六十一:失われた都市
翌朝。
サクッと出かける支度をし、アタシたちは一度、町のギルドへ立ち寄った。
クロム・黒呼・白呼くんで原種が多く住む戦闘民族の国宛の仕事を全て手続きして持ってくる為だ。
一瞬カウンターがバタバタしたものの、手際よくつつがなく仕事を持って、3人が戻ってきた。
もちろん、それと同時に出張申請とかもこなしてきて、ギルド長と補佐が大手を振って一緒に行けるようにしたのは言うまでもない。
「あ、そういえば、フミエたちには指定任務で僕たちの護衛を依頼した事になってるから、よろしくね?」
とクロムが言っていたので、私達もやらねばならないクエストの点数稼ぎにおいても、バッチリな仕様だった。
そしてアタシたちはクロムの家の転移陣から、次の国へ行く為に転移先を探し、とりあえずアタシ一人で先に向かったんだけれど。
「なんだこりゃ・・・?」
転移先は、朽ちた城の内部?のような、人気の一切ない場所で。
割れた大きい窓からは、ここが森の中だと伺わせるような、どこまでも続く緑が見て取れた。
ま、ここでウダウダやってもしょうがない。
アタシは消えかけた転移陣を読み取り修復させ、とりあえずここにもAIを設置した。
そして、ゲートを開いて全員を無事に転移させだのだが。
「わぁ・・・ここ、綺麗に直したら、まだまだ住めるわよねぇ?」
「そうですね・・・何だか懐かしい感じがしますねぇ。」
メシアとセエレが乙女トークしながら、様子見で椅子や机に覚えたての修復をしていく。
よっすぃ~は白呼くんと出窓から四方を見て、どこら辺にアタシ達がいるのか、地図で確認している。
ただ、すぐにはわからないらしく、頻りに首を傾げているみたいだ。
で、クロムは・・・
「ん?・・・クロム?どうかした??」
「え、いや・・・何だかここ、凄く見たことある場所だなぁって思って。多分、勘違いだと思うけど。」
そういって不思議そうに首を傾げていた。
確かに、クロムの存在がここの雰囲気に馴染みまくってるのは否めない、というか、むしろこの場所を全て元の姿に修復したら、滅茶苦茶風景にフィットするんだろうな。
うーん、何て言うか、ここ、打ち捨てられた王都みたいな、現世でいうマヤ・アステカ文明とかクメール文明やらが色々混ざってる感じの、ちょっぴりエキゾチックな雰囲気漂う場所なんだよね。
・・・多分、この都市には、もう誰もいないだろうから、大規模に修復&強化しちゃおうかな?
誰も使わずに棄てられてるなら、勝手に直してしばらくお借りしちゃってもいいよね?
色々探索する皆にこのままここにいるよう伝え、アタシは出窓から外へ飛び、上空からこの場所を確認する。
それで解ったのだが。
この都市、空中都市みたいになっているんだよ!
現世で言う、メテオラの修道院の一都市バージョン!!
周囲を森で囲まれてるから、中からじゃそりゃあそんなのわからないよね!?
っていうか、下界と繋がる道すら見当たらないんだけど!?
そりゃ、誰も来ないわ!!いや、有翼人種なら来れるのかな!?
アタシはとりあえず納得し、上空からエリア一帯に、全力全開最大規模で逆行修復をかけ(勿論仲間には保護バリア展開したよ?)、ついでに断崖絶壁の強化と結界を張り、下界の麓から何者も侵入出来ないようにした。
いや、下界から見て、夜とかに灯りが着いてるのを見つけて、危険を犯してまで見廻りに来させるのも、申し訳ないじゃない?
その上で、結界にど○でもドアを作って、みんなのいる城の広間へ戻ってみる。
・・・・うわぉ、内装、超きらびやか~!
「姉さま!何だか一気にすごいことになったのだけど、何があったのかしら!?」
「いやあ、実はさ~・・・」
外から見た光景等をみんなに説明してみたら。
「だから、さっき窓から見て周囲の様子がわからなかったんだ!?」
と白呼くんが納得し、よっすぃ~が同調して頷いていた。
メシアとセエレは、再生されたフカフカのソファでキャっキャしてるし、黒呼は内装が眩しいのかアタシにくっついて顔を伏せている。
そしてクロムは。
「なんで・・・?」
「クロム?どうしたの??」
「どうしよう、フミエ・・・僕、ここ、知ってる・・・ここ、大昔に消えた龍人の國だったハズなんだよ。」
「ええ!?」
「僕、僕・・・一度も来たことないのに、何で知ってるの!?わけわかんない!!」
そういって、混乱したクロムが泣き出した。
アタシは直ぐに抱き寄せて、とりあえず落ち着くまで優しく頭を撫でてあげた。
これ、ってさ。
何となく、アタシにも経験がある事だから、おいそれと言えないけれどさ。
突然泣き出したクロムを心配して、メシアやセエレも集まってきて、思う事を話しだす。
「クロムくん、それって、メシアや姉さまと同じように、前世とか、それ以前の記憶なんじゃないかしら?」
「・・・え?」
少ししゃくりあげながら、驚いたようにクロムが顔を上げた。
「多分、そのようなものだと思いますよ?
過去の生の記憶を思い出したり、覚えたまま産まれて来る者は、やはり何処でもいるものです。
魔界ですらも、結構な人数おりましたし、心配しなくても大丈夫ですよ?」
「僕・・・変じゃないの?」
少し安心したかのように、セエレにクロムは聞いた。
いや、それいったら、アタシ達の立つ瀬がねぇっしょ!?
「大丈夫ですよ?よくある事です。」
「それが変なら、メシアと姉さまはどうなるのかしら、うふふ」
「確かに、アタシとメシアはとんでもない回数、不安定なまま転生しまくってたみたいだからなぁ。
魂や記憶が安定したのはここ最近みたいだけどさ?」
「そうなんだ・・・よ、良かったぁ~!」
皆で励ましたら、やっとクロムが安心したみたいだ。
とりあえずいきなりではあるが、これからどうするか、もう一度落ち着いて考える為に皆で円卓に座り、ティーセットを取り出して珈琲と紅茶を淹れ、渡した。
うん、あの町のカフェの珈琲、やっぱり美味いな!!
皆で一服している間に、アタシは覚えてる限りでこの土地の立地をクロムから聴いて、紙に地図を描く。
ーーーおや?今いるこの城だけでも結構広いぞ!?
まるで西洋の城のような見取り図が完成し、それを人数分増やして配布した。
外側のエリアは、また後で詳しく聴いてから渡す事にしよう。
とりあえずは、っと。
「ふむ・・・どうすべか。とりあえず一部屋ずつ見ていく?」
「そうですね・・・この場所にも転移陣があるのなら、ここに居た者もまだ中にいるのかもしれません。
それならば、反魂の術を用いて一度話を伺うのも一興でしょうね。」
セエレが自分の地図に何かを記入しながら言う。
其に対して、メシアと黒呼が口を開いた。
「だけど、それだと時間かかっちゃうかしら?
ギルドのお仕事もあるんでしょう?何時までに探索が終われば間に合うのかしら??」
「ああ、これは心配ない。むしろ全部終わらせる迄は帰らなくていいレベルだ。
何なら俺と白呼で残って依頼をこなしても問題ない。」
メシアが言うように、時間かかりそうなんだよなぁ。
まあ、最悪アタシも黒呼に付き合って居残りしてなるべく早く終わらせるのもアリかぁ。
チラリとクロムを見やれば。
「僕・・・、僕は一度、この場所をしっかり確認したい。
私事ではあるけれど、皆に付き合って貰えると嬉しいんだけど、ダメかなぁ?」
クロムが皆にそう言い、アタシはみんなを見渡す。
ーーーうん、これは皆の意見、一緒だな。
「わかった。じゃあ、今日1日はこの城を探検して、明日からの事は夜に話そう?
もしかしたら、何らかの問題も出てくるかもだし、街の方にも行かなきゃいけなくなるかもだし?」
「わあ!姉さまにメシアも賛成~!!」
「ええ、私も賛成です。少し気になる事もありますし、ね?」
アタシがそう言うと、皆、口々に賛成を口にした。
クロムは嬉しそうに、
「みんな、ありがとう!!」
と言って笑っていた。
まあ、さっきのセエレじゃないけれど、さ。
アタシも、この場所が気になって気になって仕方ないんだよね。
何て言うか、魔物?魔族??とかの強い気配が、修復してから凄くするんだ。
・・・・しかも、多分これ、地下から。
正直、そのまま放置したら確実にヤバいレベルの何かがいるのは、皆には言わないでおこう。
深夜にでも、そっと処理しとけば、まぁ大丈夫だよ、ね?
そんな事を考えながら、アタシはティーセットを片付けて、クロムたちと共に城内の探索へ行くのだった。
まず、近場の執務室やら何やらと、お仕事関係をやっていたであろうエリアを探索し、広大な会議室を抜けて更に奥へ向かうと。
そこには、結構神々しい玉座の間があった。
そして、ひとつだけ、朽ちた遺体も。
その姿は、骨になっているとはいえ、とても凄惨なもので。
再生魔術で復活しないって事は、既にその魂が何処かに行ったか転生してるって事で。
多分、反魂魔術やっても、元に戻らないと感じられた。
アタシは、それ以上風化しないように、結界を張ってあげた。
もしかしたら、万が一だけど例の反魂魔術で元に戻せるかもしれないけれど、とりあえず一旦保留!!
アタシたちはそっと玉座を出て、更に奥へと向かって行った。
玉座から奥のエリアは、王族の居住エリアだったみたいで、そこかしこに騎士の出で立ちの骸が転がっていた。
一部屋ずつ、骸をそっと脇に寄せながら確認し、生存者がいないか、とか、一体何が起きたのか、とかの記録がないか見ていった。
そして、そのエリアの奥まった場所にある、小さめな小部屋で。
「あれ・・・?僕、ここ知ってる。ここ、まだ卵の状態の子供を育てる部屋だよ。」
クロムがそう言い、何かを思いだそうと考えの渦に集中し始めた時。
「ご主人様・・・これは、とんでもない物ですよ?」
隣の部屋を覗いていたセエレが、クローゼットから一着の服を持って来た。
確かに、すんごく上質な生地で出来ている。
とりあえずトトの魔眼で判別すると。
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龍舞の衣 (ランク:伝説級)
防御:∞ up
魅力:最大レベルup
魅了:無効・反射洗脳
古代龍族の王族が着ていた衣服。
あらゆる攻撃を受け付けず、万民に愛された者(主に王妃)が所持していた。
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うん、ザックリ見てもすげー性能。
デザインは、すっごくクロムに似合うような、オリエンタルな感じだ。
・・・よし。
アタシは思考の海真っ只中のクロムを呼ぶ。
「クロム?ちょっとコレ着てみて??」
「え・・・?・・・うん、わかった、着てくる。」
未だぼんやりとしながら、クロムが衣装を受け取り、隣の部屋に入った。
しばらくして。
「ええええ!?」
クロムの驚愕の声が、隣から響いたのだった。
クロムは、思い出される過去のぼんやりとした記憶と戦っているため、よく見ずに衣装を受け取って少し後悔した模様。




