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parallels  作者: 核子
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9/11

診察室

「ササキジョウジさんですね?」

医師・・・と見える人間が、診察室に入った私に問いかけた。


「はい、先生に色々とお伺いしたい事が・・・」


と話した時、彼はカルテに走らせていたペンを止めて私を見た。


何から質問するべきだろう・・・

受付では保険証も何も提示していない。

しかし、のぞき見たカルテには、私の名前と生年月日、年齢が既に記載されていた。


「さて、何を聞きたいんでしょうか?」

眼鏡の奥に有る彼の双眼が私を見据えた。


「先ずは・・・そのカルテですが、なぜ私の名前が書かれているんですか?」

私は目の前に有る疑問を優先して投げかけた。


「困りましたねぇ・・・また記憶障害の症状が現れてます。」

「佐々木さんは2週間前から通院してるんですよ。」

「お薬、ちゃんと飲んでますか?」

彼はカルテの診察履歴を眺めながら、質問と共に答えた。


お薬?

私は処方を受けた記憶が無い。

しかも最初は、まさに初診の患者を診る対応だった筈なのに、今は通院患者に対する対応になっている。


「ちょっと待ってください。ここに来たのは今日初めてですよ?」

「2週間前って、どう言う事ですか?」

少し冷静さを失った勢いで、私は質問を続けた。


「えぇ~っと・・・ご覧になってください。」

彼はカルテの診察履歴を私に向け、日付欄を指差した。


今日は1992年11月9日。

初診日が・・・1992年10月26日。

2週間前の月曜日から通院している・・・事になっている。

これが彼の言う記憶障害なのか?

いや、私には通院記憶の欠片も無い。


「もう一度、脳波を測定してみましょう。」

「あと、少し落ち着くように、いつものお薬を飲んでください。」

彼は看護師に投薬の指示と脳波測定の指示を出した。

看護師は・・・彼女である。

受付に居た彼女が錠剤と水の入ったグラスを持ち、私の横に立っていた。


「はい、どうぞ。」

「これを飲んだら、あちらにいらっしゃって下さい。」


この薬は何の薬だろう・・・

投薬に承服できない私が錠剤とグラスを眺めていると・・・


「効き目の弱い安定剤ですよ。ご心配無く。」


彼女が私の左手に有る薬の説明をした。

この薬を飲んで脳波を測定しないと、この場からの解放は望めそうもない。

どうしようか・・・

私は錠剤を口に放り込むしぐさをして胸ポケットに滑り込ませ、右手のグラスに入った水を喉に流し込んだ。

そして・・・

歩いて・・・

診察台の方向へ・・・

水が・・・


・・・・・・・


「佐々木さん、佐々木さん・・・起きてください。」

「佐々木さん・・・」


「あ、はい」

私は軽い頭痛と共に目を覚ました。


「ここは・・・」

待合室で彼女に身体を揺すられていた。


「大丈夫ですか?」

「先程お呼びしてもお返事が無いので、来てみたらお休みになっていて・・・」

「診察室へ入る前に、診察券をお借りできますか?」

正面に立っている彼女が、私に問いかけていた。


診察券・・・

上着のポケットから財布を取り出してファスナーを開いてみると、そこには花園心療内科医院の診察券が入っていた。

私は診察券を彼女に渡し、診察室へ向かった。



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