七十一:漢を見せろ
※後半部分に、少し胸くそ悪めな、アレなシーンがあります。
キラキラと輝く、対の女神像の前までやってきて、その像を見上げるメシア、セエレ、黒呼、クロム。
アタシはよっすぃ~と白呼くんに、少しだけ離れるよう目配せしてから、4人の方を向き直る。
ーーーああ、天井からの光と、背後のステンドグラスの光が相まって、本当に4人が各々、美しく見えた。
この世界に来てから、最初の頃はそんなことも感じられなかったけれど。
でも、ヴァッさんのお蔭か何なのか、アレからきちんと意識して4人各々について考えられたし、今、アタシが想う素直な気持ちは間違っていないと、そう感じている。
恋は人を変えると言うけれど、そういう事なんだろうな。
其にしても、とても静かな大聖堂の中で、こんなにも綺麗なものが見れるとはーーーはっ、イカンイカン!!
アタシは一つ深呼吸すると、4つに分身したままの自身に、一人ひとつ、昨晩夜なべして作ったものを腕輪から出して掌の中に隠し持つ。
そして、とても綺麗な4人の元に、静かに歩み寄った。
どうしたの?と振り向く、後光が指すかのような綺麗な4人へ、アタシは意を決して、口を開いた。
「みんなに、一人一人に、今、どうしても伝えたい事があるから、聴いて欲しい。」
しっかりと相手の目を見つめて、真剣に言ったせいか、4人とも無言で頷いてくれた。
若干、身構えているようにも見えるが、スルーすることにする。
それじゃ、しっかりと、伝えようか。
「メシア、昔から、色々あって沢山輪廻を重ねてきても、いつも、いつでも、アタシの側にいてくれて、アタシを想ってくれて、本当にありがとう。
アタシは、いつもメシアの笑顔や優しさに、ずっと救われてきたし、それが、もう今では誰にも手放せないほど、とても、愛しく想うんだ。
だからーーー」
「セエレ、最初の出逢いも衝撃的だったし、セエレの過去とか、性格とか、色々と衝撃的過ぎることが毎日あったけれど、でも、それでもいつも全力で助けてくれて、ありがとう。
アタシは、色んな事があっても、其でも、アタシの側にずっと一緒に居てくれると言ってくれたセエレが、今では、絶対に誰にも渡せない程に、とても愛しく想っているんだ。
だからーーー」
「黒呼、これまで、黒呼自身にも色々辛い事もあっただろうし、その上で、里を捨ててまで、アタシと一緒にいる道を選んでくれて、本当に感謝してる。
黒呼が側にいると、すごく落ち着くし、とても優しい気持ちになれる。
その上で、黒呼がすごく甘やかして優しくしてくれるから、もう、アタシの側から手放す事なんて出来なくなっちゃった。それぐらい、愛しく想っているよ。
だからーーー」
「クロム、龍の子供達の事や王様達との事とか、日々凄くお世話になってしまって、本当にありがとう。
あと、こんなアタシの事を、本能的であっても、好きになってくれて、ありがとうね。
いつも、真っ直ぐに好きだって、側にいたいって言ってくれて、それでも寂しさを押し殺して仕事に向かうクロムが、とても健気で愛おしいなって、心から想っているよ。
だからーーー」
『アタシと、結婚してください。』
アタシは4人一斉に言い放った後、右手を差し出した。
それを言われた、メシアも、セエレも、黒呼も、クロムも。
驚いた表情をしていたけれど、直ぐに目があった途端、涙を浮かべて。
「「「「喜んで!!」」」」
そう言って、アタシに抱きついてきたのだった。
しばらく抱擁をした後。
『手、借りるね?』
アタシは各々の左手をそっと持ち上げて、所持していた指輪を、薬指に嵌めてあげた。
とても特徴的な凝ったデザインで、アタシの魔術の髄を極めて作った魔石を埋め込んだ、所謂、結婚指輪。
昨晩、全力で作った渾身の一作を、アタシの嫁となる者へ、渡したのだ。
そして。
アタシは分身体を戻して一人へとなり、もう一つ、少し大きめな指輪を取り出して、嫁達へとお願いをした。
嫁達は直ぐに集まり、皆で一つの指輪をアタシの薬指に嵌めてくれたのだった。
その後。
またアタシは4人へ分かれて、各々嫁と抱擁し、指輪の意味を話して喜ばせたり、まだ身体を合わせてはいないので、現状は仮の婚姻ーーつまり婚約状態であること等を説明した。
まあ、身体の相性が微妙でも、嫁にするんだけどね。
そして、現代でいうところの、誓いの言葉と共に、唇を合わせたのだったーーー
で、だ。
すべての事が終わった後。
見届け人たるよっすぃ~&白呼くんから祝福して貰ってから、幸せオーラを撒き散らしつつ、更に分身体を派遣して一気にこの小さな町の転移陣の修復を終わらせて、直ぐに深淵の館へと戻ってきたのだった。
「ーーーと、言うことがありまして、正式に、メシア・セエレ・黒呼・クロムの4名は、アタシの妻となります。よろしく。」
夕食の席で、赤飯やら鯛料理やらでお祝い料理を並べた後、館に住む全ての仲間へ、そう報告してみると。
「え、まだプロポーズしてなかったん!?」
「・・・今さら、だな。」
「ぐぬぬ・・黒呼め、羨ましい限りだな!」
という月呼夫婦からの野次と、
「「「わぁぁ!おめでとう~!!!」」」
と喜ぶ龍子ミュの面々の声と、
「「「「セエレ様、おめでどうございまず~!!!」」」
と号泣しながら祝ってくれるセエレの部下達の、心からの祝辞に、室内が満たされた。
その声に、本当に幸せそうに微笑む嫁達に、アタシは次の発情期が来たら、本気でがんばろうと心に誓うのだった。
で、その日の夜。
アタシは嫁達にねだられて、分身体を各々の嫁に配置して、眠る事になった。
まあ、全部が本体ではあるので、何かあっても即刻対象できるし、まあいいか、と思っている。
それに、安らかな嫁達の寝顔を見ていると、此方も本当に癒されるものなのだ。
まだ、次の発情期が来ていないから、所謂夜伽と呼ばれるものは行えないけれど、こうやって、相手の体温を感じていられるだけで、何だか嬉しい気持ちになってしまう。
そうやって、嫁達が眠るのを見届けてから、アタシも浅い眠りに入るのが、何時もの(メシアと一緒に眠る時の)状態だった。
アタシの眠りが深くなるのは、明け方になってからの短時間だけ。
だからこそ、微かな音や変化にも、気づいてやれる事ができたのだ。
それは、嫁が眠りに入り、アタシも浅い眠りをいったり来たりしている時の事。
「う・・・うぅぅ・・・」
「・・・ん・・・黒呼?」
ふと苦しむ声が聴こえ目を覚ますと、腕の中で眠る黒呼が、大粒の汗を額に浮かべ、魘されていた。
「どうした?・・・・・黒呼?」
「うぅ・・・嫌・・・だ・・やめろ・・・」
「黒呼?」
身体を揺すっても起きる気配がない。
ーーーこれは、忍の黒呼には、ありえない事態だ。
アタシは黒呼の身に何か起きていると感じ、悪いと思いつつも、黒呼の寝巻きを捲って身体に異常がないか確認した。
前面には、何もない。
じゃあ、黒呼にも見えない位置にあるのか。
アタシは黒呼の寝巻きを全てひっぺがし、背中側を確認すると。
「ーーーあった。何だコレ?」
まるで、首の後ろに呪いのような紋章が浮かび上がり、鮮血の如き色合いで、点滅していた。
光が強くなる度、黒呼がとても苦しい声を上げている。
アタシは咄嗟に、解呪の術をかけたが、一瞬紋章が消えたかと思うと、再び黒呼の身体の中から首筋に、同じ紋章が浮かんで点滅しやがった。
何度も、様々な解呪の術を重ね掛けしたが、同じことを繰り返すだけで、まっったく効果がないみたいだ。
「ふむ、身体にかけても、意味がない・・・?
あっ!?つまり、呪をかけられてるのは、黒呼の精神体って事か!?」
アタシは理解した。
だが、精神体が攻撃されてるって事は、アタシも、いわゆる黒呼の夢の中にお邪魔しないといけないわけで。
出来ない訳ではないが、その為には、黒呼に少し傷をつけなくてはならないのだ。
「うぅ・・・背に腹は変えられん!ごめん黒呼!」
アタシは、黒呼に詫びつつ、黒呼の首筋に噛みつき犬歯の1本を突き刺した。
途端、じわりと広がる黒呼の血の味に、一瞬だけ陶酔しかけたが気を取り直して、精神侵入の術式をかけ、黒呼の心の中、奥深くへと落ちていくのだった。
その後、黒呼の気配を探しに探して、やっっと見つけた!と思ってその場所へ降り立った途端。
目に飛び込んだ光景にアタシは、怒りが頂点に達し過ぎて、一周廻って逆に冷徹に、怒り狂ってしまった。
そこでは。
「嫌だ!やめろ!!放せよぉお!もう、嫌だぁぁ!!」
「他人を想う程に、私の責めも苛烈になると教えたのに、何故わからない?
想うならば私を想え。私を受け入れよ。さすれば、極上の快楽を、外からも内からも与えてやろうぞ・・・?」
「嫌だっ!俺は、フミエじゃなきゃ嫌だ!お前なんかじゃない!!こんな事をされても、お前なんか好きにならないっ!ひぅっ!?」
「強情な子じゃ、やはり、お主は面白い。私の嫁になるにふさわしい・・・快楽に堕ちよ。」
「・・せ、ったい、いや、だ、っぁ、ふ、うぅ・・・」
今よりも若干幼い姿の黒呼が、大量の気持ち悪い触手みたいなのに拘束され、裸体を辱しめられて、いたのだ。
触手からは・・・あの、クロムが嫌な思いした山の臭い・・・媚薬の臭いが、している。
そして、触手を操る、一昔前の伯爵みたいなオジサンが、ニタニタしながら、触手を操って卑猥な言葉を発し、黒呼を責め抜いているのだ。
爆発しそうな冷徹な怒りを堪えつつ、気配を殺して解呪の糸口を探してみれば。
そのクソジジイから、この呪いの根源の力を、感じた。
今すぐ全力でブッ飛ばしてやりたいけれど、ここは、黒呼の精神の中。
とても繊細な場所だけに、全力で暴れたら黒呼の精神が壊れるため、アタシは細心の注意を払いながら、あのクソジジイを秒で叩き潰す事にする。
少しだけ、息を吸って、集中して。
ーーー 開 眼 。
そこからは、時間の流れがとても遅く感じる程に、秒、刹那、いや、瞬間の中を全力の速度でアタシは動いた。
黒呼を責めるのに夢中なクソジジイに、一番堅い結界式と全ての解呪式を叩き込み、プラスアルファで結界内部に封印と追跡と消滅の術式と破滅の魔術を叩き込み、全ての術が渦巻くそのままの状態で、『繰返しの箱』と呼ばれる古代魔術の透明の箱へと、封印して差し上げた。
もちろん、自分の分身体を放ち、黒呼の精神体を救った上で、だ。
本当に、一瞬の出来事。
突然、姫抱きにされた黒呼も、責め苦を与えていたクソジジイも、突然の状況の変化にただ、驚きの表情を浮かべていた。
まあ、クソジジイの方は、直ぐにアタシからプレゼントした極上の激痛エンドレスに苛まれ、汚い悲鳴を上げてはいたが。
アタシは、そんな穢れたモンを黒呼の精神の中に置いておきたくなかったので、速攻、魔術式展開して繰返しの箱ごと、アタシの身体・・・本体の持つ腕輪の中に、封印転移して排除してあげたのだった。
そして。
「黒呼、遅くなってごめんね?」
「フミエ・・・っ、俺、俺っ・・・!」
安心したような、泣きそうな表情に、アタシも凄く申し訳ない気分になった。
あのクソジジイの口振りからして、アタシと出逢う前から、あの悪夢に苛まれてきたのだろう。
もう少し早く、気が付いてあげられたら、こんなにも辛い思いをさせずにいられたのに。
黒呼をしっかりと抱き締めて、黒呼の気持ちが落ち着くのを待つことにしたーーーのだが。
大人しく抱かれていた黒呼のしがみつく力が、急に強くなったな、と思った瞬間。
ーーー・・・グイっ!!
「・・・・へ?」
安心したかのような、誘うような笑みを浮かべる黒呼に、アタシは押し倒される事になったのだった。
漢を、全力で、みせたんだぜ。




