第58話 古い海図と、海のダンジョンへの招待状(16)
「この遺跡の奥には、海の流れを管理する古代装置がある。そして、その装置を守る存在がいる」
「さっきの触手か?」
「おそらくな。だが、あれは単なる魔獣ではない。古代の守護者じゃ」
俺は眉をひそめた。
「じゃあ、どうして俺たちを遠ざけようとするんだ?」
「……装置が正常に動いていないからじゃ」
キュモポレイアは、静かに言った。
「古代装置が暴走すれば、この海域の潮流が乱れる。最悪の場合、周辺の港町を津波が襲うことになる」
俺は息をのんだ。
【津波】
その言葉が、胸の奥に重く響いた。
前世で、俺は津波に飲まれて死んだ。
海を愛し、釣りを楽しんでいたはずの俺が、海に命を奪われたのだ。
そして、異世界で再び海と向き合っている。
怖くないわけがない。
それでも。
「……止める方法はあるのか?」
俺は尋ねた。
キュモポレイアは、ゆっくりとうなずいた。
「ある。だが、装置を止めるには、遺跡の内部へ入らねばならぬ」
「つまり、海底ダンジョンを攻略する必要があるってことか」
「そうじゃ」
俺は海底遺跡を見つめた。
危険だ。
準備も足りない。
それでも、あの遺跡を放置すれば、港町が危険にさらされるかもしれない。
俺は、手の中の魔力リール竿を見つめた。
釣り竿一本で、どこまでできるのか。
まだ、わからない。




