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異世界ファンタジーゲームに一緒に転生した幼馴染が俺と自分のカップリングにドハマりしている~逆現パロのロールプレイ~  作者: 最近


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10/26

10.心の声(めちゃくちゃ)




 結局、屋内からの攻撃で魔獣を仕留めることはできなかった。

 雑魚の小型魔獣とはいえ、その耐久力は一般人より遥かに上だ。

 敵の半分は『番犬』の魂を持ち、防御とカウンターに優れる。

 もう半分は『駿馬』の魂を持ち、移動速度と手数に優れる。

 番犬型魔獣は矢の攻撃だけではHPを削り切れないし、駿馬型魔獣は『標的』状態でも矢を回避することがあった。

 いずれも入念に準備を整えなければ倒すことができない難敵だ。

 そのまま足踏みしていては外壁が破壊されるだけ。


「これ以上うだうだやってもしょうがないよ。わたしから行くね」


 まずアネットが戦いの火蓋を切り、放たれた銃弾によって幕が切って落とされた。なんか混ざったな。これで用法正しいんだっけ?

 実際に放たれたのは銃弾ではなく矢だ。

 割れた窓を銃眼にしたアネットが支援しつつ、俺とレナがドアをぶち破って外に出る。家屋を攻撃していた魔獣たちが一斉にこちらを注視する。

 既に俺とレナはネクロマンサーの初級スキルを習得済み。

 死霊召喚はレナに任せ、俺は必要最低限の構成で自分を強化していた。使うのは戦士と相性がいい『生命吸収』と盗賊と相性がいい『腐敗の刃』のみ。どちらを軸に育成するかで今後の方針が変わるが、今はこれだけ使えれば十分だ。

 レナが担当する『死霊召喚』や『死体爆破』に必要な魂のリソースは戦闘中に現地で調達することに決まった。

 既に退路はない。あとは力の限り戦うだけだ。

 ただ、戦意とは裏腹に気持ちは晴れない。

 作戦開始の直前、アネットに告げられた言葉が小さな棘となっている。

 

『わたしはやっぱり、レイにいとレナおじょうさまを完全に信用しきれてない。お互いへの愛が重いっていうかキモ過ぎて、すごくめいわく。また変な動きをするようなら、後ろから撃つかもってこと、覚えておいて』


 失った信頼は大きく、溝はどこまでも深い。

 無事に生き残ることができたとしても、その後に俺やレナが周囲とどう折り合いをつけて生きていくのかという問題もある。

 重要なのはタイミングと連携だ。全てがちぐはぐなこの三人で上手くいくかどうかは正直言って賭けになる。それでも今は互いを信じるしかない。

 『|Dream Border《ドリームボーダー》』の戦闘システムは一見するとリアルタイムで進行していくアクションRPGに似ている。しかし、実質的にはターン制のコマンド式戦闘とマス目やグリッドで区切られたマップの上でユニットを動かすシミュレーションRPGの要素も併せ持つ、ごった煮のような性質を持っていた。


「俺が左をやる! レナは右を頼む!」


「了か」


 い、という音が低く長く引き伸ばされていく。

 時間がひどくゆっくりと流れる。

 魔獣たちはスローモーションで飛び掛かろうとしており、着実に動いてはいるがその速度は亀よりも鈍重だった。

 世界がセピア色に染まり、俺の目の前にはメニュー画面とショートカットボタンが出現する。更にパーティーメンバーであるレナとアネットのアイコンも表示されており、念じだけで自在に動く矢印のカーソルによって操作が可能。

 さっきまでは戦闘中にメニューの呼び出しができることに気付いていなかったが、そもそもこのゲームはガチガチのアクションとかではない。

 落ち着いて考えたり対処の手順を考えるための時間が確保可能で、見た目よりも射程や範囲、効果対象などが厳密に設定されているためプレイヤーのスキルよりもキャラクターのステータスの方が重要なことが多い。

 プレイした感触としてはむしろターン制コマンド戦闘にアクション要素を違和感なく組み合わせて派手なエフェクトや素早いキャラの動きによって爽快感があるように見せかけている、という印象だ。

 基本的にはこの『ゆっくりと時間が進むメニュー画面』を活用して戦う。

 この状態ではプレイヤーが操作する仲間キャラを切り替えることもできるし、彼らにどこに移動してどんな行動をするか、コマンドを入力して指示することもできる。

 問題は、俺とレナの場合でも可能なのかどうか。


(あ、来た)


 俺の目の前で勝手にスキル一覧の窓が開き、自分のものではないカーソルが『シールドバッシュ』を指示。俺は即座に自分のカーソルで指示を解除。

 レナのスキル一覧から『パリィ』を指示。すぐに濃く縁取られたスキル名から色が消える。お返しとばかりに俺にジェスチャーの『あぐら』と『昼寝』を実行させようとするクソみたいなアホカーソル。それならばと俺はレナに『カーテシー』を指示。しばらく行動命令によって疑似的な意思疎通《テレパシー》ができることを確かめ合う。

 やはり俺たちは仲間に対して『指示』ができる。これをしてほしい、という簡単なメッセージだけでも相手の意図はそれなりに伝わるものだ。

 これで連携面の問題はある程度は解消された。

 時の流れが再び通常の速度に戻る。

 俺とレナは息を合わせて魔獣の連続攻撃を順番にガード。防ぎきれないと判断した場合は可能な限り耐久力に秀でたレナが受け止めていくが、じりじりと消耗していくことは避けられない。きりきりと胃が痛んだ。

 ほぼ初期レベルの状態の俺たちには余裕がない。防御に専念していても長期戦になれば耐えられないだろう。


(『生命吸収』スキルである程度は生き残れる可能性は上がってるはずだ。慌てるな、落ち着いて対処しろ)


 攻撃及び防御時に敵のHPを一定割合吸い取るこのスキルは俺の生存率を引き上げてくれる。事前準備が功を奏したのか、怒涛の連続攻撃を受けても俺のHPが消し飛ぶことはなかった。

 レナの回復スキルによる支援に加えて薬をがぶ飲みすることで必死でHPを維持。次々に消費するためあっという間に枯渇。薬品の代わりにサンドイッチをガツガツと口に詰め込んで回復。やってよかったスリデート!

 ガードの失敗一つで致命傷。モブキャラにとっては雑魚との戦闘でさえ死闘だ。


「ふぇふぁ! ふぉふぉは!」


「レイくん食べながらしゃべんないで」


 敵集団が一通り攻撃を終えたタイミングで、アネットが矢を放つ。

 指示通り、最後に俺を攻撃した魔獣に命中。ほぼ同時に俺も攻撃を仕掛けた。

 『シールドバッシュ』で大きく吹き飛ばすことで、アネットの付与した『減速』とあわせて敵の攻撃機会を減少させるのが狙いだった。

 俺たちはひたすら防御に徹しつつ、まずはアネットが『標的』と『減速』の状態異常を合計五体の魔獣に付与するのを待った。

 こちらの狙いは速度差による敵の分断だ。

 まず比較的足が遅い番犬型魔獣を更に減速させ、盾を装備可能な俺とレナがどちらも使用できる『シールドバッシュ』で後方に吹き飛ばしていく。

 夜の闇に紛れるかのような黒い獣たちの中に、一体だけこちらに攻撃を仕掛けることなく距離を置いてアネットの狙撃を警戒し続けている個体がいる。

 赤黒い毛並みの群れのリーダー、アルファだ。

 番犬型魔獣たちは、アルファからつかず離れず、即座にフォローに入れる距離を保って行動している。こいつらを強制移動スキルで動かすと、まずアルファをカバーできる距離に移動してからこちらに対して戦闘態勢をとろうとする。『減速』状態での非効率な移動により、かなりの時間を稼ぐことができた。


「レイくん、伏せ!」


 既に『土下座』のジェスチャーで指示を受けている。

 やや釈然としないがそのまま従う。直後、レナが装備を『大鎌』に持ち替えて大きく振り回した。周囲を薙ぎ払う斬撃で駿馬型魔獣がたじろいだ隙に、俺は一気にその場から駆け出す。目指すのは後方で孤立しているアルファだ。

 もちろん、俺ひとりが突っ込んだところですぐにアルファを倒せたりはしない。

 だが、群れは基本的に最上位の個体を中心に物事を考える。

 魔獣たちの行動は二種類に分かれた。

 アルファを守るため俺を追う動きと、孤立したレナを攻撃する動き。

 そうなるように『減速』と『シールドバッシュ』で誘導したのだ。

 俺の背に高速の駿馬型魔獣が追い付こうとした瞬間、俺のスキルが発動。

 レナによるコマンドだ。

 救援要請に従って俺は『かばう』による護衛対象付近への高速移動を開始する。

 俺は背後から迫る駿馬型魔獣たちの間を『すり抜け』てレナの目の前に強引にスライド移動していた。馬鹿みたいに不自然な動きだが、このゲームの戦闘システムはアクション性よりも選択したコマンドが優位に置かれている。


「レイにいの動き、きも」


 おいアネット、小さい声で言ったの聞こえてるからな。後で覚えてろ。

 鈍足ゆえに俺に追い付けず、レナに仕掛けるしかなかった番犬型魔獣の攻撃を盾で受け止め、そのまま『シールドバッシュ』を実行。押し出した先には俺を見失って背後を晒した駿馬型魔獣がおり、二体の魔獣が背中合わせの状態で追突する。


「ここ!」

 

 装備した槍にネクロマンサーの『腐敗の刃』、盗賊の『毒の刃』を乗せて、こちらを向いている番犬型ではなくその奥にいる駿馬型に狙いを定めた。

 槍カテゴリの武器が持つ強みは、近接武器としては最大の有効射程にある。

 狙うはピッチフォークによる魔獣二枚抜き。

 縦に並んだ二体をまとめて攻撃、かつ攻撃対象を『背中を向けている方の魔獣』にすることで『背後致命《バックスタブ》』を発動させる。盗賊の『背中から刺すと火力が上がる』というこの手のゲームでは定番のスキルだった。

 そしてこの『バクスタ判定』、槍で二体まとめて攻撃した場合、片方が条件を満たしていればもう片方の状態は問わないという寛容《ガバガバ》さを持つ。

 通称『槍バクスタ』の威力上昇効果と防御無視効果は二体目にも適用される。

 これだけで相当なダメージを与えているが、更にとどめの一押し。

 アネットの『標的』と『減速』に加えて俺の攻撃で『腐敗』と『弱毒』を付与された番犬型魔獣に、息を合わせた矢の一撃が突き刺さる。

 状態異常四枚重ねが生み出す『追い打ち』の40パーセント火力上昇効果。

 複数の条件を組み合わせることで、遂に一体目の魔獣を撃破するに至る。

 勢いに乗って、俺が背後致命を喰らわせた駿馬型魔獣にレナが猛然と追撃。血飛沫を上げて絶命した瞬間、レナが無駄に『雄叫び』のジェスチャーを連打。

 うるせえ。『叱責』を連打しつつレナのスキル一覧を確認。

 成功した。俺が指示するまでもなく、レナがネクロマンサーのスキルを発動。


「これで雑魚はぜんぶ任せられるね。一気にアルファを仕留めちゃおう!」

 

 レナが得意げに胸を張った。

 その背後、家の中に放置していた大量の棺から這い出すように白骨死体が現れ、かたかたと音を鳴らしながら青白い光を纏っていく。

 冷気を纏った燐光は簡素な鎧となり、盾となり、剣となる。

 骸骨兵士《スケルトン》たちは決して力強くはないし、動きも機敏とは言えないが、レナの命令に忠実に従う頼れる軍勢だ。その数は雑魚魔獣たちと同じ十体。

 形勢は一気に逆転した。

 自由に動けるようになった俺たちはアネットの支援を受けつつアルファを追い詰めていく。他の魔獣より強力ではあったが、完璧に連携できる俺たちの敵ではない。

 やがて、レナの刃が遂にアルファに致命傷を負わせる。

 勝利を確信した俺は、敵のリーダーを少し甘く見ていたかもしれない。

 最後の力を振り絞って、魔獣の長は高らかに咆哮したのだ。

 仲間を呼ばれた。残り八体まで減った魔獣に加えて、更に十体。

 おそらくこれ以上の増援はないだろうが、中々厳しい状況だ。

 

「あっ」


 短い、己の浅慮を悔やむ声。

 アネットが勝利を確信したためだろうか、屋内から出て射線の通りやすい位置から残った魔獣の掃討に参加しようとしていたのだ。

 タイミングと場所が悪かった。

 なにもない所から出現した増援が、アネットの目の前に現れる。

 最悪なことにギリギリで『かばう』の射程外だ。

 間に合わない。無意味にアネットの名を呼ぼうとした瞬間。

 骸骨兵士の一体が、その身を盾にして少女の命を救っていた。

 青白い燐光、霊気と呼ばれるオーラに包まれた不死の怪物を見つめるアネットは、何かに気付いたように呟く。


「おとう、さん」


 アネットは霊気に痕跡として残る生前のビジョンを見ていた。

 かすかな面影。あるいは、感傷が見せた幻かもしれない。

 それでも、物言わぬ死体はアネットを守っていた。

 少女は、恐ろしいはずの死者を見ながらそっと呟く。

 

「そっか。死霊術って、ただ邪悪なだけの力じゃないんだ。いなくなった人たちの想いを、今に繋いで守るための。なら、きっとレナおじょうさまだって」


 俺たちの間には大きな断絶がある。

 それでも、苦難を前にして共に戦い、異質な心を認めることはできるはずだ。

 この光景を、俺は希望だと信じたい。

 俺たちの心は、まだ通じ合えるのだと。


「レイくん下がって、DD撃つから」


 しれっと言い放ったレナの言葉に総毛立つ。

 全力疾走でアネットに追い付き、小さな手を引っ張ってその場から逃げ出した。


「やばいっ、アネットこっちだっ」


「え? え?」


 俺たちが離れたのを見計らって、レナは平坦な口調でスキル名を宣言。

 きっとそれはレナにとって退屈な片付けに等しかったのだろう。


「『死体爆破《Detonate dead》』」


 ネクロマンサーが序盤から使用できる広範囲殲滅死霊術が発動。

 青白い爆炎が弾け、続けて赤い爆炎が夜の世界を太陽のように照らす。

 術者の魔力依存ダメージと死体のHP依存ダメージの分割ヒット攻撃により、爆発は二段階に分かれて発生する。レナの魔力による爆発ダメージと、死体が炸裂四散することによる爆発ダメージと。圧倒的火力により魔獣は増援含めて全滅。

 当然、アネットの父の遺骨もお亡くなりになったと思われる。

 合掌。


「おとうさーん!!」


 静かな夜に花火が打ち上がり、少女の嘆きが木霊する。

 俺は戦いの中で結んだ絆と通じ合った心について思いを巡らせた。

 やっぱそんなんフィクションの中にしかねーわ。

 終わり終わり。仲良しこよしの未来はおしまいです。


「あおーん! わんわん! がうー!」


「にゃあにゃあ、うにゃぁん。みあ~お♪」


 なんか動物が喧嘩してる気配がするなあ。

 夜ってそういう音が聞こえたりするよね!

 気にせず寝ろ! 俺は寝る!




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