第40話 初依頼は魔獣釣り!?(14)
夕暮れの海は、昼間とは違う色をしていた。
青から紫へ……。そして、水平線の向こう側は、ゆっくりと暗闇に沈んでいく。
「新作」
「ん?」
「もし、海のダンジョンに挑むつもりなら、覚悟しておくことじゃ」
「……何を?」
「海は、地上とは違う。逃げ場がない。足場もない。魔獣に囲まれれば、陸へ戻ることすら難しくなる」
キュモポレイアは、真剣な顔で言った。
「そして、深い海には、人間が知ってはならぬものも眠っておる」
俺は黙って彼女を見つめた。
いつもの尊大な女神とは、少し違う。
海の怖さを、本当に知っている者の顔だった。
「……それでも、行くのか?」
彼女が尋ねた。
俺は、窓の外の海を見た。
そこには、まだ俺の知らない世界が広がっている。
俺が釣り上げたことのない魔獣……。
俺が見たことのない魚……。
未知の海域……。
そして、沈没船の奥に眠る謎……。
俺も怖くないと言えば、嘘になる。
だが、「行くよ」と、俺は答えた。
「危険だからこそ、準備をする。準備をして、それでも無理なら引き返す。だけど、何も知らないまま諦めるのは嫌なんだ」
キュモポレイアは、じっと俺を見つめていた。
やがて、ふっと笑った。
「……そなたは、変わった人間じゃな」
「そうか?」
「うむ。わらわの知る人間は、力を求める者ばかりじゃった。だが、そなたは違う」
「俺は、釣りが好きなだけだよ」
「それが、そなたの強さなのかもしれぬな」
彼女は、少しだけ頬を赤くした。
「……まあ、わらわがついておるのじゃ。何も心配はいらぬ!」
「その言葉、昨日も聞いた気がするな」
「むっ! 信用しておらぬのか!」
「信用してるよ。ただし、津波は起こすな」
「……努力する」
「約束しただろ!」
食堂に、俺たちの声が響いた。




