第115話 出航前のトラブルは、お約束です(2)
……異世界に来ても、俺は女神の尻拭いをする運命らしい。
ようやくルアーを回収し、潜水艇へ戻る。
操縦席には、親方が用意してくれた魔導計器が並んでいた。
水深計、魔力残量計、船体耐圧計、方位計……。
異世界の最先端技術と、前世の俺の日本人としての知識が融合した結果だ。
操縦席の中央には、俺の竿を接続する端子がある。
ここへ竿を取り付ければ、俺の【潮流感知】が船の航行を補助する。
「さて……本当に動くのか?」
俺は魔力端子へ竿を接続した。
《カチッ》
リールが青く輝く!
船体の魔力珊瑚が反応し、推進機が低く唸り始めた。
《ゴウン……》
《ゴウン……》
「魔力供給、安定!」
親方の弟子が叫んだ。
「推進機、正常!」
「船体耐圧、問題なし!」
俺は息を吐いた。
「よし。出航するぞ!」
キュモポレイアが両手を上げた。
「出航じゃあああっ!」
「だから、まだ港の中だって!」
俺たちはゆっくりと船を動かした。
港の外へ出ると、キュモポレイアが船体の前方にある窓へ張りついた。
「おおおっ! 海が近いぞ!」
「潜水艇なんだからな!」
「新作、あそこに魚がおる!」
「はいはい、後でな」
「後ででは遅いのじゃ!」
まったく……。この女神、絶対に観光気分だ。
それでも、俺は笑っていた。
この先に何が待っているのかはわからない。
だが、少なくとも今は、頼もしい仲間と一緒に海へ出られる。
それだけで、十分に楽しかった。
◇◇◇




