七十九:原種の國からの帰還
午後になり、全力のセエレを筆頭に我々vs教え子達の総乱取りのような模擬戦場をこなし、前衛後衛守備回復と、何処に出しても引けを取らない、オールラウンドで割と強い者達へ進化したのを確認して、数日間の演習は完了した。
最後は、黒呼やクロムも混ざって乱舞してたので、思わず脇に避けて鑑賞してたぐらいカオスだったが。
そんな夕方を越え、戦士たちは今夜から城壁外の警護へと着くために、街の方へと向かって行った。
まあ、あのデカブツみたいなのが来なければ大丈夫だろう。
アタシ達はその姿を見送ったあと、全て報告するために王様に会いに行くのだった。
「「「本当に、ありがとうございました!!」」」
夕餉の席で舌鼓を打ちながら、慈善活動完了の旨伝えると、王様達や執事さんたちまで、皆一様にお礼を言ってきた。
アタシは、自分達が勝手にやりたいことをやっただけだから、と頭を上げさせる。
いや、つーか、ただの特殊生物に対して偉い人の頭を下げさせたくなかったって思いもある。外交問題になっちゃうからね。
それにこっちの事情でマキマキなスケジュールで仕上げたんだから、むしろ相手が被害者なのかも。
そんな事を考えていたら、あとはセエレとクロムが話を纏めてくれていたので、アタシはシメのデザートを食べる。
ん〜〜〜、爽やかな果物の味わい・・・何と言うか、アジアの南国のフルーツのような味わいで、甘く爽やかな味わいが、幸せになる〜〜〜。
残った種をこっそり回収し、帰ったら庭というか果物林に植えて貰おうと思い、腕輪に収納した。
そして、王様と王妃様に一つずつだけ、通信機能がついた、例の防犯ネックレスを渡しておいた。
緊急時にだけこちらのメンバーと、天空の王につながる機能を付けただけなんだけどね?
でも、また何かあったら、直ぐに報せてくれればいいかなって思ったのだ。
そしてその夜、きちんと機能する戦士たちを城の上階から眺めてから、アタシ達はやっと、深淵の館へと戻ってきたのだった。
『おかえりなさい!!』
「お〜、みんなただいま〜。いい子にしてたか〜?」
家に帰ったら帰ったで、食後だったり風呂上がりでマッタリとしていたみんなが、一斉に出迎えてくれた。
全員で我が子達と会話したり、自宅に戻る前のアウィンも含めて、数日間で色々買っていたお土産を渡したり、あとはアウィン、スフィレにも、大昔の原種の国や周辺諸国の事を思い出してもらったり情報交換して、ではまた明日、となった最後に。
アタシは全員が揃っている事を確認し、告げた。
「明日の晩から、アタシは少しの期間お休みタイムに入る。
それと同時に、メシア、セエレ、黒呼、クロムもね。
よっすぃ〜、月呼、新月の間、宜しく頼みます。」
真面目に告げて、二人に頭を下げたら。
「・・・・(コクリ)。」
「あい、解った。安心して任せるが良い。」
お察しいただけたみたいで、優しくも真面目な表情で、応じてくれた。
やっぱ、持つべきものは戦友だよねぇぇ〜!安心感たるや半端ないもん!!本当にありがたい!!
それに、その為にスケジュール巻いて終わらせてきたんだもん、本当に助かる〜!!
そんな感動で微笑みあっていたら。
月呼がアタシの並びを見て、ぎょっとした顔になった。
何だと思ってチラ見すれば。
めっっっっちゃ、デレデレした顔の嫁達が、そこにはいらっしゃいました・・・・
まあ、そんなこんなで、明日も仕事(報告とかスケジュール調整とかあるからね)で朝の早いクロムや黒呼、白呼くんの為に早々にお開きとなり、アタシは一人、自分の部屋ーーーもとい作業部屋に戻って、今一度術式の暗黒魔術関連の本を確認して行った。
正直、黒呼の呪い発祥の本人、つまりは精神体で永遠の地獄にいらっしゃるアイツから話を聞けば一発なんだが、正直怒りを抑える自信がないから、それは後廻しとする。
でもなぁ。
あの黒い心臓の中の少年の呪い、本当に似てるんだよねぇ。
あら方確認し終わって本を綺麗に戻し、ふと目を閉じ考えていると。
ーーーキィ、パタン
「姉さま、お隣、いいかしら?」
「うん、どうぞ。」
風呂上がりのメシアが、ソファに座るアタシの隣へとやってきて、そのまま抱きつく様にくっついてきた。
そのまま、しばらく優しい無音の時間を過ごす。
ああ、なんだか、懐かしいな。
昔。
本当に昔。
メシアが人間に殺される前は、夜にこうやって、ゆっくりと何も語らず、一緒にくっついてたっけ。
自分と同じ生態であり種族が、お互いに相手しかいないってわかっていたから、相手が隣にいる事を感じられるこの時間が、すごく幸せだったんだ。
昔は、それでも寂しいし、人間が羨ましくて、真似して子孫を残そうとがんばったけれど、メシアから卵は産まれなくて。
まあ、もしかしたら、メシアを愛する方向でメーター振り切った営みしてたから、だから子供が出来なかったのかも知れないけれど。
その時のメシアの切ない顔が、とてもアタシにも辛くて堪えた覚えがある。
アタシ達は、死ぬ寸前まで今の姿で、そして卵の姿へと還り、また記憶を持ったまま成長して数千年生きる。
そんな生態だからこそ、家族や子孫に興味があったんだろうなぁ。
しばらく、昔の事を思い出していたら、メシアから
「何か考え事?」
と聴かれたので正直に答えれば、メシアもおなじだったと言う。
「私、昔は子供が欲しくて仕方なかったの。姉さまと家庭を育んで、他の人間が姉さまとの間に入らないように、見える形で家族です!って見せつけなきゃって思ってたの。」
「え、それはまた、なんで?アタシの隣はメシアしかいないのに??」
「んと、実は、時々、人間から姉さまに、人柱って名目で若い女のコが贈られてきていたの。
でも正直、その子に姉さま取られたくないし、実はその子にも好きな人が他にいるって事も多々あったから、いつもお断りしてその村に送り届けていたのよ。」
申し訳なさそうなメシアの顔に、ああ!!と合点がいった。
「確かに、来られても寿命が違い過ぎるから、迷惑にしかならないなぁ。
断ってくれて、ありがとうね、メシア。
だから時々、村に行ってお話し聞いてきたのって、帰りが遅くなる事があったんだな?」
「ええ、そう、その時なのよ。」
それでその後、メシアから助言を受けて、まあ正確には村からの嘆願を聴いたメシアがアイデアを出して、それで色々感謝されるようになったんだっけ。
山の山頂を整備して結界と牧草地と森と柵を作り、当時の現世に何らかの要因で出現した魔獣とか回収して、三ツ首の大型犬を牧草犬として放ち、そこで飼育してたっけ。懐かしいなぁ。
そーいや、あの頃からアタシ達って、人間にとって会いに行ける伝説の生物、みたいな位置付けだったのかもなぁ。
現代日本とは違う世界列ーーー異なる世界線で、そんな平和な日々を過ごしてて。
それで、メシアが殺されて、多分、魂か何かに損傷があって、普通なら一緒に魂が消えるはずのアタシが消えそうにも無かったから、慌ててメシアの魂をかき集めて捕獲して。
そしてニンゲンタチヲ、ブチコロシターーー
折角育てた牧場も滅ぼされ、たった一人になったアタシは、沢山の方法を試したけれど死ねなくて、転生もしなくて。
最後に、それなら、メシアと一つになろうって、魂自体を融合したんだっけ。
その術式の最後に、メシアからの拒否があって魂を再分割して、そこから、一旦記憶がなくなり。
次に記憶にあるのが、見に覚えのない世界で、突然、この記憶を思い出すという状態だった。
しかし、二人同時転生の術は有効だったらしく、その時のアタシの側には、やはりメシアがいてくれて。
メシアもアタシも、融合術式の副作用か種族自体が変わったらしく、寿命が大幅に短くなったけれど、寿命を迎えると突然消えて、また一緒に産まれたり近くで産まれたりして、そこから転生を繰り返してたんだよなぁ。
まあ、どのタイミングで記憶を取り戻すか、はその人生でもマチマチだったのは失敗だったのかな。
今だったら、昔の、初期の種族であり最高の状態に肉体はもどったから、今度アタシとメシアの魂の術式もチェックして修整かけないとだなぁ。
転生のおかげで昔よりも理解力とかは良くなったし、昔よりもスキルアップして出来ることが増えたし、何とかなるだろう。
そんな事を考えていたら、メシアがアタシの首に腕を廻し、優しくひとつ口づけて、
「明日はーーーお手柔らかにね?お休み、姉さまっ。」
そう言って、小走りで寝室へと戻って行ってしまわれました。
うむ・・・これが、小悪魔天使なのかな?
アタシは何も言えず、暫くメシアの去ったあとを眺めていたが、
思い立って例の隠し部屋のお掃除と準備を丹念に行ってから、寝室へと向かったのだった。
遅れつつではありますが、少しずつ、双子の過去も追記していきたいと思います。




