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最弱勇者と万能メイド  作者: 浮遊する生物KURAGE
第3章 虹の竜と激動の戦乱
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03話 協力関係

「改めまして、僕の名前はデティア・ドラゴニック、ドラゴナを束ねるフェルディナンド・ドラゴニックの息子です」


そのしっかりとした物言いに納得いったかのように、少年の首筋からナイフを離すルルナ。


「私はバゼシス・ハザール。デティア様に仕える執事にして専属護衛騎士で御座います。足を引っ張らない程度に宜しくお願い致します」


「こら。あ、バゼシスの言ってる事は気にしなくて良いですよ。嫌味な事ばっかり言いますけど、名は良い人ですから」


朱色の髪の少年と恐らく20代後半であろう騎士の会話は、何だか出会った頃のルルナとピアナの会話を彷彿とさせる。

……確かにルルナとバゼシスさんって、どことなく似てるような……。

そんな事を考えると隣から氷の視線が俺を突き刺したので慌ててそっぽを向く。


「と、ところでだけど!ピアナ……王国の女王様を救うには、どうしたら良いだろう?」


「先ずはそれを考えねばいけませんね。状況を整理しましょう」


「はい。ピアナ様は明日の夕刻に連邦の人間と落ち合うおつもりだそうです。国賓を迎え入れる時は大抵入国の時から様々な催しで歓迎するそうですから、それまでに連邦に入国すれば宜しいのではないでしょうか?」


「分かりました」


「少々お待ちを。その情報は確かな筋から得たものなのですか?我々としても国の存亡が掛かっております故、適当に決める事は出来かねるのですが」


なっ……!俺は少し頭にきてしまった。確かに筋は通っているが、今から協力してピアナを助け出そうとしているのに、この男はいちいち疑ってかかるのだろうか?


「アンタなぁ……。これはピアナの直属メイド、ミエラが言ってた情報だ。それも、ピアナ本人の前でな。というか、俺達の事が信用出来ないんだったら他を当たってくれ。俺達としても一つ一つ情報ソースを説明するのは時間の無駄だ」


「へっ?ゆ、勇者様、落ち着いて下さいませっ」


「ですが勇者……」


「良いか?こうやって無駄な言い合いをしてる間に時間は刻一刻と過ぎていってるんだぞ?それとも、俺と一日中楽しい楽しい口喧嘩でもして、自分の国が滅びるのを酒でも飲みながらぼけーっと見てるのか?」


「……分かりました、良いでしょう。貴方達と正式に同盟を結ぶ事に致しましょう。デティア様、宜しいでしょうか?」


「勿論だよ。じゃあ勇者さんと……えと、お名前、教えてくれますか?」


「ルルナ=メルイ・アニングと申します。因みに、勇者様のお名前はヒロミ・ヤマモト様で御座います」


「ありがとうございます!ではヤマモトさん、アニングさん、一緒にピアナ女王を助け出しましょう!」


「うん!」

「承りました」


「ほら、バゼシスも」


「はぁ……。我等の未来に幸あらん事を。……短い関係である事を祈っております」


「はいはい。じゃあ改めて作戦会議といきましょうか」


〜★〜★〜★〜


「ここから一番近い連邦の入り口は、馬車で5時間程の所にある東の大砦ですね。ただ、大砦だけあって警備も厳しくて、朝8時から夕方5時までの間しか入らないみたいです」


「今はお昼の3時ですから、明日の未明に出発すれば宜しいですね」


「それに間違いはないけど、入国許可証を持ってない人は更に審査が必要みたいで、1人に30分くらい掛かる事もしばしばあるそうです。割と並ばされるみたいですし、早めに言った方が良いと思います」


「ちょっと待った。デティアは王子様なんだから、審査する人に顔が知れててもおかしくないだろう?それに、勇者が朝一番から連邦に入国するなんて、向こうに不審がられるかもしれないし」


「それに関しては大丈夫です。バゼシスは陰属性の魔法が得意だから、それで誤魔化せる筈です」


「そりゃあ良いや」


……その程度ならルルナでも出来そうだけどな。


「まあそんな感じに入国するとして、問題は入った後だな」


「ええ、そうでしょうね。無理矢理エルグランド王国女王に接触しようとすれば奴等に止められるし目も付けられる。どうしようもありませんね」


「アンタ、本当に国を守る気あるのか……?方法はある。ミエラ伝いに手紙でやり取りすれば大丈夫だ」


「えと、ミエラっていう人は、ピアナさんの専属メイド、でしたよね?」


「はい」


「ならば少しピアナさんから離れておくよう指示するメモを渡しておいた方が、その後疑問を持たれずに意思疎通が出来そうですね!」


おお……。王子だけあって頭が良いな。それに比べて、うん?精神年齢が1つしか違わない筈の何処かの妖精は今も呑気に寝ているけれど……?

まあそれは良いや。


「よし、じゃあそうしよう。それで連邦の陰謀について知らせれば、会談までの2日の間にどうにかして会談に忍び込めるかもしれないね」


「大雑把ではありますが、その方向性で宜しいのではないかと存じます。少々早いかもしれませんが、早速出発致しましょう」


「失礼。手紙に関してですが、通常の紙や羊皮紙を使うと連邦の中央機関に感知され内容が漏れる可能性があります。少々値が張りますが、魔力紙を使う事をお勧めします」


魔力紙……?そのまんま魔力の込められた紙って意味なのだろうか?

それにしても、普通の紙なら感知するって、一体どんだけ反逆を警戒してるのやら、というかどんな仕組みなんだよ……。

だがルルナ達には常識だったみたいで、ルルナは顔色一つ変えずに答えてみせた。


「そちらに関しては問題御座いません。探知妨害の魔法を掛けるだけの事です故」


「なるほど、納得致しました」


……なんだろう。普通にしてる筈なのに、ルルナとバゼシスが会話してるとなんか怖い……!

デティア少年もそう感じたみたいで、少々強張った声で、


「で、では、アニングさんの言う通り出発しましょう!」


と言った。


「そうだね」

「承りました」

「承知しました」


そんな訳で、俺達はベルガー連邦へと出発した。

俺に“持ち帰り”されて馬車の中で目を覚ましたクルルとソラは、呑気に『お腹空いたー』等と言っていたが。


〜★〜★〜★〜


1台の馬車が行く。それは白く美しい馬車だった。そしてそれを引く馬は更にに美しく、(あたか)も教会の彫像のようである。

だが、それを阻む陰があった。


「やいそこの馬車ァ!ちょっと止まれ」


蛮刀を片手にゲヒヒと下品な笑い声を上げながら、()()達はそう言った。


「……はぁ、またですか……」


あのルルナが、溜息を()いている。

そう、これが初めてではないのだ。というか、これでもう10回目の襲撃である。


「やっぱりおかしいよね?まだこんな時間なのに」


「僕もそう思います。いつもは盗賊なんて日が沈んでからしか出ないのに……」


時刻は午後5時。未だ陽は俺達を照らし続けているにも関わらず、盗賊達の襲撃は一向に止む気配がない。


「そんな日もあります」


「ソラもそー思う」


「ガンガン行こぉーよぉ!」


「はいはい」


そんな会話を繰り広げている内にどうやらルルナは盗賊達を縛り終えたようだ。「命だけは!」とか、最早聞き飽きた命乞いの台詞が聞こえてくる。


「助けても意味が御座いません故、さようなら……」


「ま、待ってくれ!俺達に出来る事なら何でもするから!」


「……はぁ、もう良いです。そこで転がっていて下さい」


そしてこれまた聞き慣れたルルナの台詞。

最初はルルナもどうしたものかと迷っていたのだが、バゼシスの『放置しておいたら宜しいのでは?』という言葉によってこのような状況となってしまった。


「時間、かかるね……」


「まだまだだよ……」


予定通りだとしてもあと3時間、ましてや盗賊が現れる度にルルナが馬車を降りて縛らなければならない為、その都度動きが止まるのだ。

……今思ったけど、盗賊縛るのってバゼシスでも良くない?


「ねえバゼシス」


「何ですか、勇者?」


「盗賊縛るの、アンタがやってくれない?」


「それが、人にモノを頼む時の態度ですか?」


ぐぬ!……何故かコイツに対してだけこういう態度を取っちゃうんだよな。

暫しの葛藤の後、俺は意を決してこう言った。


「……お願いします」


「頭を下げなさい」


ぐっ!コイツ……!ひたすらウザい……!

とはいえ仕方がないものは仕方がない。今度こそ意を決して俺は頭を下げた。

……なんで俺がこんな事しなきゃならないんだよ!


「……まあ、頭を下げたからといって、私がやるとは一言も言ってませんがね」


「コイツ……っ!」


「おやおや。軽い冗談ではないですか?まさか今の勇者様がこのような事で堪忍袋の尾を切らすような方であろうとは、私も存じませんでしたが」


ウゼぇコイツ……!馬車から落とそうかな?


「もう、バゼシス!そんな事言っても誰も得しないから、本当にやめてよね!」


「そうですっ。勇者様をそれ以上おちょくるのであれば、わたくしも容赦致しませんが」


「貴女のナイフと私の片手剣ではリーチの差があまりにも大き過ぎる。私とて緊張状態にあれば貴女のナイフにも……」


バゼシスのクソ野郎がそう言い切らないうちに、ルルナの()がバゼシスの首を捉えていた。

ルルナ、ナイス!……てか、今どこから剣なんて出したんだ?


「わたくしのナイフの名は“フォーリン・スノウ”、ミスリルと魔法金の合金製です。つまるところ、魔力を込めれば幾らでも刀身が伸びます」


フォーリン……この場合はfallingだろうか?

それにしても……刀身が伸びるとか、流石は異世界、凄いな……。


「ミスリルと魔法金……そのような高価な品物、幾ら勇者のーーーとはいえ……」


バゼシスが何かを言いかけた途端、ルルナから謎の冷気が発せられる。流石に恐ろしくなったのか、バゼシスは言いかけていたその言葉を飲み込んだ。

クルルとデティアなんか絶望的な表情をしているぞ?まあソラは普通そうにしていたが。


「と、兎に角、この状況をどうにかしないと!多分これからも盗賊は……」


「ゲヒヒ!そこの馬車、ちょっと止まれ」


「やっぱり……」


くっそ、どうしたら……。


「……全速力で行きます。ハク、行けますか?」


「ヒヒーン!」


「……では参ります。心のご準備を……っ!」


次の瞬間!俺の背中は何かに打ち付けられた。

そして俺を叩きつけるのは空気!ふと横を見ると、周りの景色が凄まじい速さで流れて行く!

不意に馬車が跳ねる!俺達(ルルナを除く)は揃いも揃って天井に頭をしたたか打ち、痛みに思わず頭を抱える。

何だこれ!吹き飛ばされそうだ!クルル達(ちびっこ勢)は吹き飛ばされてないかな!?というか気持ち悪い!!

そしてその地獄に耐え続ける事20分!!

ようやく馬車が速度を落とし始め、やがてその動きを止めた。


「到着……です。今夜はこの辺りの宿に泊まりましょう」


だが、そのルルナの言葉に答える者は誰もいなかった。


「ゔっ……おぇ゛っ……」


「げぷっ……」


「お゛ぇっ……」


「さ、流石にこれは……うぷっ!」


俺達は揃いも揃って今にも死にそうな顔をしていた……と、思う。というか、若干ルルナもキツそうだ。その証拠に、乱れた髪がそのままである。

唯一能天気なスライム(ソラ)だけが、「どうしたのー?」と言いながら、くりんと首を傾げていた。


〜★〜★〜★〜


地獄のような吐き気に耐えながらも夜が明けた。


「勇者様、みなさん、そろそろお出かけの時間で御座います」


空き部屋の数の加減で同室だったルルナが寝巻きのままそう声を掛けてくる。


「ふわぁあ。おはよう、ルルナ。昨晩は眠れた?」


「勇者様のお陰で、何とか……」


そう、俺の所持しているスキル、“洗浄”は、洋服や皿を綺麗にするのみならず、自分や仲間に掛かっている異常状態もマシに出来るみたいなのだ。

……俺の場合は元があまりにも酷すぎてあまり効果を実感出来なかったが。


「うぅ……ん。まだちょっと……むにゃむにゃ」


「すやぁ……」


クルルは二度寝、ソラに至っては起きる様子すら見受けられない。まあソラに関しては、いつも寝ている午前中フル稼働していたのだから仕方ないとも言えるが。

俺は右にソラを抱え、左にクルルを持って外に出た。いつものエプロンドレス姿となったルルナが、デティアとバゼシスのいる隣室をノックする。

するとすぐに扉が開き、あどけない少年が顔を見せた。


「あ、アニングさん、おはようございます。僕もそろそろ出ようとしていたところです。ただ、バゼシスが中々起きなくて……」


「バゼシスさんが?……どれ程警戒しておいでか、試してみましょう」


そう言うと、ルルナは彼等の部屋へと足を踏み入れ、バゼシスが寝ているベッドの前で立ち止まった。次いで俺も2人を持ったまま入室する。

……すごい寝相だ。後で弄ってやろ。

俺がそんな事を考えている内に、ルルナは瞬時に生成した氷を……バゼシスの首筋に当てた。


「冷だっ!……い、一体何ですか?」


「わあ、凄いや!まさかあのバゼシスがこんなにも簡単に起きるなんて!」


「マイナス273度ですから、当然で御座います」


絶対零度とか……鬼だか神だか分からんな。


「まあ良いけど、早く出発しよう!」


「「承りました」」

「はい!」


……異世界生活69日目、未だ始まったばかり。

"There is such a day” said by バゼシス.

……未だにバゼシスの名前を覚えられないKURAGEはどうすべきでしょうか?

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