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第21話 新しい目標

冬休みが終わり、三学期が始まりました。


ひよりは律と、学年末テストに向けて新しい目標を決めます。

 冬休みが終わり、三学期が始まった。


 始業式を終えて教室へ戻ると、ひよりは自分の席に座った。


「休み終わるの早かったなあ」


「小日向」


「何?」


「次の学年末、80位以内目指すぞ」


「80位?」


「前が161位だったんだから、今度は80位以内まで上げる」


「結構上げるね」


「今は前より勉強する時間も取れてるだろ」


「まあね」


 律は少し考えてから言った。


「じゃあ今回も賭けるか」


「また?」


「80位以内に入ったら、俺がお前の言うことを一つ聞く。80位より下だったら、前回みたいにお前が俺の言うことを聞く。それでいいか?」


「分かった」


 前回は目標にあと一つ届かず、161位。


 ひよりが負けて、律のお願いで晩御飯を作ることになった。


「前回は私が負けて律の言うこと聞いたから、今回は絶対80位以内に入る。今度は私の言うこと、律に聞いてもらうからね」


「いいよ」


 律は今回の賭けを少し楽しみにしていた。


 ひよりがどこまで順位を上げてくるのか。


 80位以内に入ったら、自分に何を頼んでくるのか。


 もし届かなかったら、今度はもっと勉強させてやろう。


 どちらに転んでも悪くない。


 一方、ひよりもすでにお願いを考え始めていた。


 ――80位以内に入ったら、「私のことにあんまり干渉しないで」って言おうかな。


 今度こそ勝って、律に自分の言うことを聞いてもらう。


 ひよりはそう決めた。



 放課後。


 ひよりは駅ビルのファーストフード店へ向かった。


 新年最初のアルバイトだった。


 仕事が落ち着き、休憩室へ入ると、相沢晴真が先に座っていた。


「相沢さん、実家から帰ってきたんですね」


「ああ。正月は実家でゆっくり過ごして、予定通り高校の同級生とカラオケだったよ」


「楽しかったですか?」


「久しぶりに会うやつもいたし、楽しかったよ。そっちはどうだった?」


「私もいろいろあって……。実は、今月いっぱいでアルバイト辞めることになって」


「えー、辞めちゃうの?」


「はい」


「寂しくなるな。急にどうして?」


「2月から篠宮君の家に引っ越すことになったんです。私のお母さんと篠宮君のお父さんが一緒になるので、6人で住むことになって」


「そうなんだ」


「それで、私も家計のことをそこまで心配しなくてよくなったので、アルバイトを辞めて勉強に集中することになりました」


「そっか」


 晴真は少し考えてから、ひよりを見る。


「じゃあ、辞めたら休憩時間や仕事終わりに話すことはなくなるけど、またドライブ行ったりしようよ」


「いいんですか?」


「もちろん。勉強ばっかりだと息が詰まるし、気分転換も必要でしょ」


「そうですね」


「それに、勉強なら教えられるよ。家庭教師のアルバイトもしてるから」


「相沢さん、家庭教師もしてるんですか?」


「うん」


「知らなかったです」


「分からないところがあったら教えるよ。ひよりちゃんからはお金取らないから」


「それは悪いですよ」


「気にしなくていいって」


 晴真は笑った。


「バイト辞めても、また会おうよ」


「はい」


 アルバイトを辞めれば、晴真と会う機会もなくなると思っていた。


 けれど、そうではないらしい。



 その日の仕事が終わった。


 従業員出入口を出ると、晴真も少し遅れて出てきた。


「ひよりちゃん、今日も送るよ」


「ありがとうございます」


 二人は駐車場へ向かった。


 車に乗り込み、しばらく走ったところで晴真が言った。


「少しだけ寄り道してく?」


「また綺麗なところですか?」


「うん。前とは全然違うところ」


「行きたいです」


 晴真はそのまま家とは違う方向へ車を走らせた。


 しばらくして着いたのは、港の近くにある夜景スポットだった。


 海の向こうには大きな工場が並び、無数の照明に照らされた配管や煙突が夜の中に浮かび上がっている。


「すごい……。こういう夜景、初めて見ました」


「綺麗でしょ?」


「はい。前に見た夜景と全然違う」


 ひよりは工場の明かりを眺めた。


「最近忙しいんでしょ?」


「はい。引っ越しの準備もあるし、学年末の勉強もしないといけないし」


「そっか」


「でも、今日もこういう景色見たら元気になりました」


 ひよりはもう一度、海の向こうに広がる光を見る。


「頑張れそうです」


「じゃあ、連れてきてよかった」


「ありがとうございます」


 しばらく工場夜景を楽しんだあと、晴真はひよりを家まで送った。


 車を降りたところで、少し先から歩いてくる人影が見えた。


「あ、お母さん」


 仕事帰りの美咲だった。


「あ、ひより。送ってもらってたのね」


「うん」


 美咲は車の方を一度見たものの、それ以上は何も聞かなかった。


「お母さん、今日ちょっと疲れたから先に入るね」


「うん」


 美咲は仕事と引っ越しの準備で疲れている様子で、そのまま家へ入っていった。


 いつものお母さんなら、もっといろいろ聞いてきそうなのに。


 今日、お母さん疲れてるな……。


 ひよりは晴真の車を見送ってから、家の中へ入った。

お読みいただきありがとうございます。

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