第41話 初依頼は魔獣釣り!?(15)
俺は笑った。
この女神と一緒なら、退屈だけはしないだろう。
たとえ、これからどんな危険な海へ向かうことになったとしても。
◇◇◇
その夜……。俺たちが宿に戻った頃には、町は静かな闇に包まれていた。
窓の外では、港の灯りが水面に揺れている。
俺はベッドに腰掛け、今日の釣果を思い返していた。
蒼雷魚、ルルの感知能力、海底の魔力反応……。
そして、謎の沈没船……。
俺たちには情報は少ない。
だが、確実に何かが起きている。
「……明日は、ギルドの返事を待つか」
そう呟いたときだった。
肩の上で丸くなっていたルルが、突然、目を開いた。
「きゅうっ……!」
「どうした?」
ルルは窓の外を見つめている。
小さな角が、青白く光り始めた。
『――高濃度の魔力反応』
『――対象、接近中』
「……え?」
俺は窓を開けた!
夜の海! 静かな港!
そして、沖合の暗闇!
そこに、青い光が浮かんでいた。
一つ、二つ、三つ……。
まるで、星が海面に落ちたかのように。
だが、その光は、ゆっくりと港へ近づいてきていた。
「……まさか」
俺は息をのんだ。
昼間の入り江で見た光と、同じ色だった。
その瞬間──
遠くの海から、鐘の音が響いた。
《ゴォオオオン……》
昨日の沈没船から聞こえた、あの音……
俺は窓枠を握りしめた。
「キュモポレイア!」
隣の部屋から、女神が飛び込んできた。
「どうした、新作!」
「海を見ろ!」
彼女は窓の外を見て、表情を凍らせた。
「……そんな、まさか」
「知ってるのか?」
キュモポレイアは答えなかった。
ただ、青い光を見つめたまま、唇を震わせていた。
「……目覚めるには、早すぎる」
「何が目覚めるんだよ!?」
彼女は、ゆっくりと俺を振り返った。
その瞳には、今まで見たことのない恐怖が浮かんでいた。
「新作。明日の調査は中止じゃ」
「は?」
「何があっても、あの海には近づいてはならぬ!」
女神の声が、夜の部屋に響いた。




