七十三:原種の闇
原種の国、首都、アンティクヴァ。
この都に入るには、例え他国の王であっても、検問所でしっかりとした手続きを取って、入らなければならない。
さもなくば、即、敵として視なされ、排除される。
そう、王から貰った民族説明書に書いてあった。
だからこそ、此方もギルド業務と王の依頼という事で、手続きしていたんだが・・・・
「勇者よ!!どうだ!?我の嫁にならないか!?」
「いいえ、貴方では役不足です。私の嫁にいかがですか?貴方の事を全て解明してみせますよ?」
「美しき純白の天使よ、私と共に参りましょう?そして、この国の者達を救済し、迷えるもの達を導きましょう?」
「ふむ、なかなか見目麗しい使用人だな。私の妻にならないか?見たところ、中々の強さを持っているではないか。我らの子も強靭になりそうだ。共に来るがいい。」
「ほう、そなたは魔人か。なれば話が早い、我の妻となり、子孫繁栄に尽力するが良い!それなりの待遇は用意させて貰おう!」
「へえ、キミって竜人の血が流れているんだね。どう?今晩一緒に過ごさない?それで善ければ、ボクの番になって欲しいな?」
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ーーーーブチっ 魔 力 全 開
「 い い 加 減 に し て く れ ね ぇ か ?
オレ達は仕事でここに来てんだよ?ビジネスだよ??時間が大事なんだよ???
それに、この4人はオレの嫁なんだよね?人妻に横恋慕しないでくれる?
あと、この二人も夫婦だから、そーいう事しないで欲しいんだけど?」
「姉さま、ダメ!!落ち着いて!!今晩メシアを好きにしていいから、今は抑えて!!その想いを夜にメシアにぶつけてぇ!!」
ーーーープシュぅぅぅ・・・・ 脱 力
何というか、お約束、なのか?
驚きで床に転がる原種兵士達を一瞥しつつ、盛大にため息をつく。
頭上ではメシアが、毎度の事ながら角の跡地を撫でたり頬擦りしていたが、それを気にしないようにして、アタシは話を続けた。
「ああ~・・・、とりあえず、アタシ達は 仕 事 で この都市に来ているんだ。
だから、 早 く この手続きを終わらせて、ギルドとか行かなきゃならないんだよね?わかる??」
アタシの問いに、兵士達が無言で何度も頷いた。
「なら、早く動く!!」
「「「はいっ!失礼しました!!!」」」
思わず一喝するような形になったが、その後スムーズに検問、検閲が進み、ようやく都市に入る事ができた。
つーか、なんだよ勇者って。この世界にも勇者とか存在するのかよ。そしたら魔王とかもいるんじゃないの?はぁ~、全力で関わりたくないね!
そんな事をモヤモヤ考えながら、クロムと黒呼の先導で市街地に入り、とある武器屋へと入る事になった。
中に入ると、武器だけではなく防具や様々な道具、材料もあり、奥の工房から金属を打つ音も聞こえてくる。
白呼くんとよっすぃ~が、目を輝かせて武器コーナーへ行くのを横目に、アタシはトトの魔眼に集中し、店内を一望した。
ーーーふむ、中々の品揃えだ。あ、だったら。
とりあえず買い物カゴを手にし、気になるものや素材を次々大量に入れて行く。
そして、武器コーナーでわいわいしている皆の元へ行き、各々に合った高性能な武器をチョイスしてあげた。
「でも、これ、神聖属性じゃないけど・・・」
首をかしげるクロム。
「大丈夫。あとで全属性対応の付与を錬金術で出来るから。その素材も沢山見つけたし。」
アタシはかごに入った大量の素材を見せると、クロムが驚いた顔になった。
「フミエって、何でも出来るんだねぇ・・・」
「何でもは出来ないよ。出来ることをアレンジするだけだよ。」
「へぇぇ~・・・」
そして、結構な金額のお会計をした後に、少しだけ、工房を貸して貰える事になった。
何でも、ここの鍛冶の方が先ほどの会話を聴いていたらしくて、一度でいいから付与の現場を見たいという事だった。
いや、付与なんて錬金術使えりゃ誰でも出来るんじゃないの??
とは思ったが、どうやらここの国では術の練度が低いらしくて、あまり参考にはならないそうだった。
で、皆の目の前で、買った武器に一気に次々と属性付与してあげて、サラッとレクチャーしてあげたりした。
まあ、後から、クロムに滅茶苦茶怒られたけれど。
何でも、アタシが普通に行った事は、現在誰もが思いつかなかった様な画期的な方法だったらしく。
ギルドでその方法の特許申請もついでにしなくてはならないそうだった。
まあ、その辺はクロムが鍛冶師達と話していたから、何とかなるって言っていたけれど、苦労かけちゃったなぁ。すまん。
そんなこんなで、この都のギルドに着いたのが、もう午後も中頃の時間になってしまった。
3人が手にする仕事量的に、軽く3時間くらいはかかりそうな気配がする。
その間に、アタシはよっすぃ~と分身体だけギルドに残して、皆で修復の場所を探る事にした。
迂闊に都市の上空を翔べない(都市の決まりで、特殊な事情を除き、常時地上7m迄しか翔べない)からか、場所を特定するのに時間がかかる。
気配と地図で見てみるに、町の外側6箇所、内側の市街地が5箇所、あとは、中心に建つ城の中、かなぁ?
通りかかった市場で食料を沢山ゲットしつつ、これは時間がかかりそうだと頭の中で予定を組んでいく。
あと、通信で自宅に連絡をし、帰りが遅くなるから、先に夕餉を取って欲しい旨と、お土産の大量のお惣菜も、先に腕輪づてで月呼に渡しておいた。
あと、少しだけ嫌な予感がするので、もしかしたら泊まりでの仕事になるかも、とも伝えておく。
うん、ギルドでも話を聴いたんだけどさぁ。
いや、何でそんなにアンデットが大量発生するのかねぇ?って、疑問に思って、ふと尋ねたんだけどさ。
確かに最近までちょこちょこ戦をやってたみたいだけれど、浄化が追い付かないほどの戦死があったわけじゃないみたいだし。
むしろ、ここ10年は戦よりも浄化優先で各国動いてるらしいじゃないの?
それだけかけても戦出来ないって・・・。
・・・平原自体が戦が出来る状態じゃないほど、アンデットまみれか、滅茶苦茶強いアンデットがいて、それの対応に追われてるって事かな?とも思ったのよ。
職員さんが言うに、確証は得てないけれど、きっとそうだっていうことと、プラスで浄化の魔法って、夜だと効きづらいみたいでさ。
一日の浄化量に限界があるみたいなんだよね。
まあ、神聖=太陽、みたいなのは、わかる。日が落ちたら、威力が落ちるんだろうねぇ。
その上で、浄化出来る者の質も昔に比べて落ちているらしくて、その職業に就く者も少なくなってきてるという。
なので夜には神聖属性武器を重ねて使って、夜間は外の闇から都市を守っているんだって、ね。
それって、日没後は、あの平原のアンデットがこの都市を襲ってるって事で。
最近になって活動が活発化したって言ってたけれど、てことは、昼間見た、あのバカデカイ闇の塊も、もしかしたらここに来るって事で。
ヤバくねぇか?
あんなん来たら、この都市崩壊だよ?
むしろ、アタシがいる事がトリガーとなって、ここに来るのかもしれない。
ああいう闇は、頭が良くないけれど、強い者を吸収して強くなるイキモノだから。
なので、アタシは最初から、例え今日の仕事が終わったとしても、この都市に分身体を置いていく事にしていたのだった。
そこまで考えて、また厄介事に巻き込まれたとうなだれる。
まあ、そのあたりもふまえて、観察と分析して対応するっきゃないか。
とりあえず、アタシは今自分が出来る事、修復を終わらせるべく歩きだした。
完全に日が落ちきる時。
都市に城門が閉まる鐘が鳴り響く。
その時点で、アタシ達は手分けして修復を行い、あとは中央にある城の内部の転移陣を修復すれば終わり、というところまで仕事を終わらせていた。
とりあえずアタシとメシア、セエレで集合してから、一度ギルドに戻って、皆で城へ行くことにする。
そして、ギルドに足を踏み入れて、丁度お仕事が終わったクロム、黒呼、白呼くん、よっすぃ~に、今日考えていたことを話して、皆も今日聴いたアンデット系の情報を交換している最中。
ーーーーあ、来た。
アタシは平原の方向から、もんっっのすごく強い怨念を感じ、ギルドの外へ出る。
それと同時によっすぃ~も同じ感覚を察知したのか、一緒に外へ出て、顔を見合わせた。
そして。
「「行こう。」」
アタシは自分の分身体を嫁の分だけ其処に置いて、よっすぃ~を抱えて空へ飛び立った。
とりあえず城壁付近迄はこの都のルール通りの低空飛行をし、其処から一気に城壁の上へ飛び登る。
そして、其処から見える平原の方向の景色に、絶句した。
城壁から平原の最初まで、だいたい1kmない位の距離。
其処に、物凄い数の影が蠢きあっていた。
その最前線では、白金色の光を放つ武器で戦う、無数の冒険者と、この距離で見てもわかる位痩せていて、疲労困憊な聖職者が背後から広範囲で浄化魔法を炸裂させていた。
上から見ても、これは持久戦になったら確実に負けるレベルで、無理ゲーな量の黒い影が、次から次へと平原の奥より溢れて来ている。
そして、遠目で見て更に奥の方向に、とんでもなくデカイ奴が、少しずつ此方に向かって来ているのも、見て取れた。
「あれは、やっべぇ・・・よっすぃ~、どう?」
「・・・・!!(コクリ)」
よっすぃ~の瞳に、物凄く獰猛な炎が灯ったのを見て、アタシはやるっきゃねえ!と気合いを入れて、よっすぃ~を抱えて飛び立った。
そして、通りすがり様に上空から聖職者と冒険者達に回復魔法をぶん投げてやり、序でに広範囲神聖魔術を次々炸裂させながらアンデットの群れの上を移動して、都市とは違う方向へと向かう。
それに、運良くあのデカイ奴は気がついてくれて。
進む方向を此方へと変えて、アタシ達を追って来る様になった。
よし!これで一先ずは懸念要素が一個減った!!
そしてそのまま、平原から少し離れた荒野の上空までたどり着いてから、デカイ影が追い付いて来るのを待つ事にしたのだった。
詳しく書くと更に長くなりそうな為、修復風景ははしょりました!




