七十:禧(さいわ)いの影に想う者
外伝:月呼の想い
産まれた場所、親、一族、家のしがらみーーー
そういうのは、子は、選べないもので。
私は産まれた時から、囲いの中で生きるように育てられ、表向きはとても良い娘であるよう、生きてきた。
誰よりも強く、勤勉で文武両道、その上花嫁修業も若年でパーフェクトにこなし、与えられた任務も完遂以上に収穫を持って帰るほど。
そして、家、及び一族は其なりに格式があるとなれば、それはもう、若年の頃から見合い話が乱舞していた程だ。
しかし、親世代は知らない。
私は見合い結婚など興味がなく、私の両親が果たした、大恋愛を経て結婚する気満々であることを。
そして、私自身、そこまで型に嵌まった良家のお嬢様ではなく、裏では結構な御転婆であることを。
幼少の頃、母様から聴いた、父様との馴れ初め。
母様は、どうやら祖父様世代の者に遠方から拐われて、この家にやってきた。
父様の、嫁にするためだと、言われたらしい。
しかし父様自身は寝耳に水、母様がこの屋敷に着いてから数刻で顔合わせをした際に、物凄く毅然と祖父様達を断罪し、その場で父様が家督を相続し当主となり、すぐ母様に土下座で謝罪したらしい。
その後、母様が何処から拐われて来たのかも解らなかった為、この屋敷で自由に生活して貰うことにしたそうだ。
そんな日々を共に過ごしていく中で、どうやら父様は本気で母様に惚れたらしく、母様もそんな父様にだけ、少しずつ心を開いていったそうだ。
まあ、母様は物凄く美人だけど、同時に人見知り過ぎて、人前に立つと無言で無表情になるお人だ。
体質の事も相まって、母様に興味がわく人もいたが、なにも語らないから、見合い話に発展する事もなかった(実は父様が裏で全て断っていた)らしい。
で、その内に、何処かで母様の種族的な話を聞き付けた盗賊の様な忍達が、何かの事情で館に護り手が父様ひとりしかいない日を狙って襲撃し母様を襲ったが、其をたったひとりで傷だらけで護りきった父様に、母様は惚れたそうだ。
その後、結婚し子を設けた今でも、新婚時代そのままに、父様も母様も毎日お互い愛し合う様な、いわゆるラブラブな夫婦である。
正直、私も、そんな大恋愛の末に結婚したいと思ってしまうのだ。
なのに。
父様方の沢山いる親戚筋の中で、幼少の頃から親しく一緒に遊んでいた男子達と、突然、許嫁の状態になり。
その上で、母様の兄一家(同じ郷の中に住んでる)の同年代の兄弟の、危機的状況を一家総出で助ける事になったり。
結構、歳を重ねるにつれ、この郷(村?)の闇を垣間見る機会が多くなり、私も身内以外の者(特に男性)への当たりがキツくなってしまうようになった。
これでは、大恋愛のだの字も見当たらない。
いや、家督を継ぐのには良い性格だと誉められても、女性としてはどうなのだという話なのだ。
なれば、いつか自分の伴侶を見つけるべく、こっそり修業の旅に出てみようかな?と思っていた矢先。
月影兄弟の事件が起きたのだった。
正直、あの優しい黒呼が黙って村を出るとは考えられなかったが、良く考えれば、少しブラコン気味な黒呼の事だ。
郷の掟により処分される白呼と共に命を絶つ道を選ぶかもしれない、と思って、追手は私が立候補し(有無を言わせずに郷長に認めさせた)、黒呼の足取りを追ってみたのだが。
あいつは、私よりも先に、大恋愛真っ只中な感じだったのだ!
そりゃあ、私も母様から、黒き翼の神の話は聴いた事があるし、それに対しての月影一族の忠誠の高さとかは理解できる。
しかし、しかしだ。
あの黒呼の表情は、恋する乙女そのものではないか!
しかも、何だか三歩後ろを付いてくるような、新妻のような雰囲気も讓し出しておる!!
ーーー実にうらやま・・・・不愉快!!
と、いうわけで斬りかかったものの、色々とあって、今のこの状態に落ち着いている、という訳なのだ。
それに。
私の許嫁共も、昔と変わらずに私の側にいたいと、郷を捨ててまで私を選んでくれた、というのも悪くはないな、なんて思ってしまっている。
少し暴走気味な所と、少し独占欲が強いのは、昔から変わらずだが、この二人から好かれるのは嫌ではないと・・・むしろ、心地良いと思ってしまっているのは事実だ。
先日、久しぶりの真剣な戦闘姿を見て、体格もしっかりしてとても漢らしくなったな、格好良くなったではないか、なんて心が昂ったり。
私の手料理を幸せそうな表情で「美味い」と言いながら食べる様を見せられては、此方も心が絆されるというものだ。
つい、柄にもなく、苦手な魔術式を白い翼の妹から学んで、使えるようになってしまったではないか。
その時二人が見せた、少しばつの悪そうな表情も、
「お前達が怪我するから、心配で学んだ」と言って回復している間の嬉しそうな表情も、
いちいち男前で心がトキメくから、最近は其が悩みとなっていたりする。
やはり、私も、あの二人を・・・?
そんな想いを抱えつつ、騒がしい日々を過ごす中、ついに琥珀からも
「ママ、ととさまたちと、けっこんしないの?」
と聴かれて、その時本気で私は動揺してしまった。
そして、運が悪い事に、その様を迦蓮にも塞呼にも見られてしまい、嬉しそうに微笑まれてすごく恥ずかしい思いをさせられたけれど。
でも、その前に、父様や母様と同じく、一つ一つきちんと手順を踏んで、恋愛をしたいのだ!私は!!
それをあの二人が知って、実際に行動を起こされたら。
きっと、私は断る事は出来ないのだろうな。
少し、諦めにも似た心境で、今日も私は二人が館へと帰って来るのを、軽食を用意しながら待つのだった。
正直、月呼の相手は、物語を作った当時から本当にスパダリ要素満載でした。
イメージは・・・ジェネレーションギャップがあるため書けません。




