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六十九:原種の小国

 


「あああ!クロム、何故キミは僕を選んでくれないんだ!!

 昔から、キミに求婚し続けたし、ずっと愛し続けてきたのは、僕だけなはず!!

 今日の美しくも破廉恥なその格好も、僕に会うために着てきてくれたのだろう?

 なのに、何故、そのような者の隣で、幸せそうにしているのだ!?

 僕のように優秀な血統こそが、龍たるキミの番となるに相応しいはずだっ!!

 そうだろう!?クロム!!?」



 うわ~・・・・・


 一つの町のギルド長たる者が、跪いてそこまで号泣してダダ捏ねる?


 ちょっとドン引きしながらも、さてどうすべかと思い、クロムの表情を伺えば。



「・・・・・。」


 とーっても冷酷な表情で、お相手を見下しておりました!!


「ク・・・クロムさん?どーした・・」

「はぁ~・・・本当に昔からウッザイ!!」


 恐る恐る話しかけてみたら、猛烈に冷酷な声色で、相手にいい放つクロム。怖!!!


 そのまま、ショックで顔を上げたギルド長に、さらに追撃が加わった。


「本当、ウザイよ、君。

 僕が誰と番おうとも、それは僕の意思であり、君には一切関係ないはずだよ?

 それに、僕は自分の意思で選んだフミエの嫁になるって決まってるんだから、そーいう横恋慕は迷惑なんだよね?

 あと、僕は仕事をしにここへ来たんだから、公私混同はやめてくれない?

 これ以上仕事の邪魔するなら、他国のギルド長達に報告する事になるよ?

 わかったら、さっさと仕事してくれる?」


 おう。容赦ないなークロムさん。


 アタシは歩を進めるクロムと共に、ギルド長をスルーして、奥のカウンターでクロムが仕事をこなしていくのを見守る事になった。


 途中で我に返った黒呼と白呼くんも加わり、この町のギルドカウンターのお姉さん達と、色々な遣り取りをして仕事をこなしていく。


 ああ、これは何時もの事なのか。

 手慣れた様子で、長を助けもしないギルド職員達に、少しばかり同情してしまった。


 それから、ギルド長は傷心過ぎたのか、ショックで跪いたまま、空を仰ぎ続けていた。




 しばらくして。


 そろそろ3人の仕事も終わるかな?という時。


 ギルドに戦士・傭兵のパーティが入ってきた。


 そして、カウンター内部で仕事をこなしているクロムと黒呼を見た瞬間、顔つきがとても下卑たものに変わる。


 これはーーー。


 そのまま一直線にクロムの前へ行き、カウンター越しに、その野郎共は話しかけた。


「よう、久しぶりだなぁ、クロムちゃん?

 今日はまた、とーってもヤラしい格好して、皆に輪姦(マワ)されに来たのかい?」

「こっちの別嬪さんも、昔見た事あるなあ。

 あの時、アンタの腰を掴んで、思い切り哭かせてえって思ったんだよなあ。

 どうだい、今夜とってもいい思いさせてやろうか?」


 ゲラゲラと、不愉快な声で、態度で、クロムと黒呼に触れようとしている。




 あ。



 ダメだこいつら。



 目の前が、何だか紅く染まっていくーーーー




「姉さまっ!?」



 ーーーーードォォォン!!!







 激しい爆発音と、黒煙。



 ギルド入口のドアを貫通し、正面の大通り迄吹き飛ばされた、ならず者達と巻添えのギルド長。


 そしてーーー




「お前ら・・・さっきから聞いてれば、オレの嫁達に好き勝手言いやがって・・・

 ・・・ 消 し て や ろ う か ?」



 魔力全開放、頭に鬼の角を生やしたまま、アタシは完全に頭に血が昇った状態で、ゆっくりとギルド内を外へ向かって歩いていく。



「姉さま、ダメぇぇぇー!!!」



 が、突如として、その歩みは飛び込んで抱きついて来たメシアに阻まれ、そこで立ち止まる羽目になった。


「姉さま、激怒してるのはわかるけど、これ以上はダメぇ!

 何より、怒り過ぎて一人称がオレになっちゃってるわ!すっごく格好良い!昔と同じっ!!

 でも、落ち着いて、メシア達をギュってして、それで元の姉さまに戻ってぇ!!」

「・・・・メシア。」

「確かに、今の姉さまは惚れ直すくらい格好良いし、久々のオレ呼びにすっごく萌えちゃったけれど!

 でも、まだクロムくん達も仕事終わってないから、とぉぉっっっても残念だけど、元に戻ってぇ!!

 おうちに帰ったら、また格好良い姉さまに戻ってくれたら、メシアすっごく嬉しいっ!!!」

「・・・・・っはぁ~・・・。」



 流石、メシアクオリティ。


 言ってる事を聞いて理解した途端、何だか怒りが、何処かへ行ってしまった。


 脱力した途端に消えた角の跡地を、メシアが猛烈に撫でてくる。


 それをそのままやらせつつ、チラリと見た外の風景から察するに、ぶっ飛ばした奴らは外で気絶しているだけな模様だ。


 アタシは、もう一つ、深く、深~くため息を着いて、ギルドの扉を修復し、カウンターへとそのまま戻ってきた。


 カウンターの側では、よっすぃ~が良い笑顔でサムズアップしている。





 も~、なんか、一気に疲れた。


 そのまま背中をカウンターに預けて、腕輪から作り置きのアイスティーとコーヒーを出して、メシアとよっすぃ~にアイスティーを渡す。


 で、アタシ自身はセエレと共にコーヒーを飲んで、とりあえず一息着いた。


 あ。そーいえば。



 アタシはくるりと反転し、カウンター内を確認すると。


「うわあ・・・。」


 クロムと黒呼が、うっとりと此方を見つめ、白呼くんはサムズアップし、他の職員さんはオロオロしている。


「え~と・・・色々お騒がせして申し訳ないです。皆のお仕事が終わり次第出ていくので、堪忍してくだされ。」


 アタシは職員さん達に謝ると、苦笑いで返礼されてしまった。

 ああ・・・ご迷惑かけてしまったなぁ。


「ふふ、いつもはああいう輩、僕が自分でぶっ飛ばしてたから、何だか今日は心が軽いなぁ。

 むしろ、なんだか旦那さまがフミエで、自慢したい気分だよ?」

「確かに。とても嬉しかった。ありがとう、フミエ。」


 クロムと黒呼も、ニコニコ笑って仕事の続きを進め始めた。


 いや、普通に我慢ならなくてぶっ飛ばしただけなんだけどなぁ。

 あんな心根が汚い輩に、大好きな人が触れられるのが、嫌なだけだったんだ。

 これも、焼きもちの一種なのかな?


 悶々と自省していたら、あっという間に三人は仕事を終わらせたらしく、再び職員さん達にお詫びして、アタシ達はギルドを後にした。




 外では、未だ野郎共が気絶したまま放置されている。

 それを助ける者もおらず、ただただ呆れたような視線で、町人から見下されている状態だ。


 あれか、弱肉強食的な、戦闘民族らしい考えからくる、放置状態なのかな?


 そう考えていた時、メシアが野郎共に近寄り、回復魔術をかけてあげてから一声。


「メシア達はみんな、姉さまの奥さんなの!

 姉さまは焼きもちやきだから、もう、こーいうことしちゃダメよ?じゃあねっ!」


 そう言って、此方へと戻ってきた。


 ああ、本当にメシアはフォローが上手いなあ。

 手を煩わせちゃったから、今度メシアにご褒美あげないとなぁ。なんて思ってふと見やれば。


 駆け寄ってくるメシアの背後では、何故か野郎共が手を組み合わせ、尊いものを見るかのようにメシアに祈りを捧げていた。


 まったく。


 結構、この町はなんだかイライラさせられるぞ、と。


 少し浮かない気分で、今度はアタシの仕事をこなすために、空から見た目的地の洋館へと足を進める事になった。



 途中で、気分転換を兼ねて、少し時間があるからと商店に入り、必要なものや珍しい食材などを確保し、目的地へ向かう。


 大きな洋館・・・屋敷?を外から見るに、どうやら誰も住んではいないみたいだ。



「フミエ、ここが目的地なのかな?」


 クロムがそう問うので、それに是と答えれば。


「ここは、屋敷の方は今は誰も入れないんだ。

 たけど、裏にある聖堂だったら、僕の権限で入れるはずだよ?」

「そっか、助かるよクロム。お願いしてもいいかな?」

「うん、任せて!!」


 ニコニコしながら先導するクロムと共に、アタシ達は門番の許可を得て、とても静かな大聖堂に侵入した。


 天窓から注ぐ光が、正面の像に降り注ぎ、とても神々しく彩られている。



「ここにも、これが・・・?」


 アタシは、正面の像を見て、少し首をかしげた。


「・・・あの国と同じ、ご主人様と、メシアさん、ですね。」


 セエレが言うように、この、厳重に守られている聖堂にも、あの変な像が安置されていたのだ。


「この聖堂は、本当に大昔、奉られていた有翼の女神へ祈りを捧げるために作られたんだって。

 でも、それも、ものすごい大戦がこの国全土で起きて、それで、奉る人がとても少なくなってしまったんだって。

 でも、そんな大昔からある建造物だから、今は国に保護されて、一般公開はされていないんだ。

 それに、信奉していた人たちも、今は別の土地に移ってしまったみたいで・・・。」


 クロムがこの場所の説明を続けてくれているが、アタシは内心、別な事を考えていた。




 どうしよう?


 いや、やるなら今、ここでの方がいい。


 その後で、しっかりと仕事すれば、問題はないだろう。



 そう、決めてから、結構高くなっている壇上の像の側まで、皆で移動するのだった。






雄が多い国のため、牝の取り合いは日常茶飯事な模様です。



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