第110話 深海から届いた、謎のメッセージ(2)
「(……鍵を持つ者よ)」
昨日の海竜と同じ声だ。
「(三つの海印を集めよ)」
俺は息をのんだ。
「(最初の海印は、沈没船の墓場に眠る)」
光の糸が、ゆっくりと揺れた。
「(だが、そこへ向かう者は、海賊王の亡霊に試されるだろう)」
「沈没船の墓場……?」
俺は、窓の外の海を見つめた。
【まだ知らない海域】
【まだ知らない魔獣】
そして、【まだ知らない仲間たち】
その先に、何が待っているのか……。
俺は、少しだけ笑った。
「……いいじゃないか」
魔力リール竿を肩に担ぐ!
「釣り人として、行かない理由はないな」
そのとき、背後から眠そうな声が聞こえた。
「……新作。何をぶつぶつ言っておるのじゃ?」
振り返ると、寝間着姿のキュモポレイアが立っていた。
青い髪は少し乱れ、目は半分閉じている。
「起きたのか?」
「そなたが竿を光らせるからじゃ……。何事かと思ったわ」
「悪い。どうやら、次の目的地がわかったみたいだ」
「次の目的地?」
「ああ。沈没船の墓場。そこに、最初の海印があるらしい」
キュモポレイアの眠気が、一瞬で消えた。
「……沈没船の墓場じゃと?」
「知ってるのか?」
女神は、ゆっくりとうなずいた。
「知っておる。あそこは、かつて多くの船が沈んだ海域じゃ。海賊王と呼ばれた男の船も、そこに眠っておるという」
「海賊王……」
「じゃが、気をつけるのじゃ。あの海域には、強力な魔獣だけでなく、亡霊のような存在も現れる」
「なるほど。最初から危険な場所ってわけか」
「うむ」
キュモポレイアは、俺の竿を見つめた。
「それでも、行くのじゃろう?」
「もちろん」
俺は笑った。
「だって、俺は釣り人だからな」
女神は俺の言葉を聞き、一瞬だけ驚いた顔をした。
そして、楽しそうに笑った。
「……ふふっ。そなたらしいのう」
窓の外では、月明かりが海面を照らしていた。
その先には、まだ見ぬ海域が広がっている。
潜水艇の完成まで、あと数日──。
その間に、俺たちは準備を整えなければならない。
そして、最初の海印を手に入れるため、沈没船の墓場へ向かうのだ。
俺は、魔力リール竿を強く握りしめた。
釣り竿一本から始まった異世界冒険………。
その舞台は、ついに深海へと広がり、俺たちを誘ってきたのだった。
◇◇◇
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