第60話 古い海図と、海のダンジョンへの招待状(18)
その瞬間、海風が吹いた。
船の帆が揺れ、海面に光が踊る。
俺たちは、ゆっくりと港へ向かって船を進めた。
だが、帰り道……。
海底遺跡の入口が、もう一度だけ青白く光った。
そして、俺の視界に、見慣れない文字が浮かび上がる。
『――召喚士固有能力《《海魔釣召》》が反応しました』
『――古代守護者との共鳴を確認』
『――特殊クエストが発生しました』
《《深海の守護者を救え》》
『――達成条件:海底神殿の異常を調査し、守護者の暴走を鎮める』
『――報酬:未確認』
『――失敗条件:海洋魔力の暴走』
「……なんだ、これ?」
俺は目を疑った。
ただの調査依頼ではない。
俺の能力が、あの遺跡に反応している。
そして、特殊クエスト!
この世界には、冒険者ギルドの依頼とは別に、こんな仕組みまであるらしい。
「新作、どうしたのじゃ?」
「いや……どうやら、俺にしか見えない依頼が発生したみたいだ」
「ほう?」
キュモポレイアは、俺の顔を覗き込んだ。
「何と書いてある?」
「深海の守護者を救え、だってさ」
女神の顔から、再び笑みが消えた。
「……救え、か」
「ああ。倒せ、じゃなくてな」
俺は海を見つめた。
もしかすると、あの触手は敵ではないのかもしれない。
海底神殿を守りながら、誰かに助けを求めている。
だとしたら、俺の能力が反応した理由もわかる気がした。
俺は魔獣を釣り上げ、配下にする召喚士だ。
けれど、釣り上げることだけが、俺の能力のすべてではないのかもしれない。
相手を知る。
その生態を理解する。
そして、必要ならば、敵ではなく仲間として迎え入れる。




