5/192
第5話 プロローグ【悪戯波と、釣り人の最期】(5)
「お父さま!」
「事実であろう!」
「ううっ……」
キュモポレイアは唇を尖らせ、うつむいた。
ポセイドンさまは咳払いを一つした。
「娘は先ほど、海竜たちを驚かせようと、少々大きな波を起こしたのじゃ」
「少々?」
「……本人の感覚では、少々だったらしい」
「お父さま、言わないでくださいませ!」
「それが地上では、とんでもない津波になってしまってのう……」
俺はゆっくりと顔を上げた。
「つまり?」
「つまり……」
ポセイドンさまは、もう一度、深々と頭を下げた。
「そなたは、娘の悪戯によって命を落とした。誠に申し訳ない!」
「…………」
「わ、わらわも、悪かったと思っておるぞ!」
キュモポレイアが慌てて言った。
「ただ、あの海竜があまりにも生意気だったから、ちょっと驚かせてやろうと……」
「ちょっと?」
「……はい」
「俺、死んだんですけど」
「はい……」
「釣りしてただけなんですけど」
「……はい」
「…………」
俺は、ゆっくりと息を吸った。




