七十五:お仕置きタイム
翌朝。
皆一人一人個室が与えられていたので、前夜は防犯の為アタシの分身体を各部屋に配置し、嫁達と色々寝る前の事を成した後、浅い眠りを堪能していたのだが。
うっかり自室に一人残すのを忘れた為、アタシの部屋の御世話係の人に準行方不明事件として迷惑をかけてしまったみたいだったので、朝から平謝りする羽目になってしまった。
その後、朝食の準備が出来たと言うので、その場所に行ってみれば。
朝食会場に用意されていた、とても美味しそうな食事全てに毒が仕込まれていたので、それについては何も言わずに、とりあえず外に場所を借りて、道具を出してその場で朝飯を作って食べる事にする。
毒を回避できたのは、進化したトトの魔眼のおかげだなぁ・・・アタシは毒が一切効かないけれど、貫通の毒だと、白呼くんとかよっすぃ~とかが大変になるからねぇ。
そう回想しつつ、アウトドアな感じでほぼいつもと変わらぬ穏やかなモーニングを皆で準備した。
なお、今朝の朝飯は、自家製お野菜たっぷりのスープと、これまた野菜たっぷりで具材も選べる巻きタコスで、割と簡単な朝食だ。
作っているーーーつまりは無双している際、この城の料理人がわらわら沸いてきて興味を持たれたので、作り方を教えてあげたらとても喜ばれたから、ついウッカリ大量に作って料理人達も交えて皆で美味しくいただいたのは、ここだけの秘密だ。
そんなこんなで、優雅な食後のコーヒータイムまで楽しんでいると、身なりのしゃんとした執事っぽい人から声をかけられ、ようやっとこの都市の王からお呼びだしとなる。
アタシ達は道具を片付けて室内に戻り、使者の執事に促されるまま、応接室のような大部屋へ向かって移動した。
それにしても、トトの魔眼で見るまでもなく、相当警戒されてるなぁ、これは。
まあ、朝一で毒を盛ってくる輩だもんね、あまり使者とか言っても信用しない方が良いよね。
ただ、朝飯の時に会った料理人達からは、悪意を感じなかったし、それどころか、とても申し訳ない雰囲気すら感じた。
何だろう、この違和感。すっごくモヤモヤするなぁ~。
そう、思って、何となくこの城に対してトトの魔眼を発動してみて、固まった。
説明の一番下に、『現在の住人である王族は幽閉中』って、書いてある。
あー・・・なるほど。じゃあ、アタシ達は一体誰に会うんだろうねぇ?
一瞬で府に落ちたアタシは、最大限に様々な魔方陣を隠蔽しつつも起動寸前まで準備して、黙って使者の後を着いて行った。
そして、大広間に到着し中に入ると、そこにはーーーー
『ようこそ、そして、さようなら。』
「起動!」
物凄い爆音。
そして、黒煙が部屋を充たす。
アタシは、この部屋に入った瞬間に、完全防御結界を起動させて皆を守り、ついでにこの部屋自体にも結界を張って誰も逃げられないようにした。
入ってすぐ目にしたのが、銃器を構える屈強な男達と、その中心に居る貴族の様な老輩だった為だ。
我ながら良いタイミングで起動させたものだと、自画自賛しそうになるのを置いておいて、驚いているおじいちゃんやお兄さんに話しかける。
「いや〜、穏やかじゃないねぇ〜。名乗りもまだなのに~本当に勘弁してほしいわ〜。」
『ぐっ···貴様、一体な「キャー!!!姉さまカッコいいー!!!大好きー!!!」
えええ···会話が、メシアクオリティにかき消されたわー
キャアキャア言いながら、メシアが抱きついてくる。うん、カワイイ。いや、そうじゃない。
とりあえず落ち着かせる為にメシアの腰を抱きながら、声をした方向を見た。
その声の持ち主は、随分なご老体であり、目を見開きながら、アタシの後方を見て、ドン引きしている····?
アタシは瞬間でご老体の視線の先に振り向いて確認すれば。
「うわぁ、セエレ・・・お前・・・。」
「あはぁっ、ご主人様、私にも抱きついて欲しいんですね!?お任せくださいっ!!」
「いや、抱きつかなくていいから。」
一瞬だったが、そこには、メシアに対しての嫉妬心丸出しの酷い表情のセエレが、いた。
うん、おじいちゃんも、アレはドン引きしちゃうよね、共感します。
何だかんだ抱きついてきたセエレの背中にも腕を回し、両手に花・・・というより毒花な気持ちで、ご老体に向き直る。
ああ、何だか待たせ過ぎて、気の毒そうな、イラついているような、複雑な面持ちで、ご老体はこちらを見つめておいでますな。
その最中でも他の部下達が次々攻撃を浴びせてはいたんだけど、撃ってくるのが、何というか・・・低級魔法や型落ち(元の現実世界比で)の銃器だからねぇ。
よっすぃ~とか、防御魔術でコーティングされてるからって、飛んできた砲弾を刀の鞘で打ち返して遊び始めちゃったよ?
なんか・・・無駄な時間だなぁ。
アタシはサクっと敵対勢力をトトの魔眼で一望し、本当に悪い奴らはほんの一握りの奴で、給支さんとかは悪い奴に脅されて動いていただけで、元々王の配下だったと分析した。
それなら、やることは1つだよね~
「縛!!そして無音の檻2号召還!!」
と、いうわけで、敵と判断された者の身体を痺れさせる術を放ち、久々の無音の檻Ver.2を広間のど真ん中に設置した。
そして、仲間の皆様解っていらっしゃるわ~というか、流石というか。
それを見た瞬間、よっすぃ~が敵の集団に突っ込んで行って、ボコりまくっ・・無力化させて、次々と檻の中に放り込み。
そして、一瞬でお着替えを終えたセエレが、太く長い鞭を片手に、恍惚の表情で檻へと向かって行かれました・・・。
ちな、他のメンバーも、ギルドの仕事で溜まった鬱憤を晴らすかの如くよっすぃ~へ合流し、乱舞しまくっておりました。
檻の中といい、外といい・・・阿鼻叫喚とはこの事なんだろうなぁ。
そんな事を思いつつ、とりあえず皆が戻ってきたら作戦会議だなぁ~と、何時もながらの円卓と椅子とティーセットを準備して、その間にメシアが残った給支さんから、事の詳細を事情聴取してくれた。
しかし、皆常に脅されて監視されながら動いていたせいか、王族が一体何処に幽閉されているのかも見当が付かないみたい。
こんな状態になったのも、ここ数ヵ月前位から突然、という事だった。
クーデターかとも思ったが、王城の外の状況は何時も通り変化なく、乗っ取りかとも思ったが、王の出席する行事には、きちんと王は出席していたとの事で、あのおじいちゃん達悪党が、一体何をしたいのかがよく解らなかったそうだ。
そして昨日。
おじいちゃん達は大勢が集まって、広間で何か興奮した面持ちで作業をしていた、との事。
途中でとても騒がしくなったのと、都市を囲む城壁外の状況とで城内も混乱していたので、一体何をしていたのかまでは解らなかったが、その後におじいちゃんの周囲では戦闘態勢へと移行していったみたい。
今の話を此方の認識と擦り合わせると、タイミングが合いすぎる。
つまり・・・昨日のデカブツを作ったのは、おじいちゃん?と思いがちだけど、それは、ない。
なぜなら、アレを造れるレベル・知識・魔力量、その全てがおじいちゃんには足りてないからだ。
他に、黒幕がいる。
そして、ソイツは今ここには、いない。逃げたのかもなぁ。
そこまで考えて、あとは優しく尋問しているセエレから、聴けばいいか~と思い直し、アタシはコーヒーを淹れて口を付けるのだった。
しばらくして。
コーヒーの薫りに引き寄せられたのか、乱舞していた皆が戻ってきた。
檻の中に収納された悪党は、ちょっと酷い状況で、その上でセエレの調教を受けるものだから、割と皆すぐに寝返ったみたいだ。
戻ってきた皆にコーヒーや紅茶を淹れてやり、その間にメシアが先ほどの話を皆にする。
それに、所々注釈を付けたりして話していると。
「ふふ、お待たせ致しました~ご主人様~!」
ものっすごく優雅な足取りで、キラキラと輝くセエレが戻ってきた。どうやら、満ち足りたらしい。
アタシの右隣に座っていた黒呼が、その状態のセエレを初めて見たせいか驚いていたが、まあ、流石、変態大元帥。
何事もなく、その華麗な格好のまま席に着いて、紅茶を飲み始めた。せめて、スケスケで丸出しな下を隠しなさいよ、まったく。
アタシは、セエレの元に行って、膝の上に大判のストールを掛けてから、あのおじいちゃん達は何故、この国の王を幽閉し、一体何のために乗っ取りを行っていたのか?を訊けば。
「この国にいた理由は、ここが一番平原での実験がやりやすく、かつ、他国にバレにくく、かつ、動きやすかったから、だそうです。
なお昨夜の騒ぎは、真の黒幕の指示で、平原のデータを取っていたみたいですよ?」
「実験場・・・アンデット・・・・・兵器?」
「ふふ、お見事、ご主人様。」
そこで一口また紅茶に口をつけ、セエレは話す。
「昨夜の騒ぎ。1つはアンデットを誘き寄せる装置の実験。もう1つは、趣味の悪い新兵器の稼働実験だったそうです。」
あぁ~、アレが、そうだったのかぁ。
アタシは腕輪に収納したままの、あの黒い核を思い出す。あれ、何とかしなきゃなぁ。
「どうやら、その兵器とやらは150年近く実験と開発に時間を費やした、壮大な計画だった模様で・・・少なくとも、裏の世界では計画に乗った者が各国にいるのだとか。
この国では、亡き前王が計画に協賛してたそうです。そのため、現王の名前で撤回する事ができず、それでも現王は抵抗を続け、最終的には現王は家族もろとも幽閉されてしまった、という落ちですね。」
ふーん、親のやることを覆えようにも、反古にしたら協賛者全員から真っ先に狙われる、その典型ってやつだねぇ。
今のこの国の現王ってのは、結構正義感溢れた人なのかもね。
そこで、アタシは再び珈琲に口をつけた。
明けましておめでとうございます、本年もゆっくりペースですが、何卒宜しくお願い致します。




