↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
釣り竿一本で異世界海域を攻略する! 津波の女神が相棒になったけど、俺だけ冒険者ランクEなんですが!?  作者: かず斉入道


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/191

第2話 プロローグ【悪戯波と、釣り人の最期】(2)

「うそだろ……っ!」


 逃げなければ。


 俺は咄嗟に、そう思った。


 まあ、思ったのに、足が動かなかった。


 テトラポッドの隙間に、靴の先が引っかかっている。


 俺は体勢を崩し、膝をついた。


 慌てて足を引き抜く。


 その間にも、水の壁は近づいてくる。


 海面が見えない。


 空と海の境目が消えている。


 それでも俺の意識が遠ざかる。


 海の青が、暗闇に変わる。


 俺の脳裏に、最後に浮かんだのは、先ほどまで握っていた竿のことだった。


 あのミノー、まだ回収してなかったな。


 そんな、どうしようもなく間抜けな考えを最後に、俺の意識は途切れた。



 ◇◇◇


 これは駄目だ……。


 俺の本能が、そう告げていた。


 竿なんてどうでもいい。


 リールもルアーも、全部捨てていい。


 俺は生きなければ。


 俺は生きて帰らなければ。


「くそっ、動けよ!」


 ようやく俺の足が抜けた。


 俺は走った。


 濡れたテトラポッドを踏み、滑り、手をつきながら、少しでも高い場所へ向かう。


 しかし、間に合わない。


 背後から、轟音が迫ってきた。


 海が咆哮している。


 俺は振り返った瞬間──見てしまった。


 自分が一生かけても釣り上げられないような巨大な魚影が、水の壁の向こうを泳いでいた。


 ――いや、そんなものがいるはずがない。


 俺は考える暇もなかった。


 津波が、俺を飲み込んだ。


 衝撃! 浮遊感! 全身を叩く水の圧力! 


 自分の位置が! 上下も左右もわからなくなる……。


 俺は何かにつかまろうと手を伸ばしたが、指先をかすめるのは冷たい水ばかりだった。


 俺は息ができない。


 俺の肺が苦しい。


 俺は水を飲み込む。


 俺がもがけばもがくほど、身体は深い場所へ引きずり込まれていく。


 ――嫌だ……。まだ死にたくない……。


 せめて、最後にもう一匹くらい釣りたかった。


 こんな終わり方、あんまりだろ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。