五十八:聖都③
「・・・なんと、セエレはその様な恵まれた場所で、生活を営んでおるのか。」
あれから、今のウチの現状やセエレがどれくらい楽しく生活してるかを、かいつまんで説明したら、オロバスは元の凛々しい感じに戻っていった。
流石に、突然ウチに遊びにおいでよ!って言ったときは、キョトーン、としていたけれどさ。
「まあ、オロバス、貴方も昔と変わらず、日々を忙しく過ごしているのでしょう?
時々は息抜きで温泉に浸かるのも、悪くはないと思いますよ?」
「フム・・・行くとなれば、他の同輩も行くと言うかもしれんが、共に行っても良いのか?」
「・・・宿は完全予約制なので、事前に誰が来るのか知らせて頂ければ、問題はないです。
あとは、食べられないものやアレルギーがあるものなど、事前に伺わせて頂いてます。」
いつの間にか支配人モードになったセエレと、来る気満々なオロバスの会話に、また宿の準備しなきゃなーなんて考えつつ、アタシはオロバスに通信の腕輪を渡す。
「これ、魔力を通すと通信できるんだ。だから来る時は事前にアタシかセエレに連絡してくださいね?
そしたら、オロバスさんが来た場所の転移陣まで迎えに行きますから。」
「左様か。それはありがたい。
むしろ、地上の陣の修復が終わったら、魔の國の転移陣も修復して頂けないだろうか?」
「うん、オッケ「それは構いませんが、國の規模により対価をいただきますよ?」
二ッコニコな商人セエレが間に入って、現在の事業の詳細な対価などをオロバスに話し、オロバスも統治者モードで商談し始めた。
うむ、こうなったらあとは、セエレにお任せで大丈夫だねー。
アタシは、メシアやよっすぃ~と、二人の商談が終わる迄、転移所の内装についてや、今夜の晩飯の事など色々話しつつ待つ事にした。
なお、今日の晩ご飯は、聖職者が多い都のためか豆腐に似た食材や小麦粉、新鮮な野菜が多く手に入ったため、和食メインの食事にする予定である。
あ、あと、何故か枝豆の種もゲットできたから、帰ったら畑のラインナップに入れてもらわなきゃだな~。
「姉さま、そういえば、この国の転移陣はこれでおしまいなの?」
ぼんやり考えてたら、メシアから聴かれてハッとなる。
「あーーーーーううん、あとはこれから、空から見て怪しい所をピックアップして、片っ端から見に行って当たりなら直す、みたいな感じになるかなぁ。」
「えー!?それじゃあ、メシアも直せるように、今の内に陣形教えて!」
「あ、そっか、そうだよね。じゃあ、先ずーー」
突然ではあるが、メシアに再生魔術の応用と復元の陣を数種類教える事になり、その上で、メシアが更なる応用技を編み出して、とっても便利な道具を創る事に成功した。
と、そこまできて、どうやらセエレとオロバスの商談が終わったらしく、珍しそうにメシア開発の魔道具を二人で観察し始めた。
「おー、商談終わった~?」
「大変お待たせ致しました、ご主人様、皆様。
つつがなく、今後の話し合いは締結致しました。」
「フミエの協力、誠に感謝する。
・・・ところで、これは一体どういう道具なのだ?」
二人が観察しているのは、魔方陣の刻まれたメダルのネックレスだ。
「んーとね、じゃあ、よっすぃ~はこれかけて、向こうまで行ってね?」
ひとつ頷いて、よっすぃ~はネックレスのひとつを身に付けて、部屋の端まで行く。
その後、通信機伝で魔力をメダルに流し込むと。
ーーーーヒュン!!
「「えっ!?」」
魔方陣からの光に包まれたよっすぃ~が、私の目の前に転移してきた!
「やった姉さま!大成功だわ!!」
「うん、これでネックレスを装備した人と、どんなに離れていても直ぐに側に飛べるな!」
よっすぃ~も、嬉しそうに頷いている。
「これは、本当に便利なモノですね。」
「誠に。」
「これがあれば、いつでもご主人様のお側に行けますね。ふふふ。」
うっとりセエレが何か呟いているが、このメダルは、正直龍の子供たちに装備させようと考えていたりするんだよなぁ。
防犯ベルみたいな感じでさ?
魔力が反応して危険色に光ったら、直ぐに大人が側へ飛ぶ!みたいに。
そーすれば、街へ連れて行ってひとりプチ旅させても大丈夫じゃない?
まあ、番同士で持つのも、悪くはない、か?
つい、よっすぃ~を見て、そんな事を考えてみたり。
まあ、よっすぃ~と白呼くんには、二人だけのお揃いのデザインで、メダル作ってあげようと思うけどね?
あとで、メシアにデザインの相談しよーっと!
そんな事を考えてたら。
「セエレの主は、いや、主とその一族は、何というか、とんでもない物をつくったり、仕出かしたりして、見ていて飽きないな。
・・・これからも、セエレをどうか宜しく頼む。」
ポツリとオロバスが、父親の如く羨ましそうに呟いた。
「「任せて!」」
アタシたちは声を揃えてオロバスに答えると、オロバスもふんわりと笑って、踵を返した。
「では、我は國へ帰る。こちらでも先ほどの件で話を通しておかねばなるまい。
また、時間が空いたら連絡する。」
「ふふ、お待ちしていますよ、オロバス。」
「アタシの方にも、何時でも暇になったら、通信してきて下さいね?」
「承知した。ではな。」
オロバスはそう言うと、転移陣で帰って行ってしまった。
どことなく、安心したかのようにセエレが微笑む。
「ご主人様、今回の件、本当にありがとうございます。
おかげでオロバスと、また昔のように付き合えそうです。」
「そっか、良かった。友達は大切だもんな。」
「ええ・・・ふふふ。」
少し嬉しそうに、セエレがアタシに抱き着いてきたので、アタシもセエレの頭を撫でてあげると。
「この御礼は、あとでたぁ~っぷり、身体でお支払い致しますね?」
「い・・・いいよ別に気にするな気にしないでクダサイ。」
「ふふふ、気にするどころか一生覚えていますので安心してくださいね?」
な~んか妖しい雰囲気のセエレに舌舐りされて、アタシは少し身の危険を感じるのだった。
で、その後。
アタシとよっすぃ~・メシアとセエレの二手に別れて、この聖都を上空高度1000m位から見下ろしてみたんだけど。
この都って、町自体が一種の魔方陣のようになっていて、それを連結させて、まるで生命の樹みたいな区画デザインで造られた都市だったんだよね。
その上で、中心部の自分達がいたエリアと、修復した魔方陣の場所から見て、規則的に不自然に、空いている場所が何ヵ所かあった。
アタシとメシアは手分けして、空からその場所に向かうと、正にビンゴ。
朽ち果てた石床の一部、とか、柱の根本位しか残ってなかったけれど、復元させてみると、そこは確かに転移陣のあった場所だった。
もちろん、この派出所みたいな転移陣にも、自立型AIを搭載させて、厳しく応対させることにする。
なお、メシアが作ったAIは、何故かオカンな感じの性格になっていたのは、ご愛敬だ。
それを繰り返して、最後の一ヶ所で全員合流し、メシアと一緒に建物を復元した。
「あー、もう夕暮れ過ぎて、外暗くなっちゃったなぁ~」
「そうねぇ。メシアも初めての作業だったから、時間かかっちゃったわね。
次からはもっと早く出来ると思うわ~。」
「よーし、それじゃあ中の陣直して、早く家に帰ろっか!」
そんな事を言いながら、最後の転移陣をメシアと二人で修復した。
そのときだった。
ーーーズ・・・ズズズ・・・!!
外から地鳴りが起き、復元した最後の転移陣がずっと光り続けたまま、『何か』がこの国で起きていた。
よっすぃ~が2階の窓へ走り、外を見て、あわててアタシ達を呼ぶ。
階段昇るのも億劫だったので、セエレとメシアを両脇に抱えて、窓へ飛んで見えたもの、それは。
「・・・結界?」
国を全て包むように、外郭から光のドームが造られ、守られていた。
外の街道に繋がる部分を見やれば、人一人すら立ち入る事が出来ない状態みたいだ。
・・・・あれ?これ、ヤバくね??
「おい、管理AI!!」
アタシは咄嗟に、生まれたてのAIを呼ぶ。
「ハァイ!呼ンダカシラ?パパ??」
「なんでオネェなんだよー!?」
「落ち着いて姉さま!!管理者さん、あの結界どうにかならないかしら?
外との行き来ができなくて、みんな困っているの!」
「アン、チョット待ッテテネン?」
少しして、結界の光が弱くなり、出力が超極小になったところで止まった。
それと共に、通れなかった街道が通常の様に戻り、人の流れも元に戻った。
「ママ、コレデドウカシラ??」
「ありがとう、多分これで大丈夫よ!」
「ウフフ、ヨカッタ!」
しばらくして、外の様子を観察していたよっすぃ~も、全方位通常営業になったとの事で戻ってきて、一息つく。
セエレだけ、まだ少し残る結界を忌々しげに見つめていたが。
「てかさ、何、この結界?これがあると、みんな迷惑なんじゃないの??」
「ソウデモナイノヨ、パパ?
コレガアレバ、悪・即・斬!ガデキチャウノ!
便利ヨネ~!」
「その悪って、魔族全般に対して言ってる?
重要なのは、種族関係なく悪い心持ってる奴を殲滅することじゃなくて??」
「エ・・・・ソウ言ワレレバ・・・確認スルワ!!」
新米オネェAIは、突然、他のAIと連絡を取って
一頻り騒いだ後、何かの作業・・プログラミング?を行った。
外の結界の色が、白から薄い青へと変化していく。
「おや、結界の性質が変化したみたいですね、ご主人様。
これならば、地の國の者も、此方へと遊びに来れますね。」
「あ、嫌な感じしなくなった?セエレ?」
「はい。ただ、何と言うか、正直あれに触れたくはありませんが。」
あー・・・セエレって結構黒いところあるからなぁ。
ん?時々一瞬赤く光る所があるぞ?あれ何だ??
「コレデドウカシラ!?パパ!!」
全速力で改変したからか、少し息切れしたオネェAIが戻ってきた。
「どんな結界に変えたの?」
「種族関係ナク、心ガ悪イ奴ニハ赤ク反応シテ、ソノ上デ罰トシテ、アタシノ愛ヲ込メタ全身マッサージヲ受ケテ貰ウノヨ!!」
「うわぁ・・・」
「罰ガ終ワル頃ニハ、昇天シスギテ真人間ニナッテイルワ!!」
「それは凄いわねぇ、ねぇ、姉さま?」
「・・・うわぁ。」
セエレの予感が大当りし、絶対に通りたくない場所になっちゃったよ。
正直、うわぁ・・・しか出てこない!!
まあ、とりあえずそうなったものは仕方ないので、この件と終了報告を兼ねて、アタシたちは一度聖堂へと戻る事にしたのだった。
聖都AI家族会議でも、オネェAIがとても強い模様。
オロバスは、結構な紳士でイケメンです。




