七十八:裏技教育活動
※途中でご褒美シーンがあります。ご注意ください。
翌日も、朝から美味しい朝餉をいただき、その後サクッと状況報告や情報交換したあと各々で復興慈善事業を行うことになった。
勿論、途中でよっすぃ~と2人でお手洗いに行くフリして、コッソリ昨晩のプランを話し、我々で動く前に二人でスイレンの王に黒い心臓の中の子供の事を聞いた方がよいと言う意見もふまえて、あれを処理するのは深淵の森に帰ったら、という事で決まった。
まあ、王のおじいちゃんも結構なご長寿みたいだからねぇ。
彼の口から、何らかの手がかりが見つかるなら嬉しいんだが。
そう考えつつ、アタシは例の工房へ先に出向き、職人顔負けの早さで収集した半数の武器へ神聖付与を終えて、よっすぃ~の実践戦闘訓練場へと移動した。
そこでは、よっすぃ~の訓練部隊と共に、セエレの訓練部隊も混ざって、トータルな実践訓練が行われている。
つーか・・・
確かに、各々の得意分野だし、教え方が上手いってのはわかるよ?
でも、目の前に拡がる光景。
これ、1日で仕上がるレベルじゃないんだが!?
もうね、すごい勢いで、全員のレベルもスキルも上がりまくっている上に、セエレやよっすぃ~への忠誠心が半端ないんですけど!?
直ぐにでも稼働出来るレベルにするのに、一体何をしたのか2人に聞いてみたら。
「ふふ、メシアさんに相談して禁術を1つ教えて貰ったんです。
ご主人様がよっすぃ~さんへ言語スキルの付与をされていたのと同じ方法を工夫して、基礎知識と戦時戦略と神聖属性の基礎スキルを、各人に一気に叩き込みました。」
「・・・。(こくり)」
「よっすぃ~さんの戦術は、逆応用で私がその知識をコピーして、それで戦士達に付与したので大変でしたよ?
まあ、そもそもこの禁術を習得するのにも骨が折れましたが。
しかもそのお陰で、ご主人様からいただいた魔力が一晩ですっからかんになってしまいましたがね?」
「あとは、全部実戦で、教えた。」
サムズアップするよっすぃ~と、隈があってもとっても爽やかな笑顔で、やりきった感満載なセエレ。
いや~、あれを使えるようになるとは・・・やっぱりセエレって優秀なんだよなー。
禁術の流出は放っておき、アタシは人目を気にせずセエレを抱き締める。
「ありがとうセエレ。家に帰ったら、また、沢山ご褒美あげなきゃね。」
「はぅ・・・ご褒美、とても、楽しみですぅ・・・。」
ハグしただけで、うっとりと身を預けるセエレ。
その直後、背中へよっすぃ~からの渾身の一撃と、
「訓練中。」
というお叱りを受けて、アタシ達は実践の訓練へ戻ることになったのだった。
「ほらほら!どうしたのです?もっとおいでなさい!」
「・・・・・・・!!」
「あははは!よっすぃ~さんに近寄らないでよ!?僕のなんだから!!」
「んもぅ!無理しちゃダメよ!?相手の動きを良くみて、ケガをしないように回避しなきゃなんだからねっ!?はい、いってらっしゃい!!」
「・・・・うわぁ。」
笑顔で低級下僕を召喚し本領発揮してるセエレ vs. 神聖魔術の門下生達。
そして、月影夫婦 vs. 屈強な戦士達。
それを、微妙な顔で見つめるアタシ。
いや、途中までどっちにも加勢して乱取り稽古に参加してたよ?
レベルの高い相手と戦うと、経験値が大量に得られるし、スキルも磨かれる、その原理は理解出来るしね。
でも、もうさ、みんな各々の世界に集中してパワー全開になっちゃって、うっかり弾き出されたよね。
で、仕方なく周囲にいる倒れた人達を回収して、救護所みたいなとこへ連れていき、そこで訓練兵を回復させて送り出してるメシアの元に来たんだけど、ここでも回復部隊の門下生みたいな女子が必死に学んでいて、アタシの入るスキがない。
なら何処行くべと、とぼとぼ周囲をうろつきつつ、最終的にこの場所で一番高い木に登って、適当にメシアやセエレや月影夫婦に、魔力・体力回復の術をぶん投げて過ごす事にした。
まあ、黒い心臓の少年を救う為の算段を詰めて考えるには良かったんだけどね。
あーしたらこーなる、みたいに考えてる最中、突然コテヴィBOYSの青年が一人で泣いてる声が、聴こえた。
回復の手はそのままに、彼の慟哭とも懺悔とも言える声に耳を傾ける。
『・・・うぅ・・・一体、何処にいるの!?
・・・僕が、嫌いって言ったのがいけなかったんだ・・・!
・・・ごめんなさい、ごめんなさい!!
・・・かみさま!僕が全て悪いんです!!だから、彼を返してください!!』
・・・ん?教会とかで、懺悔か祈りか、何かやってんのかな?
あのコテヴィ青年、誰か探してたのかな。
もしかして・・・探し人が、アンデッドになったかもしれないのかな。
だから、あの国境近くまで、その【彼】を探しに来てたのかな?
そこまで考えて、嗚咽に掻き消される声が落ち着くまで、ぼんやりと耳を傾ける。
『・・・待ってて。絶対、見つけるから。・・・。』
一頻り泣いて懺悔し、最後に決意の想いを呟いて、どうやらコテヴィ青年は教会を後にしたみたいだ。
ふ~む、隣の国でも、何かあったんだろうか?
後々お邪魔するであろう時に、しっかり困り事とか聞いてあげよう。
そう思いつつ、被害の少ない解呪の複合魔方陣の開発に、アタシは没頭していくのだった。
「・・・・様・・・・・・・・ご主人様?」
「―――――――――うぇっ!?」
突然上から声が聴こえて、アタシは思いっきり顔を上げる。
目の前には、不思議そうな顔で見つめるセエレ。
木の上に登ってきたからか、アタシの肩に両手を置いて、バランスを保ちながら覗き込んでいる。
と、いうか、しまった。うっかり術式の思考の沼にハマって、周囲にあまり気を使ってはいなかった。
途中から、自動術式組み上げてオートで皆を回復してたから、もうお昼の時間をゆうに越えているとは気が付かなかった。
アタシはひとり反省会を秒で行ってから、セエレに話しかける。
「えっと、どうしたの、セエレ?」
「いえ、もうお昼なので、訓練を一時中断させてしばらく休憩なのですが・・・お加減が優れないのですか?」
「いや?体調は万全だよ??」
「そう、ですか・・・?」
腑に落ちないような表情で、セエレが首を傾げる。
うわ、本当にセエレって勘が鋭いな。
アタシは話を反らすべく、座り直して、アタシの上にセエレを導いて座らせ、そのままセエレをぎゅっと抱きしめ、耳元で囁いた。
「セエレ、ここなら誰にも見えないから、ご褒美、いる?」
「!いただきます・・・!」
顔を上げたセエレに速攻口付けられ、魔力を吸いとられる。
・・・ぐぬぬ。
本当に禁術習得とその利用で、ギリギリのところまで魔力を使い果たしていたのだろう。
今までにないくらい物凄いスピードでアタシからセエレへと魔力が流れ込んでいく。
それに伴い、セエレの身体から力が抜け、恍惚とした表情になり腰を擦り付けるように動きだした。
・・・・うーむ。
今のアタシ達の姿を他人が見たら、まあ、昼間からお盛んですねと思うよなぁ。
気をつけないと、と思い、周囲に気を張り巡らせてみれば。
ああ・・・膨大な量の魔力の移動を感知し驚いた門下生達が、発信源を探していらっさる。
その上で、メシアのエターナルブリザードの気配が近づいてくるなぁ・・・終わったな。諦めも肝心だ。
アタシ自身の魔力量も、訓練前に飲んだおネエドリンクで満タンだったのが1/3切りつつあるし。
しばらくは、メシアがかここへ来るまで諦めてそのままにしておこうと思いつつ、落ちそうになっているセエレの両脚を抱えて引き寄せて、抱き直してあげたら。
「ふっ・・ふ、うぅぅん!!・・・っあ、・・・ん・・・」
眉間に皺寄せて、ひっくり返る勢いで仰け反って、セエレが何度か痙攣した。
あー、一気に魔力でお腹いっぱいな状態になったから、魔力を溜めるトコがバランス崩してビックリしたんだろうか??
とりあえず息の荒いセエレを抱きしめて、あやすように背中を撫でてあげていると、すごく気の抜けた、ぼんやりしたセエレが、力の入らない腕を首に廻してきた。
「お~い、大丈夫か?セエレ??」
「あ・・っ、あは・・・あいしてますぅ、ごしゅじんさまぁ・・・」
「あ、まだダメかぁ。」
焦点の合わない瞳で、うわ言を言いながら甘えてくるセエレ。
ん~、意識が戻ってくるのには、まだ時間がかかりそうだなぁ。
とりあえず、アタシはもうひとつ複製おネエドリンクを取り出し、一気に呷った。
ーーーーっか~!!効くねぇ!!
足りない魔力が一気に満タンになり、少しだけ血糖値の急上昇のような気分を味わいながら、そういえば、とアタシの分身を作り出してメシアの元へ向かわせた。
貴重な休憩時間なのに、ここまで来させるのも忍びないからねぇ。
マッハで飛んで、メシアの目の前に降り立つ。
会ったとたんに案の定やきもちMAXな状態だったメシアさんだけれど、理由と共にセエレへ魔力譲渡してただけだと聞いて、ブリザードを止めてくれた。
まあ、心当たりがある(禁術教えた側)だからねぇ。
メシアも、セエレの魔力量だったら何とか使えるかもって教えたらしいから、魔力の補充については考えるの忘れてたって反省会してるし。
そんなメシアを連れて、二人でゆっくりと今後のこの国のことなど話しつつ、一緒に持ってきてくれたランチを食べてお昼時を堪能したのだった。
身内の不幸の関係で、更新が大幅に遅れています。
ただ、また新しい?久遠の資料を実家から発掘してきたので、良しとしますかね?




