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最弱勇者と万能メイド  作者: 浮遊する生物KURAGE
第3章 虹の竜と激動の戦乱
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01話 スライム、これすなわち幼女?

新章開幕です。物語が唐突なスタートとなっておりますが、何卒お気になさらず。

この世界に来てから凡そ2ヶ月の月日が流れた。

段々とこの厳しい生活リズムに慣れてきた俺は、そろそろルルナが起こしに来る時間だとふと思い、未だ少々思い瞼を持ち上げる。


「ふわぁあ……。……ん?何だ、これ……」


手に柔らかいものが当たる。……さてはソラだな。因みに、ソラはたまに俺の部屋に侵入してくる、神出鬼没の存在だ。


「何だ、またソラか。ダメじゃないか、ちゃんと寝てないと……」


そう言いながら俺は身体を起こし、布団の小さな膨らみを……って、えぇっ!?

その布団の膨らみは、小さな()()をしていた。あれ、こんな奴、いたっけ……って、あれ、じゃあさっきの柔らかいのは何……?

恐る恐る布団をめくる。すると、中から現れたのは……、


「うわぁっ!?」


慌てて再び布団を被せ、俺は思わず顔を背ける。

……何も見なかった事にしよう。


「……どうしたの?」


ふと間を置いて、そんなあどけない声が耳に届く。

()()は気温に反比例して少々薄手となった布団を持ち上げつつ上半身を起こし、俺と目を合わせた。


「う、うわぁっ!」


俺は再び目を背け、慌てて扉を開けて逃げ出そうとする。すると、ノックしようとしていたルルナに真正面からぶつかってしまった。


「ふにゃっ!?」


「痛たた……ご、ごめん。ルルナ、大丈夫?」


「お、お気遣い痛み入ります。……ですが勇者様、一体、どうしてそこまでお急ぎだったのですか?」


「さ、さあね。そ、それにしても、今日はいい天気だねぇ。今から朝の散歩にでも出掛けないかい?」


「今日は未だお日様出てないよ?」


ゲ!?ちょ、そこ口挟まないで、頼むから!


「……今、勇者様のお部屋から、何か声がしませんでしたでしょうか?」


「き、気の所為じゃない?そ、そんな事より散歩に……」


「失礼致します」


(ガチャリ)


ノォォォォォォオオオ!!!!!!

よし、冤罪を(こうむ)らない為に今のうちに逃げて……。

と考えたところで、パジャマの首襟をむんずと掴む華奢な右手1つ。


「……勇者様は……このようなご趣味だったのですね?」


「違うから!俺関係ないから!」


「では、この状況を如何様にしてご説明なさるおつもりですか?」


「いや、俺の方こそ聞きたいよ!」


「じゃあ教えてあげるね。何が知りたいの?」


「……どこのどいつですか?返答次第ではその首が飛ぶ可能性も御座いますが」


何かルルナが怖い!まあこの状況を見れば怒るのも……ってそれを差し引いても怖い!

だがそんなルルナのオーラに怖気付く事なく、()()は満面の笑みを浮かべて言う。


「ソラの名前はソラだよ?改めてよろしくね、ご主人さま、るるなちゃん!」


「「…………ええーーーっ!?」」


……どうやらソラは、人間の少女に変身出来るようになってしまったらしい。


〜★〜★〜★〜


「むぅ……。勇者様がそういったご趣味だと存じていたなら、わたくしも……」


「ん?ルルナ、何か言った?」


「な、何も……御座いません」


何か聞こえた気がしたが……まあ、それなら良いのだけれど。

ただそれにしても、それにしても!


「ソラが目の毒でしか無い……」


「一応バスタオルは掛けたのですが……」


目覚めたら何故か人間の姿になれるようになっていたらしいソラは、何度言い聞かせても言う事を聞かず女の子の姿を維持したままだ。

しかもその姿というのが、艶やかな水色の髪と淡い水色の瞳を併せ持った美少女ときたもんだ。

そんな状態でバスタオルを羽織っただけのまま部屋のあちこちを走り回るので、変態的な趣味を持たない俺にとっても目の毒なのだ。


「……ルルナ、せめて下着でも良いから、何か無いの?」


「ご、御座いません。わたくしはそれほど小さくありませんし、第一勇者様にわたくしの下着をお見せする事など出来る筈も御座いませんっ」


案の定というか、少々ご立腹のルルナ先生。

……何か別の意味で捉えられた気がするけど……まあ、気の所為だよね。


「あ、そういえば、この間買い物へ行った時に買った服のコピーを作ってありました。取りに行って参ります故、少々お待ち下さいませ」


ルルナが部屋から出て行ってしまうと、必然的に俺はソラと2人っきりになってしまった。

暫くの間、ソラは走り回り続けていたが、やがてルルナがいなくなった事に気が付くと、


「……やっ!」


等という叫び声と共に俺に飛び掛かってきた!


「うわぁっ!?」


間一髪で避けたものの、ソラによる空爆は連続して何度も俺に浴びせられる。


「やっ!えいっ!ほいっ!とりゃっ!」


「ちょ、ソラさんホントやめて下さい頼みますから!」


「やだぁ!鬼ごっこ楽しい!」


「鬼ごっこじゃないから!ってうわっ!?」


「捕まえたぁ」


遂にソラに捕まってしまった!うつ伏せになる俺に馬乗りするソラ。……って、これは色々とまずくないか!?


「ちょ、ソラどいて!」


「やだ!」


「……勇者様」


「は、はいっ!」


またこの展開かよ!何かデジャヴ!


「……はぁ、もう何でも構いません。残っていたワンピースのコピーを縮小したものです。ソラ、着て下さいませ」


お咎めはなかったが、何か呆れられたみたいだ。


「何これ?」


「服です」


「これをビリビリってすれば良いの?」


「いえ、早く着て下さいませ」


「着たらどうなるの?」


「着なかったら怒ります」


「えぇー。じゃあ着る」


……何か微妙に会話が噛み合ってない気が……細かい事を気にしたら負けだ。

バスタオルを床に落とそうとするソラを制止して、ルルナがこちらに「勇者様」と一言だけを発した。

それだけでルルナの意図を察した俺は、慌てて


「はい!」


と言い、後ろを向く。

そして数十秒の後……。


「こっち向いて良いよ?」


その声を聞いて、俺はソラの方を向く。すると……。


「……おお、中々似合ってるね」


「えへへ……」


ルルナが着た時も似合っていると思ったが、こっちもこっちで良い。ただ、胸元にちょっと残念な隙間が……。

どうやらルルナもそう思ったようで、少し思案する素振りを見せた後、ソラの首元辺りに手をかざして何かの魔法を掛けた。

すると、ソラのワンピースの胸元の生地が小さくなり、代わりに大きなリボンが出現した。


「あとはこの姿の時だけ服が出現するようにして……出来ました」


「……?なんか出来た」


「これはリボンです。ちょっとしたおしゃれです」


「りぼ……ん?ありがとう、るるなちゃん!」


「どういたしまして」


何だか微笑ましいなぁ。まあそれは良いとして、だな。


「どうしてこんな姿になれるようになったの?」


改めてソラの方を見る。

少し上に跳ねた、光を反射する水色の髪と、不思議そうなライトスカイブルーの瞳、真っ白な肌は、人間のような姿ではあるものの、ルルナと同じく人間ではあり得ない美貌は、少々散らかった部屋の背景と組み合わさると違和感を覚えてしまう。

宝石のような瞳を何度か(しばた)かせると、


「えっとー……わかんない!」


と、ソラはてへぺろ、的な感じの素振りを見せてきた。

そんな自信満々に言われても……ねぇ?


「勇者様、ドラゴナ国の国立資料館へ行かれては如何でしょうか?恐らく大陸の内で最も蔵書量が多いでしょうし、古い書物も沢山置いてあると伺いました。ソラについても、何か分かるかもしれません」


「そんなところがあるんだ。確かにここ2ヶ月の間本なんて読めてないし、行ってみても良いかもね」


「では、そう致しましょう」


資料館かぁ。本を借りられない図書館みたいな感じかな?

等と考えていると、ソラが不思議そうな顔をして、


「んー?どこか行くの?」


と聞いてくる。


「はい。本が沢山あるところです」


「ソラも行って良い?」


「勿論です」


珍しいなぁ。クルル相手なら凍結させるのに。

あ、そういえば。


「クルルはどうする?」


「長旅になりそうですし、付いて来て頂いた方が宜しいかと存じます」


「あ、うん」


これまた以外な。クルルと出会ってから2ヶ月、まさかこんな日が来ようとは……。


兎に角、そんな感じで俺達はドラゴナ国へと向かう事となった。

まさかそれがきっかけでとんでもない出来事に巻き込まれようとは、その時の俺達は予想だにしていなかった……。


〜★〜★〜★〜


「それにしても、まぁさかソラがそんな可愛い姿になっちゃうなんてねぇ……」


そう呟いたのは、妖精(ピクシー)のクルルだ。

彼女は今も人型をしているソラの頭上をぐるぐると旋回しながら続けて、


「まっ、ボクの方がプリティーだけどねっ!」


等と言う。

……確かにクルルも可愛らしい見た目をしているが、こんな事を言っている時点で純粋なソラとの差は歴然だろう。

まあそれは兎も角、だ。


「ルルナ、今どこら辺?」


俺がルルナに問い掛けると、従順なメイドは、


「そろそろアイド王国とドラゴナ国の国境であるかと存じます」


と、答えてくれた。目的地の資料館は国境近くらしいので、到着は目前といったところか。

昼は馬車を使って移動し、夜には宿に泊まり、時に野宿もしながら進む事1週間。車酔いにも段々と慣れて来たところで、旅は終わりを迎えそうだ。

だが不意に、ハクがたった1匹で(ルルナはハクにテレパシーを送れる為乗る必要がないらしい)操縦していた馬車が動きを止めた。

要するに、何らかの原因でハクが進めなくなったか、ルルナが止まるように指示したかのどちらかだ。

だが、窓からハクを覗き込む限り何かあったようには見えない。


「ルルナ、何かあったの?」


「……あれ」


「あれ?」


俺はルルナが窓から指差す方向……前方を見た。すると、そこにはリディアレア城に停めてあった豪華な馬車が、ゆっくりと走っていた。


「ピアナ様がいらっしゃいます。ピアナ様っ!」


ルルナが抑揚のない、彼女にしては大きめの声でそう呼び掛けると、向こう側も気が付いたのか、馬車から上半身を乗り出し、大きく手を振り、おおーい、と呼び掛けてくる。

金髪碧眼の少女は頭を引っ込めると、すぐさま馬車から飛び降り、小走りでこちらへと辿り着いた。

俺が馬車の扉を開け手を伸ばし、ピアナの手がそれを掴んだのを確認してから一気に引き上げる。

ピアナはこちらを見て満面の笑みを浮かべながら、


「ルルナ、ヒロミ君、久し振りっ!」


と、元気良く言い、ルルナを引きつけてから思いっきり抱きしめた。


「おお、ピアナじゃん。仕事ばっかせずに、ちゃんと休息もとってる?」


「お陰様で、ね!」


言う程久し振りでもない再開と、最早定番となっているこのやり取りには慣れてしまった為、ピアナに抱きしめられても俺は動揺しない。

……それはそれでまずいのかもしれないが。


「ピアナ様、10日振りですね。ところで、何故このようなところへおいでなのですか?」


「実はね……」


「女王陛下ーーー!!」


ピアナが説明しようとしたところを、何者かが遮る。


「女王陛下!(わたくし)を置いて行かれるとは一体どのようなご事情がおありなのですかっ!」


ちらりと視界の端に映る燃えるような赤髪とその喋り方を聞いて思い出した。この人はミエラだったか。


「全く、ミエラったら、そんなに慌てなくても良いでしょ?別に私が死んじゃう訳でもないんだし……」


「いえ、もしもここにいらっしゃる方々がとてつもない悪党だったら……」


「悪党だったら、どうなのでしょうか?」


「その声は、ルルナ……?ま、まさか、勇者様御一行ですか!?不躾な言動、誠に失礼致しました!」


「分かって頂けたら構いません」


「それにしても、陛下を手玉に取るかのようなその態度……陛下、今すぐにお離れ下さいませ!」


「そんな事ないってば!」


……案の定、ミエラの色々と面倒くさいところは変わっていないみたいだ。


……異世界生活68日目、未だ終わらず。

激動は次回辺りから始まる予定で御座います故、少々お待ち下さいませ〜(๑>◡<๑)。

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