子供みたい」

 

 何だよ。挑発するつもりでやったのに。

 これじゃ、まるでバカにされてるみたいじゃないか。

 無性にムカつく。ただ、コイツの笑顔はやっぱいいな。

 ホント、癒される。


「実は俺はな、変顔が得意なんだ」

「え? もともと変なお顔ですよね」

「あーん」

「冗談でっす」

「たく。お前って奴は」


 普通ならブチ切れてもおかしくない所だが、純粋無垢な表情を見てるだけで心が穏やかになってくる。

 きっと赤月には、人を惹きつける天性の素質のようなモノがあるんだろう。

 たぶんコイツがいれば、ムスッと三人娘とも上手くやっていける気がする。

 是非我が家に住んで貰おう。

  

「まあいろいろとあるかもしれないが、よろしくな」

「はい。お世話になります」

 それからしばし赤月を残し、風呂場で簡単な着替えを行った後、俺等は共に三階へと向かった。

   

 本来であれば、コイツの部屋は女子三人と同じ階が望ましいだろう。

 だが、そうなると全六ある部屋が住人ゼロとなってしまう。

 なるべくなら、目の前のいずれかを選択して貰いたい所だが。

  

「じゃあ、さっそく見ていくか?」

「はい」

 ゆっくりとした足取りで手前の三〇一号室へ入る。


「わー。なかなかいいですね。あまり広いという感じではないですけど、一人くらいならちょうど良さそうです」

 

 よし。好感触だぞ。

 こら、絶対にいける!

 

「ちゃんとバスルームやトイレもあるんですね」

「ああ。日常生活に必要な物は何でも揃ってる。従って不自由さはないだろう。一応、他もこんな感じだったりする。という訳でどうかな? ここをお前の新しい根城にしてみないか?」

「いや。結構です」

  

 えー。めっちゃ目を輝かせていたくせに。

 どこが気にいらなかったんだ?

 訳が分からん。何だか不安になってきたぞ。


「そうか。ならば――」

「さ、ちゃちゃっと次へレッツゴー」

 な……

 何を考えているんだ、コイツは。

 いきなり胸を押し当ててくるなんて正気とは思えんぞ。

 いい加減にしやがれ!

 

 と叱りつけたい所だが、柔らかい感触が何とも気持ちいい。

 ああ。ずっとこうしていて貰いたい……

 


 ってバカモーン!即効でお色気に負けてどうする?

 三人に発見でもされたら、一大事だぞ。何とか心を鬼にして頑張らねば。


 

「悪い。離れてくれ。暑苦しくてしょうがないんだ」

「はーい」

 ふー。よかった。

 ただひたすらにその時を待つが、赤月が有言実行する気配は一向にない。


 こ、こんにゃろー。口ではああ言っておきながら、ちっとも行動を起こさないじゃないか。

 舐めてんのか。


「おい。何をしている? 早くしろ」

「分かりました。なら、今度こそ。ただ、代わりに案内をして下さい」

「は? そんな事する必要はないだろ。さっきも言ったように――」

「じゃあ、もう知りません。プンプン」

 

 くっ。勝手に密着し出したくせに条件まで付けてきやがって。

 全く。なんてわがままな奴なんだ。

 だが、よく考えてみればちょっと付き合えばいいだけなんだよな。

 しゃーない。



「分かったよ。やればいいんだろ」

「わーい。さすが、私のご主人様!」

 直後に赤月が腕から離れた為、三〇二号室から順におよそ数分かけて全てを見終える。


 はー。実にしんどかった。いかにも似通った場所をグルグルグルグル。

 冗談じゃない。ただ、地獄のような時間もようやく終わった。

 あとは赤月がどこを選択したかだ。


「長い事ご苦労さん。で、いいとこは見つかったか? 率直に答えてくれ」

「えっと……こういう事を言うのは非常に心苦しいのですが、残念ながらお眼鏡に叶う所はありませんでした。ごめんなさい」

 


 えー。こんだけ時間をかけたというのに。

 もう泣きたくなる……


「どうしたんですか? いきなりしゃがみ込んで。具合でも悪くなったのですか?」

 バカヤロー!力なく沈んだのは他ならぬお前が原因だろうが。

 分かってんのか。クソ。すっかり怒り狂いそうだが、所詮何をほざいても状況は変わらん。とにかく切り替えるしかないだろう。

 

 

「別に何でもない。さっさと四階へ行くぞ」

「え? あ、はい」

 気を取り直し、共に四階へ向かう。

 


 

 


 

 

 

 

 



 



 

 

 



 

 

 

 


 


 

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