第43話 古い海図と、海のダンジョンへの招待状(1)
翌朝……。
俺、藤原新作は、冒険者ギルドの扉を開けるなり、受付カウンターへ向かっていた。
昨夜、港の鐘が鳴り響いたあと、町は大騒ぎになった。
漁師たちは船を確認し、港湾警備隊は海岸線を巡回……冒険者たちも緊急招集され、夜明けまで原因不明の魔力反応について調査が続けられたらしい。
もっとも、俺たちが泊まっていた宿は港から少し離れていたため、実際に何かが襲ってきたわけではない。
ただし、窓から見えた巨大な目! あれだけは、見間違いではないと思う。
「新作、そんなに急がずともよいではないか」
隣を歩くキュモポレイアが、のんびりとあくびをした。
青い髪に、海を思わせる瞳……。
そして、片手には焼き魚を包んだ紙袋……。
「……お前、朝飯を食べたばかりだろ」
「これは朝飯ではない。おやつじゃ」
「まだ朝の七時だぞ!」
「海の時間は、人間の時間とは違うのじゃ!」
「便利な言い訳だな、おい!」
この女神、昨日の騒ぎを本当に理解しているのだろうか。
いや、昨夜の表情を思い出せば、海底に何か危険な存在がいることは間違いない。
だからこそ、俺たちはギルドへ向かっているのだ。
情報を集める。
必要な準備をする。
それから海へ出る。
釣りでも冒険でも、基本は変わらない。
何が潜んでいるかわからない場所へ、準備もなしに飛び込むのは素人のすることだ。
「いいか、キュモポレイア。今日は勝手に海を動かしたりするなよ」
「わかっておる」
「津波も禁止」
「わかっておる!」
「嵐も禁止」
「わかっておると言っておるじゃろ!」
「船を空に飛ばすのも禁止」
「……それは、まだ考えておらぬ」
「考えてたのかよ!」
俺は額を押さえた。
本当に先が思いやられる。
◇◇◇




