七十六:救助活動
「んじゃ、まずは、そこの檻の鍵を締めて、王様探しに行こうか~」
全員がお茶を飲み終わってから、アタシはカップを回収しつつ、立ち上がる。
なお、例の檻は広間の隅に置かせてもらって、鍵はよっすぃ~が管理する事になった。
サクサク手際よく撤収作業をし、序でに破壊された広間を修復して元に戻し、何処が怪しいか目星をつけている皆に、手分けして王族一家を探してもらうようにした。
じーさん達が来てから立ち入り禁止になったデカイ塔はセエレと月影夫妻(仮)が捜索し、
メシアと黒呼とクロム、そして元々いる王族配下の皆様で今いる城の中を捜索する。
アタシは一度空から敷地内を見て、怪しい気配があったら随時、それを報せるっていう役割にし、皆と別れた。
まあ、何処に幽閉されてるのかって、だいたい解っているんだけどね。
そっちは、よっすぃ~がいるから大丈夫だろう、うん。
壁に飾られてある、現王の肖像画をトトの魔眼で見て、補足データ部分に現在の所在地と状態が書いてあるから、ね。
アタシがやるべきは、他のこと、かな?
そう考えながら散開する皆を見送ったあと、窓から上空に飛び立ち、この城や屋敷のある敷地内の間取を確認してから細工の魔術を放つ。
そして、自分に完全認識遮断の魔術をかけ一瞬で転移陣を展開させて、城内に戻った。
そこから、この城内をトトの魔眼を駆使して音を立てないように駆け抜け、多分王族しか知らないであろう秘密の通路に侵入し、その奥にある隠し部屋へ到着した。
そこで一度、認識遮断の魔術を解除し、トトの魔眼で確認し考える。
ちょっと悩んだが、とりあえず相手は王族だし、以前の現世でのマナーが通じるかわからんが、礼は尽くさなくてはなぁ、と思いつつ、コンコン、コンコンと4回ドアをノックしてから、すみません、と声をかけた。
なお、4回は目上や最上級のもてなしの場合のノックで、よくある2回はトイレの時だったんだよなぁ。
地味に家系が華道茶道教職医者ばかりだったから、滅茶苦茶躾られたのが今になって生きるとは。
まあ、この世界の常識に通用するかはわからんがな。
そんな思い出に浸っていたら、隠し部屋の中から
『何者か!?』
って女性の声が返ってきた。
「よかった、どなたかいらっしゃって。私はスイレンの国から依頼されてやって来た、転移陣修復をしている者です。
証明できる半券も所持しています。」
そう言うと、ほんの少しだけ扉が開いたので、その隙間から見えるように、インテリボーイから渡された半券の束の中の、この国の部分を見せる。
暫くして、身元がしっかりわかったからか、女性の声が柔らかくなり、小声で素早く話し始めた。
「先ほどは失礼な態度で申し訳ございませんでした。
しかし、現状この小国は危機に瀕しており、この場も大変危険かと存じます。
貴女様の身の安全が保証致しかねる今、第一にこの場から速やかに離れ、一刻も早くこの国からお逃げください!」
最後らへんは、悲痛な声になりながらも必死で伝えてくれた。
王族も今までがんばって抵抗していたんだなぁ。
アタシは相手を安心させるように微笑み、今までの事を伝える事にした。
「多分、もう大丈夫ですよ。この国を乗っ取っていたのは、貴族っぽいご老輩の方ですよね?あと、武装集団と。」
「えっ?・・・ええ、左様でございます。畏るべき魔術を駆使する切れ者の輩でございました。かの者は、我らを人質に王の身を拘束し幽閉しているとか。我らは自力でここへ逃げて参りました。あとは、王の身の安全を確保するばかりでございます。」
「あ、その輩どもは全員捕縛してお仕置きして捕まえてありますので、もう心配はないと思いますよ?」
「いいえ!それ以上に危険があるのです!彼奴達は平原の魑魅魍魎を操って、この小国を大規模に襲う計画があるとの事!なのでお早くお逃げ下さい!!私達はこの国と運命を共にする為、この地から離れる事は致しません故、貴女様だけーー」
「ああ、それも昨晩起きました。全て鎮めてきましたので御安心下さい。」
「へ・・・?もう、終わっ・・・街は!?民は皆無事なのですか!?」
うん、この人が王妃様なのかな?美しい女性が、思わずと言った感じで扉から出てきた。
自分の身よりも民や街、この国を大切に思っているって、本当に良い王族じゃん。
後ろから、幼い王子様かな?子供達が此方を覗いて、不安そうに見つめてくる。
アタシは王妃様に、昨晩あった事を伝え(術の核心に触れる事以外ね)、もう、安心して外に出ても良い事を伝えると、ポロポロ涙を流して抱き付いてきた。
「本当にっ、ありがとう、ございます!」
「いえいえ、今まで不安で大変だったでしょう?」
そう言って、王妃様を落ち着かせようとした時。
『王様、無事確保。残兵は全て倒し、檻に移送中。』
よっすぃ~の声が腕輪から聴こえ、更に安心した王妃様がワンワン泣き出してしまい、その場が収まるまで暫く時間がかかってしまった。
で、王妃様と子供達、あとは超遣り手なベテランメイドさんズを連れて、悠々と広間に戻ってきた。
広間では、少しやつれた王様が座っていたが、王妃様達が部屋に入った瞬間立ち上がり、家族皆駆け寄って、お互いの無事を確認して抱き合い、涙する。
それを見つめていたメイドさんや執事さん達も涙して、本当に、一日一善したなって、心をホッコリさせてもらえたよ。
これで、一件落ちゃーーーー
ーーーーガチャン
ーーーくになるわけがなかった。そうだった。
例の危ない格好で清々しく檻から戻ったセエレを視界に入れた途端、どっと疲れが押し寄せてきた。
檻の中は、もう、死屍累々で新しい世界に目覚めた方も何人かいるみたいだ。
うっわ、おっかねぇ。近寄らんとこ。
さりげなく自然にメシアと黒呼の後ろに移動し、よっすぃ~とクロムに目配せする。
意図を察してくれたクロムが王族の方へ行き、よっすぃ~&白呼君が変態大元帥を物陰に連行してくれた。
いや、幼子にあの変態を見せるのは申し訳ないからねぇ。
しばらくして、いつものメイド服に着替えたセエレ達が戻ってきたので、セエレから尋問で聞き出した内容を教えてもらったが、特にこれといって新しい情報は出なかったみたいだ。
そんな事を話してる間に、クロムが挨拶や今までの経緯、アタシ達の紹介を終わらせて、王様の元にアタシ達を呼ぶ。
そして、王族とアタシ達はとりあえず着席し、もう一度情報の擦り合わせを行うのだった。
「で、こんなことを仕出かした首謀者とは、どなたですか?」
以前セエレが聞き出した情報の裏が取れたので、その先の人物、つまりは何処の誰らを警戒せねばならないのか、王様に話を振る。
王様は、少し躇いつつも、王妃様からのGOサインを受けて、この悲劇の裏舞台を語ってくれた。
首謀者は、平原に面する概ね全ての国の王族や貴族達であり、主に開発は一つ国を跨いだーーつまりは隣の隣の国で行われていた。
彼らの考えでは、このまま魔法が衰退していく、つまりは神聖魔法の使い手が減少していくくらいならば、むしろ、そのアンデット達を再利用出来ないだろうか?と考えたらしい。
本来は、アンデットイーター、つまり死体で死体食いを作ろう、そしてある程度食らわせて一匹にまとめてから、それを浄化しようって思っていたらしい。
でも、研究が進むうちに、生者が死者を制御することが出来ない、という事がわかり、研究が途中で頓挫した。
そのまま40年が過ぎ、この計画自体もなくなるだろう、と言い残して、先代の王はこの世を去った。
それから現王が統治し20年。
その間に、他の周辺小国と共にこの計画から手を引くという声明を出し、今まで通りに平和に暮らしてきた。
しかしここ数ヶ月で平原の状況が一変した。
アンデットが、まるで意思を持ったかの様に、集団で襲って来るようになったのだ。
そして、それと同時に、この国の貴族と結託したあのおじーちゃん達が王族を襲い、そして、今度の事態を巻き起こした、という事だった。
「実は、この様な事態の最中、天空の王への手紙に暗号を込めて、助けを求めておりました。
本当に、皆様が来て下さらなかったら、この国は終わるところでした。誠に感謝いたします。」
深々と王と王妃が頭を下げる。
クロムとセエレがそれを制してから、真っ黒い表情で
「王・・・後で追加請求しなくては・・・」
「うん・・・どうしてくれようかなぁ・・・?」
とダークに笑って言っていたのが、本日一番の恐怖であった。
その後、荒らされた城内の修復をサービスで行いながら、王妃に連れられて、転移陣の修復を行い、プラスで例の隠し部屋にも追加で設置してあげた。
今回のはメシアが設置した為か、真面目で優しい女性タイプのAIだった。
そして、これからが問題なのだが、この度の騒動で聖職者も神聖武器も大幅に減少してしまい、当面の夜間警備も難しくなる、という状態になってしまった。
まあ、平原は通常営業だろうし、武器の回収も大変だろうからねぇ・・・。
そこで、アタシはメシアに相談し、それから金庫番のセエレや外交部隊クロム、冒険者代表黒呼と一般人目線で月影夫婦に意見を求めて対応策を練り、王様に提案する。
王様、いや王妃様や城内の使用人にまで物凄く感謝されたけど、アタシ達がやるのは御膳立てくらいまで。
ここに居られるのも、私事の面を考えて3日くらいだから、それ以降は都市総出で何とかしなきゃいけない。
まあ、3日あれば・・・何とかなるだろう。よっすぃ~いるし。
アタシはギルド深淵の館の全員に(勿論月呼達にも説明がてら参加してもらって)今後の段取りなどを整理して話し、その後、各々の仕事に取りかかったのだった。
本業が忙しく、遅々として進まない・・・申し訳ありません。




