20.『君が目覚める前に』 生前レナレイ決戦前夜妄想、本編クリア済み、ネタバレ有 勢いで書きました。レナレイいちゃらぶ下さい(オタクの断末魔) Rー18 #夢境二次 #捏造注意 #溺愛 #♡喘ぎ
幼馴染からちょっとよくわからないことを言われている。
「二次創作って何? いや、単語の意味は知ってるけど」
「決まってるよね。レナレイ二次創作です」
はい。
それはそうだろうね。
「具体的には?」
「私たちでこう、前世から温めてた二次創作ストーリーをロールプレイしていきますので、レイくんにもご協力いただければと思いまして」
なんで敬語なんだこいつ。
まあおおまかな意味はわかった。
要するにいつもの奴だ。突発的な発作だろう。
「どんな話?」
「えっとねえ。雰囲気的には決戦前夜、って感じじゃん? レイがレナに黙って山のヌシを討伐して遺跡からあふれてくる魔獣を封印するぞ、って意気込むじゃん? そしたら死ぬかもしれないわけじゃん?」
「つーか普通にプレイしてたら死ぬけど」
「つまりレイだって不安だし、怖いし、センシスに猛反対されててもレナと二人きりになりたいよね?」
「うん。それで?」
「だからその、逢瀬というか~そういう~」
続きを促すと、何故かレナはそこで少し言いよどんだ。
やや頬が赤い。嫌な予感がする。
それでも妄想を開示することでヒートアップしてきたのか、レナは勢いにまかせて続きを喋り倒す。そのあたりで俺はなんとなく意図を察してしまった。
「考えてもみてよ。決戦前夜とかぜったい盛り上がるじゃん。だってレイくんは戻れないかもしれないって覚悟して戦いに行くんだよ? 最後かもしれないチャンスに愛しのレナと結ばれたいって考えるのは自然じゃないかな?」
「うん、まあ顔くらい見て、言葉を交わしたいとは思うだろうけど」
「いやシてるでしょ。セックスを」
こいつ、俺があえてわからないふりをしたのにぶっこんできやがった。
このゲーム全年齢向けなんだぞ!
「表現は全年齢でも行間とか暗転したとこでやってるよ。男女が一緒に宿屋に宿泊して夜が明けたら『ゆうべはおたのしみでしたね』って言うのが伝統なんだよ」
「セクハラだろ」
「匂わせだよ。描写できないけど脳内で補完してねっていうメッセージなの! つまりレナレイはセックスしてます! つまり初回の死別ルートだとたった一夜の思い出になっちゃうの。そんなのヤダーッ! ずっとイチャラブしてよーっ!!」
このオタク、猛烈な勢いでまくし立てていたかと思ったら、いきなりわっと泣き始めやがった。情緒不安定過ぎるだろ。
落ち着かせるために俺は冷静な指摘を試みた。
「親に認められてない状況で貴族と平民で万が一があったら大変だし、レイはそういう無責任なことはしないんじゃないか? 真面目で思いつめるタイプだろ」
「それを理解した上で気持ちが抑えきれないの! ゴム切らしたことに気付いても勢いとか流れで止まれないタイミングが恋人同士にはあるの!」
がばっと顔を上げて熱弁するレナの物言いに無性に腹が立った。
きりきりとした胸の痛みを悟られないように温度の低い声で返す。
「理性で止まれよアホ。そんなことやってるから男関係で揉めるんだろうが」
「あの、うん。その件ではご迷惑をおかけしました。反省してます」
まあまあ本気で苛ついたので態度で表明したし、レナもさすがにしおらしい態度で反省してみせた。だからこいつとこういう話題になるのは嫌だったんだよ。
あっちだってやってるふりとかごっこ遊びで済ませるつもりだとは思うが、それにしたってかなり抵抗感がある。露骨に拒否しても悲しまれるだろうし、どうやってやんわり拒否するか、妥協できるポイントを引き出すかを考えていると、レナが指先をいじりながらおずおずと言葉を続けてきた。
「それでね、レイくんにはお手紙を書いて欲しいんだけど」
「手紙?」
「ていうか書き置きね。終わったあといちゃいちゃして腕枕してもらいながら寝るじゃん? レイくんは私を起こさないように静かに去って、私が目覚めた時にはレイくんの姿はどこにもないのね。それで残された書き置きを見つけるの」
意外な要求だったが、情景のイメージはできた。
確かにレイは何も言わずに去るけど書き置きは残していくタイプだろう。
俺だって同じ立場ならそうするかもしれない。
「そこにはレナへの想いとか、守る力があるって証明するための戦いだから信じて待っていて欲しいって願いとか、もう戻れないかもしれないという恐怖を必死に押し隠す健気さとか色んな想いが綴られて、うう~もう考えただけで泣けてきた」
自分で勝手に盛り上がって勝手に涙ぐんでる。こわ~。
レイに死んで欲しくないという気持ちはあるっぽいんだけど、それはそれとして恋人同士の死別という悲しいイベントを全力で消費してる感が客観的に見るとややグロいんだよな。まあそれ言ったら泣き要素のあるフィクションは悪趣味ってことになっちゃうから全否定はしないけど。
俺の感想はともかく、レナは泣きにも大マジだった。
「私なりの理想はあるんだけど、レイくんにはぜひ自分自身でエモくなる感じの文面を考えて欲しいなあって。レナレイの絆を思い浮かべながら愛を綴ってね?」
「すげえ無茶ぶりするじゃん」
「ね? 便箋を用意したから。大事な幼馴染のことを考えるんだよ? 私が横で添削してあげるからやってみよ? はぁいペン持って~現国のテストやるみたいに~『愛しのレナへ』って書いて、ほら書いて~」
強引に俺を寝台の上に押しやりながら、膝の上で書かせようとするレナ。もうちょっと安定した場所で作業させて欲しいのだが、寝台に並んで座った状態で体を固定されてしまったので身動きが取れない。こいつ、俺を逃がさないつもりだ。
「わかった。わかったよ。考えてみるから、下手でも笑うなよ」
「うん、楽しみにしてる!」
ここ最近で一番の笑顔だった。めちゃめちゃ可愛い。
何だかんだでやる気にさせられてしまった俺はまんまとレナの思惑通りによくわからん手紙を執筆することになった。つーか原作と違って今回はレナもついてくるつもりなのに、誰に向けた手紙なんだよこれは。
内心で文句を垂れながら、頭を捻りつつペンを走らせていく。
そこそこ順調に進んでいたが、やがて問題が発生した。
俺がしばらく文面を書き連ねていると、それを読んだレナがにやにやと笑みを浮かべながら俺の頬をつついてきやがったのだ。
「え~レイくんそんなに私と別れたくないんだ~」
「茶化すな。レイの気持ちを想像して書いてるんだから」
「ふーん。ふうーん。私のこと誰にも渡したくないんだ。自分の手で守りたいんだ。へえーそっかー。男の子じゃーん」
「レナ、ちょっと黙ってて。真剣に考えてるから」
「えっ、なになになに? その表現なに? 温もりって何ですかー? どういう意味でその表現使った? ちょっとぉレイくんのえっち~」
「お前さ。添削とか助言とかする気ないだろ。お前の無茶ぶりに頑張って付き合ってる奴をからかって楽しいか?」
「ちょう楽しい!」
何で俺はこんな意地悪に真面目に向き合っているのだろう。
下らないと放置してしまえればそれが一番いいのだと思うが、何だかんだと付き合ってしまうのは俺自身もこの状況を楽しんでいるということなのかもしれない。
嫌な可能性だ。精神的なマゾヒストなんて絶対に御免被る。
「あっ、レイくん、必要な文面が抜けてるよ」
「何だ? これ以上恥ずかしい要求は勘弁して欲しいんだけど」
「じゃなくて~、『待っていて欲しい』みたいなお願いを入れて欲しいの。『忘れないで』もいいけど、生還を信じたいから『待ってて』かなぁ。これがあるから死霊化した後の再会が熱いし、生存ルートで結ばれるのがエモくなるんだよね~、私が勝手に言ってるだけだけど。でも永遠の愛をお互いに信じ続けて欲しくない?」
知らねえよ。精神的に疲弊していた俺はかなり投げやりに加筆を済ませた。
個人的に言いたいことはあるものの、クライアントの意向が優先だろう。
ようやく手紙を書き終えて、深々と息を吐く。
真横に座っているレナに手渡すと、大事そうに胸の前で抱えてご満悦の表情だ。
「わ~い。レイくんからのお手紙だ~! こういうのってさ~、小学生の誕生日以来じゃない? 私ずっとレイくんのお手紙とってたよ~」
「やってたな、そういうの」
たったいま思い出した、みたいな反応をしたが俺も自室に保存してある。
隣に住んでるからわざわざ手紙なんて送る機会なんてないし、形に残るような言葉なんて誕生日に贈り合うメッセージカードくらいのものだったのだ。
あれを手紙と呼ぶのかはわからないが、日ごろの感謝とかこれからしたいこととか未来でも仲良くしたいとか、それはもう恥ずかしいことばかり書いていた気がする。
「んふふ~、なんかレイくんが久しぶりにいっぱいお願いきいてくれて嬉しい」
レナはやたらと上機嫌にこちらに寄りかかってくる。
確かにこいつの異常行動を止めてばかりだったからそういう感想になるのはわからないでもない。だがちょっと距離が近すぎる。寝台の上というのも良くない。
こいつが無神経に俺の寝台やクッションを独占するのはよくあることだが、俺の方は並んで座ったりしないように気を付けてはいたのだ。
いくら家族同然に育った幼馴染とは言っても、ある程度の年齢になれば男女は一定の距離感が必要になる。レナだってそれは理解しているはずだ。
手紙を書いている間は忘れていられた危うい空気が再び蘇る。
レナは、理解した上で踏み込んで来ようとしていた。
それは、正しくないことだ。
「ね、レイくん。いっぱいレナレイしてくれてありがとね」
「人を傷つけるようなことじゃなければ、別に問題ないからな」
レナの頭が俺の肩に当たっていた。細い指先がこちらの指に絡み、根元から爪の先までをなぞるようにさすっていく。手紙を大事そうに仕舞ったあと、文面を反芻するように手を胸に当て、その手を今度は俺の胸に当てた。急に下に滑り落ちる。
「じゃあしよっか」
柔らかく微笑みながら俺を見つめるレナ。淀みなくこちらのベルトを外そうとするその手を押さえながらじろりと睨みつける。
「ふりでもしねえよ。馬鹿じゃねえの。やるとしても台詞だけ朗読とか、それもまあ嫌だが妥協ラインはそこまでだ」
「ふりじゃなくてほんとにするよ? 私たち、転生してレナとレイになってるんだから当たり前じゃん。この世界では恋人同士だって自覚ある?」
どうして俺が非常識な男のように責められなければならないのか。
そもそもこいつと俺では前提が異なる。
「付き合ってたらなんでもかんでもヤるわけじゃねえだろ。お前だって初回で失敗して思い知ったんだろ? 基本的に信頼関係が出来上がる前に体の関係求められたら断るって言ってたよな。一週間くんとかそれで終わってたし。名前忘れたけど」
「あの、え~とさとう、さいとう、いやいとう? 一週間くんはまあそうだけど、レイくんは違うじゃん! 幼馴染じゃん! ましてやレナレイなんだよ?」
「付き合ってない状態での信頼関係と、付き合った状態での信頼関係は違うと思うけどな。どっちにしろ駄目だ。俺とレナはそうじゃないだろ」
前世と現世での関係性を混同してはならない。
レナは多分、この辺をごっちゃにしてしまっている気がした。
それが無意識なのか意図的なのかはわからないが。
いずれにせよ、正しくないやり方だ。
暗黙の了解。俺たちの関係性はそうあってはならない。
お互いに理解しているはずだと思っていた。
それに、レナは俺を好きになることはない。
こいつが好きになる男のタイプはよくわかっている。
さんざん隣で見てきた。見続けなければならなかったのだから。
だが、レナはこっちの気持ちなどお構いなしに不満をあらわにする。
「なにそれ。そんなに私のこと嫌いなの?」
「たかがごっこ遊びでそこまでする必要ないって。つか記憶の同期でわかってるだろ。この二人はそういうのに対して慎重だった。ならそれに合わせろよ」
二次創作はあくまで二次創作。
演技指導とか言ってたアネットにも確認してあるが、レイもレナも基本的にキス止まりでプラトニックな関係性のまま長く付き合っていたという話だ。
ニックが語っていた村の様子を考えればなかなか珍しいと言えるが、それはそれでキャラクターの尊重すべき個性のはず。
それを否定してまで押し通すような道理はないはずだ。
ところが。
レナはそれをあえて無視した。
「おいやめっ、ちょ、腕押さえんな力つよっ」
強引に押し倒される。男女差や体格差などものともしない、レアリティの圧倒的格差と隔絶した能力値。レナがその気になれば、俺を制圧することくらい容易い。
じたばたと抵抗しても無駄だった。片手で重心を押さえられるだけで昆虫の標本のように動けなくなる。レナは自由に使える手で俺の頬を撫で、唇に指を差し入れた。
「こわがらないでいいよ。私がリードしてあげるから」
耳元で唇を鳴らす音がして身を竦ませる。
指で顎をなぞる感触と同時に、ざらざらとしたやわらかいものが耳に触れていく。
かと思えば耳たぶが何度も噛まれていき、頬に柔らかい感触。繰り返し啄むような音がして、それは次第に唇に近づいてくる。
咄嗟に顔を背けると、密やかな笑い声。
「嫌がるふりしてもバレてるから。たくさんお手紙に愛情込めてくれたでしょう? い~っぱい私のことが大好きって気持ち、ここにちゃんとあるからね」
顔を責められて気付けなかったが、いつの間にか上下の服を脱がされかけている。
明らかにまずい状況だった。力では敵わない。拒否しなければならないのに、どうやっても抗えない。自由になるのは、意思と言葉だけ。
逃げられなかった。はっきりとレナを傷つけて、拒絶する必要があった。
「それは『レイ』の気持ちだ。俺のじゃない。俺はそんな手紙は書かない」
「それは嘘。レイくん、ちゃんと考えて書いてくれたもん。気持ち、伝わってるよ」
傍若無人に俺の身体を撫でさする指先が、慈しむように腹筋をなぞり、鼠径部の上で踊り、触れてはならない場所にまで及ぶ。
レナのうっとりとした表情が、愛玩動物を見るようなものに変わる。
「レイくん、かーわい♪」
かっと頬が燃え上がったのが自分でもわかった。恥辱のあまり歯噛みさえできず悶えそうになる。だがそれ以上に、レナの迷いのない手つきと『下に見られている』という確信がきりきりと痛み続ける胸を遂にねじり切った。
レナのためなら死すら厭わないというレイの気持ちには共感できる。
けれど、俺たちが決定的に違うのはここだ。
こんな苦痛には、もう耐えられない。
「俺なら、自分が死んだらレナには全部を忘れて誰かと幸せになってほしいよ。待ってろなんて相手を身勝手に束縛してるだけだろ」
空気が凍った。
相手の顔は徹底して見ないことに決めた。
レナがどんな表情をしているのかはわからない。
ただ、張り詰めた空気を伝う声は震えていた。
「なんでそんなこと言うの」
「こういうことは別のやつとやってろよ。これまでもそうしてたろ」
俺は故意に約束を反故にした。
なるべく前世のことや元の彼氏の話はしないで欲しいと言われていたから、俺だって『レナレイ』の空気を壊したくないというレナの意思を尊重するつもりだった。
だが、もう無理だ。これ以上は付き合いきれない。
「幼馴染がどうとか、レナレイとか、そういうのはフィクションとか想像の中だけで楽しめばいい。現実とは違うって、お互いよく知ってるはずだよな?」
俺は前世で何度も似たような言葉を口にしていた。
幼馴染どうしで結ばれるなんてのは都合のいいフィクションの出来事だ。
現実は違う。幼稚園児の空想のようにはできていない。
俺たちが結ばれることはない。絶対にだ。
間近に感じていた温もりが遠ざかる。
見送ったりはしない。声だけが届いてくる。
「そういう大人ぶった正論しか言えないとこ、昔から大嫌い」
涙声に混じる嗚咽が、扉を閉める音で聞こえなくなる。
外で走り去る足音。
しばらくして夜の静けさが戻り、遠くに聞こえていた祭りの音もいつの間にか絶えていることに気が付いた。
無音の中で、身体を丸めて両腕で頭を抱えた。
もう暗闇さえ見たくない。
自分を感じさせるこの生身が、粉々に砕けて消えてしまえばいいと思った。




