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異世界ファンタジーゲームに一緒に転生した幼馴染が俺と自分のカップリングにドハマりしている~逆現パロのロールプレイ~  作者: 最近


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13/25

13.RPGに釣りのミニゲーム絶対ある説




「弁解しておく。わたしは覗き魔じゃない。すとーかーじゃない。ただちょっと、人よりも目が良くて、優れた能力を持て余しがちだっただけ」


 アネットに異常者のような扱いを受けた俺たちだが、そっちだって相当なものだと指摘するとこんなことを言い出した。

 確かに狩人は目が良くないとやってられないだろう。『獲物に気付かれないように隠れて追跡する』という資質は狩人に必須のはずだ。気配消すのは目とか関係なさそうだが、伝えたいニュアンスはなんとなくわかる。

 しかしまだ若いアネットがこれほどの技術を持っていることを才能の一言で片づけて良いものだろうか。聞けばかなり幼い頃から俺たちが仲良くしている場面を盗み見していたらしいし、スリデートの時だってほとんど俺たちに気配を悟らせなかった。


「自動生成キャラの成長率タイプとか、解析データだと固有の因子があるとかいう話を聞いたことあるよ~。アネットちゃんは技量特化って感じするね」


 レナの推測もかなりふわっとしている。

 この世界はゲームではあるが、同時に現実でもある。

 アネットの個性も、現実化によって生じた変化なのだろうか?

 それにしてはキャラが濃すぎる気もするが。今後、アネットと同じキャラグラフィックの誰かと遭遇した時にイメージが引きずられてしまいそうだ。

 とはいえ、独特の個性を持った狩人というのは心強い味方ではある。


「ま、長所があって困ることはないよな。これからもその力を貸して欲しい。ニックたちの強化もやっていくけど、アネットが頼りになるのは本当に助かる」


 俺の言葉に、アネットは少々面映ゆそうに視線を逸らした。

 そしてなぜか俺の首に突き刺さるレナのチョップ。


「てい」


「なんだよお前は。あといつまで水着でいるつもりだ。普通の服を着ろ。誰かに見られたら遊んでると思われるだろ」


「遊んでますけど? なんならこれから釣りデートですけど?」


 まあそうだけど。

 今日の目的は自警団としての任務、と見せかけてそうではない。

 やってる感を出しつつ川で釣りをするつもりだった。

 釣り。それはRPGなどで定番のミニゲーム。

 何だかんだとやり込めばやり込んだだけ恩恵があるタイプの寄り道(サブイベント)だが、本気でやり続けると本編が進まないと噂の『沼』だ。

 レナはそこそこ本気で取り組むつもりらしく、良いスポットを探して先ほどから川のあちこちを観察していた。

 が、今は何やらその鋭いまなざしがこちらに向けられている。

 というか、俺とアネットを温度の低い目で睨んでいるようだ。


「どーした?」


「釣り、デート、なんですけど? 私、水着、なんですけど?」


 単語を区切っていやに強調してくる。何のつもりかといぶかしんでいると、隣のアネットがはっと口に手を当ててそそくさと俺から距離をとった。


「レイにい! 誤解されてる! やったよやきもちだよ! ほら言い訳しよ! レイにいにとってわたしは妹みたいなものだから! 大丈夫だよおじょうさま、わたしレイにいのこと男として見てないから!」


「発言の全てがアウトだし彼氏の周囲にいてほしくない女すぎるんだけど?」


「わたしは本当に違うよ! レイにいの恋愛相談に乗るフリして『え~レナおじょうさま厳しい~』とか『わたしだったらそんな顔させないのに』とか言わな、いやどうだろ。犯罪行為の相談されたら言うかも。レナおじょうさまの側にもまあまあ問題があるよ。反省しなよ。そもそも付き合ってないのに距離近すぎる幼馴染に言われたくないよ。レイにいが前世で初ちゅーまだなのそのせいだよ」


「は? なに開き直ってんの」


「こっちの台詞なんだけど」


 またしてもわんにゃん大戦争がはじまりかけたので強引に割って入る。

 どんな状況からでも喧嘩に移行できるなこいつら。

 ぜえはあと荒く息を吐きながら、アネットが不承不承といった表情で口を開いた。


「とにかく、わたしは村のみんなにとっての妹でやらせてもらってるから。結婚相手もそろそろ豊穣祭とかで見つけるからへいき。『レナレイ』の邪魔はしない」


「ふ~ん。そっか妹。妹ポジションね」


 よくわからない主張を聞いたレナは何やら頬に手を当てて思案していたが、しばらくして薄く笑みを浮かべた。どことなく投げやりに。


「アネットちゃんがレイくんの妹やりたいなら、いいよ。その代わり、妹の立場を誰かに譲っちゃダメ。妹はアネットちゃんで固定。他の誰もレイくんの妹にはならないの。それでいい?」


「うん。それでいいよ。妹をがんばる。レナおじょうさまは未来のおねえちゃん。つまり、いまのうちにレナねえ呼びに慣れておく」


「それはなんかイヤ。わたし妹はいらないから」


 これは一定の理解が得られたということなのだろうか。

 それでも仲は悪いままなのがこの二人、という感じだが。

 言いたいことを言い終えたのか、アネットに『距離感に気を付けてね』と言い残してからレナは最適な釣りスポットを探すべくどんどん先に行ってしまった。


「なんか悪いな。でもあいつがあんなに敵意出すことって珍しいんだよな。普段は反りが合わなくても曖昧に笑ってやり過ごすタイプだから」


「きっと、あっちはあっちで目がいいんだと思う。わたしのことも見透かされてる」


「どういう意味?」


 俺の問いに、アネットは何も答えずにじっと見つめ返してくるだけだった。

 一歩、二歩と前に出て、ブーツの底を浅瀬でぱちゃぱちゃ濡らしながら進んでいく。先を行く少女たちの表情が、俺にはわからない。

 遠くを見ながら、アネットがやや強引に話題を切り替えた。


「目が良すぎると困ることもある。色々な秘密を知って気まずい思いもした」


「へえ、どんなの?」


 一瞬だけ迷ったのか言葉に詰まる。

 すぐに答えが返ってくるが、正直に言って聞くべきじゃなかった。


「おじいちゃんのセックス見ちゃった」


「想像をはるかに超えたドエグいエピソードが来た」


 移動中の雑談でぶち込んでくる話じゃねえだろ。

 なんなんだよ。その話を共有して俺にどんな気持ちになってほしいんだ?

 それとも、行き場のない感情をどこかにぶつけたかったのか?

 気持ちはわからんでもない。『そういうの』がきついことは良く知っている。


「おばあちゃんいなくなって寂しかったんだって。おんなじように『連れ添いを亡くしたご婦人とのわんないと』って言って、何人か」


「複数人?! 元気過ぎない?」


「不倫はしてなくてちょっと安心した。でもやさしいおじいちゃんが何かチャラくてまあまあ怖かった。人間って色んな一面がある」


「若い頃は遊んでたのかな。いや今もか」


 アネットは自動生成NPCのポジションだが、その祖父は原作ゲームにも出てくる名前ありのキャラクターだ。ローレン・ハンターという老練な狩人で、俺の死因となるであろう中ボスに息子夫婦を殺された過去を持っているらしい。

 ちなみに話しかけると中ボスがいかに危険な魔獣かを説明してくれる。


『奴の爪は剣のように鋭く、攻撃されれば出血を強いられることになるだろう。『包帯』の用意を忘れるな。それから分厚い毛皮には斬撃と打撃じゃ効果が薄い。槍や弓矢で戦うべきだろう。毒薬や眠り薬も用意しておけ。だが何度も通用するもんじゃない。ここぞという場面で使うんだ。そうそう、奴は魚を好む。渓流で『最上級の川魚』を釣っておけば、罠として使えるかもしれん』


 要するにめちゃめちゃ攻略情報教えてくれるおじいさんである。

 もうちょっと自然に情報伝達できない? という感じの懇切丁寧さだが、こんな感じで各地の拠点に解説役が配置されている世界なんだから仕方ない。

 しかしそうか、あの解説キャラにそんな一面が。ゲーム上の役割が明確なキャラに『人間性』みたいなものがあるという実感がどんどん湧いてくるが、その性質が『遊んでる』とか『やんちゃしてる』とかなのは何なんだ。


「凄い経験してるな。まあちょっとだけ気持ちわかるよ。そういうのうわ~ってなるよな。毎日顔合わせなきゃなんないのにどんな顔してればいいんだよって。朝食とか抜いて外で食べたくなる」


「レイにいもそういうことあった?」


「うんまあ。レナもなんだけど、親がヤってるとこ見ちゃってさ。二人してしばらくトラウマ引きずったよ」


 結果として誕生したのが万引き娘と不正を絶対許さない学級委員長気取りだったのはまあまあ忘れたい過去だ。もしかすると、まだ引きずったままかもしれないが。

 夢見る小学生が目の当たりにするには、あれは少々グロテスク過ぎた。


「さすがに同情。かわいそう。レナおじょうさまがグレちゃったのも仕方ないかも」


「いちおう、止めはしたんだよ。一時期とか万引き繰り返すようになってさ。俺が犯人として名乗り出て『これだけひどい罰を受けるんだぞ』って見せつけたらやめてくれたんだけど、いま思うともっとしっかり説得しとけばよかったって思うよ」


 それを聞くと、アネットは珍しく眉根を寄せて顔をしかめた。

 平坦な表情が基本の彼女としては極めて稀有な反応だ。

 頭痛を堪えるようにきゅっと目を瞑り、深く息を吐く。


「うん。なんか、レイにいって感じ。レナおじょうさまが変な感じなの、レイにいがアレだったから変にこじれた可能性がある」


「は? なんだそれ。さすがに冤罪だそれは」


 文句を言おうと先を行くアネットに追い付こうとするが、いつの間にかアネットの足が止まっていることに気付いた。

 何やら呆然と前方を凝視している様子だが、何かあったのだろうか。

 確認した俺はまず目を疑い、それからうめき声を上げそうになった。


「なあ、あれってさ、もしかして」


「うん、それで合ってる」


 アネットが見ている先で、レナが立ち止まっている。

 どんな心境なのか、ここからは計り知れない。

 その場所には先客がいた。

 簡素な釣り竿を持ち、糸を垂らして川釣りを楽しむ村人だ。自警団が総出で周辺の警戒にあたっているという状況を理解しているのだろうか。随分とリラックスした雰囲気でその場所に佇んでいる。

 固有キャラではない。モブグラフィックのどこにでもいる老人だ。

 だが、俺たちはその人物に見覚えがあった。

 一度でも出会えばステータス欄から名前などの確認ができる。

 顔の見分けがつかなくとも、それが誰であるのかくらいは判別できるのだ。

 釣り人の名前は、ハンスといった。

 レナが殺して死霊術の糧にしようとしていた人物である。


 


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