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最弱勇者と万能メイド  作者: 浮遊する生物KURAGE
第3章 虹の竜と激動の戦乱
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02話 陰謀

「今から私はベルガー連邦の最高指導者、ライディアさんと会談しに行くの。とは言っても、昔から連邦とエルグランド王国(ウチ)は仲が良くなかったみたいだし、子供の私から腹を探ろうとしてるだけだろうけどね」


そう自慢げに語るピアナだが、それって大丈夫なのだろうか……?


「あ、でも安心して。ちょっとやそっとじゃ何にも言うつもりはないからね」


「まあ、そうだね。ピアナはしっかりしてるし、大丈夫だと思うよ」


「ですがピアナ様。……呉々も油断はなさらず」


「分かってるって。どうやらベルガー連邦(あっち)は最近武器の配備とか進めてるらしいし、むしろこっちが腹を探ってやるんだから!」


「そりゃ頼もしいや」


「本当だねっ!」


そう言いながら俺とクルルは笑った。もうピアナもすっかり女王様だな。


「ところで、ルルナ達は何でこんなところに……ってか、うわっ!?この子誰!?」


気付くの遅っ……。まあ良いけど。


「あぁ、実は……」


俺はこれまでの経緯(いきさつ)をピアナに話した。


「えっ嘘、そんな事があったの?私も1週間滞在したらすぐに帰るから、何か分かったら教えてね」


「もちろん」


「うんっ!それにしても……ソラちゃんが可愛い過ぎる!」


そう言ってピアナはソラをぎゅっと抱き締める。


「ん?ぴあなちゃん、どうしたの?」


「うぅーっ!ほっぺたもぷにぷにだし、髪の毛もツヤツヤのサラサラだし!最早ルルナに匹敵するレベルだよね!」


「にゃ……ちょっとはげしすぎる……?」


最早ソラの言葉すら聞こえてないみたいだ。


「勇者様、何だか……微笑ましいですね」


「ん……いや、ちょっと待てよ。ルルナに匹敵するって事は……」


「……?如何なさいましたか?」


「ルルナも、こんな風にされてたのかなって……ガフッ!」


「わたくしの事はどうぞお気になさらず。……別に気にしている訳では御座いませんが」


痛い!というか言葉と動作が一致してない!


「あぁ、(わたくし)には一度もその様な事なさらなかったのに……理不尽ですわ!」


……何か嘆いている奴がいる。

俺の微妙な目線に気が付いたのか、ミエラは、


「女王陛下、そろそろ御車へお戻り下さい。でなければ明日の日没までに着くことが出来なくなりますわ」


「あっ、そうだよね……。じゃあ、みんな、また今度ね」


ピアナが俺とルルナとクルル、そして特にソラに名残惜しそうな目を向け、そう言った。


「うん、バイバイ」


「頑張って下さいませ」


「「まったねぇー」」


こうして俺達はピアナと別れたのであった。


〜★〜★〜★〜


俺達がピアナと別れてから凡そ3時間後。


「こちらがドラゴナ国立資料館となります」


ルルナの言葉に、俺は窓から外を見る。すると……。


「うわぁ、大っきいなぁ〜」


見えた建物は何処かギリシャの神殿を想起させる様な、美しい白の建物だった。もっとも、その大きさはリディアレア城をも遥かに凌ぐほどであったが。


「ここに沢山の本があるんだね」


「仰る通りでございます。本だけではなく、未だ解析が済んでいない古代の魔法陣が描かれた壁画等も残っているそうです」


「そんな事は良いけど、早く行こーよぉ!」


「はいはい」


早速大きな入り口から入ってみる。

すると俺の目の前に広がっていたのは、想像を絶する光景だった。


「何だ、これ……?」


入ってすぐに目に入るのは、数え切ることすら不可能だと思わせる程の、本棚。

5メートルは悠にあろうかという天井まで届く棚の全てにはぎっしりと本が詰まっていて、俺の世界にある全種類の本を合わせても埋め尽くさないのではないかとすら思われる。

決して人口も多くないであろうこの世界には、それだけの歴史があり、技術があり、伝統があるのだ。


「勇者様、驚かれるのは未だお早いかと。この建物にはあと地下部分が11階もあるそうです」


「11階!?」


嘘だろ……。どうなってんだこの世界……。


「とは申し上げたものの、本が所蔵されているのはここと地下1階だけだそうですけれどね」


「それでも十分だよ……」


この中からお目当ての本を探せと?確かにあるだろうが、見つけるのは無理だろ……。


「確かに、自力で見つけるのは難しそうですね……」


「まあ、探すのは後として、取り敢えず別の本を読んでみても良いんじゃない?」


「はい、そう致しましょう」


ここは誰が管理しているんだろう?、という疑問はさておき、俺は1番近くの棚から適当に本を取り出す。

羊皮紙が使われているがあまり厚くなく、文字数は少なそうだ。題名は“ずっと昔の物語”。


「これなんかどうだろう?」


「?……神話のようですね」


内容は、このようになっていた。


“昔々、遍く人間の祖先である2人の方がいらっしゃいました。その内、少年の名前をラゼア、少女の名前をセルアと言いました”


“彼等は陽の光を糧とし、動物や森の木々、草花と会話しながら静かに暮らしていました”


“しかしある日、陽は突然小さくなり、発する光さえも弱くなった挙句、地上へ落ちてきてしまいました。さらには、陽のおかげで光を出すことが出来ていた月までも、一緒に落ちてきてしまいました”


“ラゼアとセルアは陽と月を空へと戻す為に力を貸しましたが、あと一歩のところで、遂に戻す事が出来ませんでした”


“ラゼアとセルア、そして陽と月は空が暗い中、文化を発展させ、やがて空に陽と月の力を送り出す祭壇を作り、世界は再び昼は陽の光に、夜は月明かりに包まれるようになりました”


“全ての力を送り届けた陽と月は力尽き消え、それを見届けたラゼアとセルアも寄り添うようにして天界へと召されました。そして、空に新しく生まれた陽と月の光に見守られながら、ラゼアとセルアの子供達が、世界を発達させていきましたとさ。おしまい”


昔話というにはあまりにもお粗末である点を見ると、やはりルルナの言う通り神話なのだろう。

この世界には太陽と月を崇める宗教でもあるのだろうか?


「なんか変なお話だったねぇ」


「……すやぁ」


ソラなんかいつの間にか寝てしまっている。


「ワイディア教の神話ですね。とても有名ですよ」


「ふぅん。何だかよく要領が掴めなかったけれど、まあそういうものなんだろうな」


古事記とか、十八史略もそんなものか。

……何というか、娯楽系の本はないものだろうか。

そんな事を考えながら、俺は“ずっと昔の物語”を本棚へと戻す。


「じゃあ、こっちはどうだろう?」


言いながら、俺は本棚から別の本を取り出す。

これまた羊皮紙製の薄い本で、題名は“神山ダルアスと白の竜”だ。……これも神話っぽいが、一応読んでみる。


“昔々、大陸がまだ戦乱に包まれていた頃の事です。その時東西に分かれて戦っていた勢力の内、東側に属する少年が、神竜住まう山ダルアスへと、神竜ヴァイスの力を借りようと赴きました”


“少年は数多(あまた)の試練を超え、遂にヴァイスの元へと辿り着きました。ヴァイスは少年に、何をしに来たのか、と問いました。少年は、戦を終わらせる為に貴方の力を借りに来た、と答えました”


“するとヴァイスは、人間の戦に力を貸す必要など無いから帰れ、と言い、少年を威圧しましたが、少年は臆する事を知らず、(こうべ)を地に着けて、家族が苦しんでいる、この身にあるものを全て差し上げますからどうか遠吠えの一度だけでも頼む、と言いました”


“ヴァイスは感動し、少年の魂を自分の魂の元へやり、くすんだ鱗を隅々まで浄化し、その2つの立派な翼をはためかせ戦場へと赴くと、力の限りの遠吠えを轟かせました”


“戦士達は1人残らずその雄々しい姿を見上げ、見惚れました。やがて遠吠えの反響が完全に消えた時、ヴァイスと少年は、少年の故郷たる東国へと翼をはためかせ、やがてその地で眠りにつきました”


“これを見た誰しもが戦おういう意思を失い、世界は平和を取り戻しましたとさ”


これも何かの宗教のお話かな?現実果たしてそんな上手くいくだろうか……。


「すぴぃ〜」


「あ、クルルまで寝ちゃった」


俺がそういうと、ルルナは無表情から仄かな笑みを(たた)えた可愛らしい表情となって、


「何だか微笑ましいですね」


と言った。

最初との差を考えると、ルルナを見ていても十分に微笑ましいのだが……まあ、それは良いや。

そんな風にして暫く2人の可愛らしい寝顔を眺めていると、不意に背後から声が掛かった。


「すみません、あなた達は勇者様御一行……で間違いない……です、よね?」


『す』の声が聞こえた瞬間、氷より尚冷たい無表情を湛えたルルナが、視認する事すら不可能な速度でナイフを抜き取り、背後の何者かの首筋にあてがった。


「何者ですか?返事によっては命を落とす可能性もある事、重々留意の上お答え下さい」


そう言って彼、否、彼等の方を振り向いたルルナは、僅かばかり目を見開いた。

無理もない。ナイフをあの速度で抜き出したのにも関わらず、少年の隣に立つ全身鎧の騎士は、既に剣を抜き、構えていたのだから。

……流石にルルナのナイフを止めるには至らなかったようだが。


「これはこれは、私共には余りある賑やかなご歓迎に与り、誠に光栄に思います。どうやら人違いだったようですので、私共は帰らせて頂きます」


落ち着いた声色で、そんな嫌味を騎士が言うと、隣の可愛げのある12歳くらいの少年は、


「ちょっとバゼシス、幾ら何でもその言い方はないでしょ?というか、この人達の見た目も、噂に聞く勇者様にそっくりだし」


「ですがデティア様、事実この者はあなた様の首筋にナイフを当てているではありませんか。ただのそっくりさんである可能性が極めて高いかと」


「バゼシスならこのお姉さんがめちゃ強い事くらい分かるでしょ……」


デティアというらしい少年は呆れたようにそう言う。


「……確かにこちらのお方は勇者様に間違いありません。ですが、如何様なる理由で貴方様方がそれをご存知だったのか、又如何様なるご用なのか伺わせて頂きます」


ルルナがそう言うと、デティアは真面目な顔になり、こう述べた。


「ここにいたのが分かった理由は後で説明します。一刻を争う事態です」


「一刻を争う……?何かあったの?」


「はい。……エルグランド王国の女王、ピアナ=クイーナ・エルグランドさんが、連邦の陰謀に巻き込まれようとしています」


「い、陰謀!?」


「へっ?い、一体、どのような……」


デティアの話によると、こうだ。

ベルガー連邦は昔から隙あらば小国を吸収しようとしてきた、まあぶっちゃけ利益の為ならどんな事でもするような国で、数年前からドラゴナ国とその南の国、ドラセナ国を侵略しようと目論んでいたらしい。

1年前にドラゴナとドラセナが共同管轄としていたダルアス山を、両国を武力で抑えつけながら自国領とし、本格的にドラゴナ・ドラセナvsベルガーの抗争が始まったらしい。

というのも、デュアエラス教という宗教において、ダルアスは先程の神話の通り神竜住まう山とされており、又ドラゴナとドラセナの国民はその大部分がデュアエラス教を信じていた為、ダルアスを取り戻そうと国民が奮起しているらしいのだ。

宗教の流派の違いで2国に分かれたドラゴナとドラセナだそうだが、ダルアスを取られてからすぐに同盟を結び、全力で連邦と戦おうとしているらしい。

それだけではなく、敵対した立場にある王国からも武力制裁を加えるだろうと思った連邦は、王国が何も出来ないようにすれば良いと考えた。

そこで、ピアナを人質に取ろうという発想に至った訳だ。


「奴等は3日後の正式会談に時にピアナさんを眠らせて、捕まえるつもりだと思います」


「3日後、か。その時間があるだけまだマシだ。急いで対策を練らないと!」


「少々お待ちください。まさか信用なさるおつもりなのですか?貴方様方は一体何者なのですか?」


「それは……」


それは……?


「ドラゴナ国の王子です」


「「…………ええっ!?」」


……異世界生活68日目、未だ終わらず。

最後通常の文が多くなり過ぎてしまい、大変申し訳ありません!

取り敢えずプロローグ編はここでおしまいです!

次回以降アクティブになります(あれ今までも割とアクティブ?)。どうぞお楽しみに!

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