第109話 深海から届いた、謎のメッセージ(1)
その夜……宿屋の部屋で、俺は魔力リール竿の手入れをしていた。
竿の表面には、昨日の戦いで生じた細かな傷がある。
リールの魔石も、少しだけ輝きが弱くなっていた。
「……よく頑張ってくれたな」
俺は布で竿を拭きながら、苦笑した。
この竿がなければ、昨日の津波を止めることはできなかっただろう。
召喚釣士という能力は、魔獣を釣り上げるという、変わった力……。
最初は、戦闘向きではないと思っていた。
だが、今は違う。
【釣りだからこそ、見つけられるものがある】
【釣りだからこそ、繋がれる相手がいる】
そして、【釣り竿だからこそ、届く場所がある】
「……面白くなってきたな」
俺が呟いたときだった。
竿のリールが、突然、小さく回転した。
《カチッ!》
「……ん?」
俺は手を止めた。
リールの魔石が、青白く輝いている。
そして、竿先から細い光の糸が伸びた。
「何だ、これ……?」
光の糸は、窓の外へ向かって伸びている。
まるで、何かに引っ張られているかのようだった。
俺は慌てて窓を開けた。
【夜の港】
【静かな海】
【月明かりに照らされた水面】
そこから、かすかな魔力反応が伝わってくる。
『特殊技能《潮流感知》が発動しました』
『遠距離魔力反応を確認』
『発信源:深海』
『メッセージを受信しますか?』
「……メッセージ? ああ、オッケー……。おねがい」
俺は、竿を握りしめた。
俺の頭の中に、低い声が響く。




