六十八:親
全員で美味しく朝飯を食べた後、アタシ達はそのままスフィレから事情聴取する事になった。
「スフィレ、君は前世からの···つまり、龍の國の皇后であった頃の記憶は継いでるって事で、間違いないの?」
「うん、パパ、そうなの。そこの、あうぃんと、ふうふだったの。さいごは、あうぃんをてきからまもるために、わざとふういんしたけどね。」
「うん、じゃあさ、その時の事とか、時代背景とか詳しく教えてくれるかな?」
「パパ、わかったわ。えっとねーーーー」
スフィレから聞いた内容をまとめると。
その時代、龍の國は基本、他の民族とはあまり交易などせずに、一つの国家として確立されていた。
しかし、下界の他の民族からは、交われば生まれる子は強くなると言うことで、龍の國へ嫁探しに来る者も多かったらしい。
しかし、そこは龍。
弱いやつは歯牙にもかけないため、同族結婚が圧倒的に多かったそうだ。
そんな中、下界からとある魔術師が素材集めと研究の為にこの國を訪れる。
しばらく滞在する中で、色々なロマンスがありつつも、その魔術師と独りぼっちで寂しそうな龍の皇子が出逢い、恋に落ちた。
しかし、魔術師は元々の下界でもとても人気があり求婚される事が多い人間だった為、相当結婚まで辿り着く迄に苦労が多かったらしい。
そして。
結婚してしばらく、ようやく魔術師の研究が完成し、しかも出産も重なって幸せの真っ只中なとき。
下界から、攻め込まれたのだ。
ただ、単なる攻め込みではなく、周辺諸国全てが一丸となって略奪しようと動く様は、流石に強力無比な龍種とて、蟻に集られる蜥蜴の如く飲み込まれていくであろうと予想がつく程で。
そんな下界の者の目的は、黄金龍やこの國の龍種の捕獲であり、魔術師が完成させた術式の奪取、そして、魔術師自身の略奪だった。
魔術師はそれをいち早く察知し、龍の民を転移陣を使い逃し、どうしても説得を聞き入れなかった忠実すぎる龍族の兵士に時間を稼いでもらい、
先ず卵の状態の我が子を昔からの付き合いの側近一人に託し逃がせ、そして次に皇であり國で一番強力な自らの夫を地下に封印し何者にも触れられない様に最大級の結界を貼り、そして残りの力で自分の研究の全てを焼き払った後に、研究の成果であり、今で言う禁術の龍種転生術を自分にかけて、あとは残る側近に命じてその卵と手紙を隠蔽の魔術式のかかる箱に入れて隠して貰っていた。
そして、どうやら兵士も部下も側近も、忠実に大義を果たして、龍の國は滅亡した。
全てが炎に包まれ、下界の軍も撤退を余儀なくされ、後に残るは全てが灰になった國だけとなったそうだ。
そして、スフィレ自身も永きに渡り眠り続け、そして、やっとこうして復活を果たしたというのだ。
「だから、あまりせつめいできずに、いきなりふういんしてごめんね、あうぃん。」
ペコリと頭を下げるスフィレを、アウィンは愛おしそうに抱きしめた。
「そんなのは、良いのじゃ。むしろ、我もそのような事態になっているとは察知できずに苦労をかけてしまった。すまない、スフィレ。」
「あうぃんが、ぶじで、よかった。」
抱きしめ合う二人。
それに水を差すようで申し訳ないけれどーーー
「なあ、スフィレ。君たちの卵を託した側近の名前は、何と言うんだい?」
アタシは率直に感じた事を問う。
アタシの予想が正しければ、全てが繋がるはずだ。
「ええっとーーーーーーばいおれーん。
ばいおれーん·だいおぷさいと、だったはずよ?」
その名前を聴いた瞬間、クロムが驚愕の表情になる。ああ、やっぱり。
「それ、僕を育ててくれた、商人の名前だ····。」
「···やはり、そうだったのか。義母上は、我らの子、最後の龍皇だったか···。」
「ええっ!?ママが、あのこだったの!?」
やっぱり、スフィレとアウィンの子供がクロムで、クロムの育ての親がスフィレの知り合いだった(側近だったけど)。
呆然とアウィン達を見つめるクロムを抱きしめて、アタシ思った事を伝えた。
「龍の國で、感じたんだ。アウィンはクロムにすごく似てるし、そもそも偶々手に入れた卵も、こんなにも一気にアタシ達の魔力を吸えるものなのかなって。
あれは、実際に血縁のある親と卵だったらできるレベルの量を吸い上げていたから、何だか変だと思って、もしかしたらって考えていたんだけど・・・当たっちゃった。」
「あの・・・フミエ・・・僕、どうしたら・・・?」
少し震えながら、様々な感情が入り混じった表情で見上げるクロムに、ひとつキスをして抱きしめた。
「クロムがいたから、スフィレが無事に生まれた。だから、クロムはスフィレのママなんだよ?その事実は変わらない。」
「う、うん···。」
「だから、堂々とママであればいい。」
「うん···。」
「それに、クロムはアタシの嫁になるんだから家族の単位がいずれ違くなるわけで、アウィンの事は娘の番だと思って接して行けば良いし、逆にクロムが知らない事を教えてもらったりして、交流を図っていけばいいんじゃない?ねえ、アウィン??」
ちらっとアウィンに話を振ってみれば。
「そうだとも。義母上は確かに我らの子ではあるが、既に皇國は滅び、最後の皇となる義母上も今や一個人。そして自由に第二の人生を歩むスフィレの母だ。我はスフィレの夫故、これからも義母上は義母上と呼ばせて貰うぞ?」
「そうね、たしかにわたしのママだもの。ママってよんじゃあ、だめかなぁ?」
アウィンとスフィレから言われて、少し複雑な表情を浮かべたまま、クロムは頷いた。
「うん、わかった。じゃあ、僕は今まで通りスフィレの母親として生活していくよ。
まだ、ちょっと複雑だけれど、これから僕もフミエとの子供も設けるだろうし、その方が良いと思う。」
「わあ!ありがとう、ママ!!」
とても嬉しそうなアウィンとスフィレを見て、クロムも仕方ないなぁって顔で見つめていた。
いや、本当はご両親がいる場合、息子さんを下さいってやらなきゃいけないのかな、とか一瞬頭を過ぎったのは事実なんだけど。
でもそうすると、クロムも更に混乱するかなって思って、それなら、ママである状態のままの方が、クロムの気持ちが安定するかなと感じたんだよね。
それに、アウィンとスフィレが夫婦になったら、家族の単位が切り離されるのは事実だし。
とりあえず、クロムの出生に関してわかった事が、一番の収穫だったのには変わりない。
アタシはクロムを抱き締めつつ、話題を今日行く場所の事について切り替えていった。
今日行く小さな町。
ここは、黒呼もクロムも苦手とする町だそうだ。
よく聴いてみると、どうやら女性が圧倒的に足りない町らしく。
行くと昔から求愛がうるさ過ぎて面倒くさい、果てはなまじ強力な種族が多いからか実力行使しようとする奴も多くて、本当に嫌な町なんだそうだ。
ーーーそれを聴いた瞬間に決めたね。
嫁には一人一体アタシの分身体を配属しようって。
しかも、隠すことなく魔力を巻き散らそうって思った。
何なら、最初からブチ切れ鬼モードで行っても良いくらいなんだけれど、流石にそれは止めてって言われたから、自重する事にしよう。
ただ、今日行くメンバーにはアウィンとスフィレは外すことにした。
せっかく再開出来たし、何より積もる話もあるだろうから、龍の交流デーとして仲良くやって貰った方が効率が良い。
それで話はまとまり、アタシ達は出発する事にした。
結構、かーなーり、懸念要素満載な町に行くことになるからか、出発前から一人一体側につけて、転移陣でとりあえず、突貫工事した元龍の國近くの洋館へと移動する。
体質のせいもあるからか、よっすぃ~の鬼気もとんでもなく、白呼君を護る王子様みたいになっている。
外に出て、とりあえずセエレに翔馬を出してもらい、その翔馬にはよっすぃ~&白呼くんが乗り、他のメンバーはアタシと分身体がお姫様抱っこで抱えて、空から小さな町へお邪魔する事にした。
洋館から空を翔ぶ事10分少々で、その目的の町に到着した。
空から見る限り、修復先は少ししかなさそうだ。これなら今日中に終わるな。
町の入口で降りて、後はそのまま殺気を放ちながら歩き、その町のギルドへと到着した。
町を歩いてる最中、クロムを知る人間がにやけた笑みを浮かべていたが、アタシと目が合った途端逃げ出していく。
なんだってんだ、コノヤロウ。
なお、町に入ってからずっと、アタシと分身体は各々、対となる相手の腰に腕を廻したまま歩いている。
よっすぃ~も、人目を憚らず、白呼くんを抱き寄せて歩いていて、マジ王子様みたいだった。
で、だ。
この小さな町のギルドに入って、そこのギルド長らしき男がアタシ達の目の前にやってきた途端。
正確には、身を寄せ合うアタシとクロムを目撃した途端。
その場で膝をついて、号泣し始めてしまったのだった・・・・。
クロムを狙う雄は、とっても多いのです。
より優秀な子を遺したいのは、雄も牝も共通な模様。




