第30話 初依頼は魔獣釣り!?(4)
東の入り江までは、町から歩いて三十分ほどだった。
街道を外れ、低い丘を越えると、木々の間から海が見えてくる。
波は穏やか……海面は透き通り、岩場の周囲には小魚の群れが泳いでいる。
日本の海にも似た風景だった。
ただし、空を飛ぶ魚がいたり、水面から小さな角が生えていたりする点を除けば、だが。
「……すげえな」
俺は足を止めた。
海の色が、場所によって微妙に違う。
浅瀬は明るいエメラルドグリーン……少し沖に出ると、深い青へと変わっていく。
岩の影には小魚が集まり、時折、水面を割って何かが跳ねた。
釣り場としては、かなり面白そうだ。
「新作、早く来るのじゃ!」
先を歩いていたキュモポレイアが振り返る。
「どうしたのじゃ? 海は逃げぬぞ?」
「わかってるよ。地形を見てたんだ」
「地形?」
「魚がどこに集まりそうか、考えてたんだよ」
俺は入り江を見渡した──岩場の際! 潮がぶつかる場所! 水深が急に変わる場所!
そう、魚が身を隠せそうな場所には、餌となる小魚も集まりやすい。
魔獣も同じかどうかはわからないが、まずは仮説を立てるしかない。
「まずは、この辺りから調べてみよう」
「ふむ。では、わらわが波を止めてやろう!」
「いや、止めなくていい!」
「なぜじゃ!?」
「自然な状態で調べたいんだよ!」
俺は慌てて駄女神さまを止めた。
この女神は、何かにつけて自分の力を使いたがる。
だが、今回の目的は魔獣の調査だ。
普段どおりの海で、魔獣がどんな行動をしているのかを確認したい。
海を操ってしまったら、意味がない。
「……わかった。では、わらわは見ておる」
キュモポレイアは少し不満そうだったが、素直に引き下がった。




