第47話 古い海図と、海のダンジョンへの招待状(5)
「それでは、調査隊の編成を説明する」
ガルドさんは別の書類を取り出した。
「まず、私が指揮を執る。前衛はBランク冒険者のレオン。魔法支援はCランクの魔術師、エマ。海中での偵察は、君の召喚魔獣に協力してもらう」
「了解しました」
俺はうなずいた。
そのとき、応接室の扉が開いた。
「おう、ギルドマスター。呼んだか?」
入ってきたのは、背の高い青年だった。
年齢は二十代半ばくらい。
日焼けした肌に、短い黒髪。
背中には幅広の剣を背負っている。
鎧は使い込まれているが、手入れは行き届いていた。
「レオン。こちらが藤原新作だ。今回の調査隊に加わる」
「へえ。こいつが噂の釣り冒険者か」
レオンは俺の顔を見て、にやりと笑った。
「釣り竿で魔獣を倒すって聞いたけど、本当なのか?」
「倒すというか、釣り上げるんです」
「同じようなもんだろ?」
「かなり違います」
「ははっ! 面白い奴だな!」
レオンは豪快に笑った。
嫌な感じはしない。
ただ、俺の能力を少し珍しがっているだけのようだ。
「俺はレオン。前衛担当だ。海の中じゃ剣は使いにくいが、船上なら任せておけ」
「藤原新作です。よろしくお願いします」
「おう。で、そっちの美人さんが……」
「キュモポレイアじゃ!」
「へえ、キュモさんか。よろしくな」
「キュモポレイアじゃ!」
「わかったわかった、キュモポレイアな」
女神の額に、ぴくりと青筋が浮かんだ。
俺は慌てて口を挟む。
「レオンさん、彼女は海王神の娘なので、できれば名前は正確に……」
「おっと、そりゃ失礼」
レオンは素直に頭を下げた。
「女神様、よろしくお願いします」
「……うむ。わかればよい」
キュモポレイアは、満足げにうなずいた。
扱い方が少しわかってきた気がする。
この女神、案外単純なのかもしれない。
続いて入室したのは、白いローブを着た女性だった。
淡い金髪を肩のあたりで切りそろえ、腰には小さな魔法具をいくつも下げている。
年齢は俺と同じくらいだろうか。
眼鏡の奥の瞳は、落ち着いた青色をしていた。
「失礼します。魔術師のエマです。今回、海底の魔力調査を担当します」
「藤原新作です。よろしくお願いします」
「こちらこそ。召喚魔獣を使役できると聞きました。ぜひ、詳しいお話を聞かせてください」
エマは、俺の腰にある魔力リール竿を興味深そうに見つめた。
「それは、魔道具ですか?」
「そうですね。俺の召喚能力と結びついているみたいです」
「興味深いですね……」
彼女の目が、きらりと光った。




