第56話 古い海図と、海のダンジョンへの招待状(14)
「了解!」
レオンが船員たちとともに動き、エマは魔力計測器を操作する。
船尾の魔石が強く輝いた。
シーグラス号が、ゆっくりと渦から抜け出していく。
そして――。
海面の下から、巨大な影が現れた。
「……嘘だろ」
俺は息をのんだ。
海底から伸びてきたのは、岩のような巨大な腕だった。
いや、腕ではない。
海藻に覆われた、巨大な触手!
表面には古代文字のような紋様が刻まれ、先端には青白い光が灯っている。
触手は船のすぐ横を通り過ぎ、再び海底へと沈んでいった。
その直後──海面が大きく割れた。
水しぶきの向こうに、巨大な円形の構造物が姿を現す。
石造りの門……左右には、魚の頭を持つ古代の像……中央には、三叉の槍を模した紋章……。
そして、その奥には、暗い海底へと続く巨大な入口があった。
「……あれが、海底遺跡か」
俺は呟いた。
ガルドさんが、険しい表情でうなずいた。
「間違いない。古代の海洋迷宮だ」
エマは、震える手で計測器を見つめていた。
「こんな規模の遺跡が……本当に存在していたなんて」
レオンも、さすがに笑ってはいなかった。
「おいおい。こいつは、ただの調査じゃ済まねえぞ」
そのとき、キュモポレイアが小さく息をのんだ。
「……封印の門」
「キュモポレイア?」
俺は彼女を見た。
女神は、海底遺跡の入口を見つめたまま、動かなかった。
「この門は、開いてはならぬものじゃ」
「何が封印されているんだ?」
「…………」
返事はなかった。
ただ、彼女の手が震えている。
その姿を見て、俺は確信した。
この遺跡は、彼女にとっても特別な場所なのだ。
そして、その秘密は、昨夜の巨大な目ともつながっている。
◇◇◇




