第29話 初依頼は魔獣釣り!?(3)
「海の中に何がおるかなど、わらわにはすべてお見通しじゃ!」
「……本当に?」
「もちろんじゃ!」
「じゃあ、昨日の沈没船についても、全部わかってるのか?」
「…………」
女神の笑顔が止まった。
「キュモポレイア?」
「……あれは、その……」
「わかってないんだな?」
「わ、わかっておる! ただ、少々事情が複雑なだけじゃ!」
「はいはい」
どうやら、万能というわけではないらしい。
いや、正確には、能力はあっても何でも知っているわけではないのだろう。
それはそれで助かる。
何でも女神に聞けば解決するのでは、俺が冒険する意味がなくなってしまうからだ。
「では、藤原様。依頼を受ける際は、こちらの注意事項もご確認ください」
受付嬢が書類を差し出した。
「調査対象の魔獣を見つけた場合、無理な戦闘は避けてください。特に群れで行動する魔獣は、初心者の方には危険です」
「わかりました」
「それと、海に入る場合は十分に注意してくださいね。東の入り江は岩場が多く、潮流も複雑ですから」
「はい。ありがとうございます」
俺は依頼書を受け取り、冒険者証をしまった。
よし! 異世界での初仕事だ!
まずは地道に稼いで、釣り具を充実させる。
それから船を手に入れて、いずれは海のダンジョンへと、目標は大きく、足元は堅実に、それが釣り人の生き方というものだ。
「新作!」
「今度は何だ?」
「帰りに魚料理を食べてよいか?」
「……依頼が終わってからな」
「約束じゃぞ!」
「はいはい」
俺は、元気よく歩き出す女神の背中を追いかけた。
◇◇◇




