五十七:聖都②
町の中央から丁度、東西南北斜めへ走る8つの大通りの各突き当たりに、その小さな朽ち果てる寸前のあばら家たちはあった。
アタシは一つずつ、転移部屋へ向かう為の魔方陣を復元し、あばら家も元の館に戻し、ついでに入り口にAIを設置した。
今回は防犯対策も兼ねて、結構気性の荒めなAIにしてみた。
そして、AIの知識リンクを聖堂のものと同じにさせて、各々で情報交換出来るようにしてみた。
『ゴシュジン様、ワタシノナカニ、ハイリマスカ?』
「うん、みんな転送してくれるかな?」
『カシコマリマシタ。
黒キ神ノ名ノ元二、全テノ悪ニ、鉄槌ヲ!!』
AI君の掛け声と共に、アタシたちは転送陣のある部屋に転移する。
「つーか、その掛声、何処かの猟犬にしか聞こえないから、やめてー!!!」
「姉さま、落ち着いて!」
「まあ、ツッコミ処はありますが、この場所で悪さしようと思う者が激減するでしょうから、良いのではないですか?」
よっすぃ~も、セエレに同意らしく、頷いている。
アタシは気を取り直して、目の前の荒れ果てた転移陣に向き合う。
ーーーん?
あれ?この陣、何か、変だぞ?
アタシは陣形を空中に複写して、元の陣と見比べる。
陣中の文言の一部が、見たことない場所の表記があるのに気づき、もらった地図二つと見比べる。
ーーーない。
と、言うことは、この陣はある程度昔のままを留めたままバージョンアップしなきゃならない、ということだ。
アタシは少し陣をいじくって、その陣を新たに設置した。
すると。
設置した途端、陣が光出し、何者かが此方側へとやって来た。
その姿はーーーー異形。
いや、アタシも人の事言えない姿だけどね!?
でも、目の前に現れた青年は、ハッキリと魔族とか悪魔とか言われる姿で。
転移の光がなくなってから、ゆっくりと目を開いて、此方を見る。
おお、結構なイケメンだなぁ。
のんびりと、うっかりと、アタシと魔族の青年は見つめ合い、お互いを観察しあってしまった。
「ーーー少々よろしいでしょうか!?」
突然、割って入ったセエレに、アタシたちはハッとなる。
少しだけ、頬を膨らませたセエレがアタシの体に抱きついて、そのまま魔族を見据えた。
「お初にお目にかかります。私はセエレ。黒き翼のご主人様だけの、忠実なる部下であり、地獄の君主であり、王子です。」
すると、魔族の青年は少し狼狽えたようだった。
「あ、アタシはフミエ。セエレはこんな格好してるのは本人の趣味だから、気にしないでね?」
狼狽えながらも目線がセエレの絶対領域に行ってる魔族の青年に向かって言えば、青年はやっと此方を向いた。
あら、顔が少し赤いぞ?耐性ないのかな?チェリーボーイか?
そんな事を考えてたら、魔族の青年が口を開いた。
「わっ・・・私は、地底の魔の國から参りました、オロバス様の使い魔です。
古の魔方陣が地上で次々復活しているとの話を聞いて、魔の國と繋がる陣が復活したら、即座に調査するよう言われておりました。
せっ・・・セエレ様がこの件に関わっているならば、特に、問題は、ありません・・・よね?」
おや、セエレ絡みの案件だったのか?
ちらりとセエレを見て、アタシは驚いた。
あの、セエレが。
顔を真っ青にして固まっている!!
「セエレ、大丈夫か・・・?」
「いっ、いえ、だ、大丈夫です!ご主人様!!
・・・そこの貴方。オロバスには、セエレは健勝であり、セエレの現在の主たる者が、古の陣をきちんと昔以上にパワーアップさせて修復しているとだけ、伝えるように!!
私の風貌に関しては、固く口外してはならぬ!良いな!?」
「はっ、ハイ!承知致しました、セエレ様!!それでは、私はこれにて失礼致します!!」
セエレの物凄い剣幕に、使い魔の魔族の青年は、慌てて元来た陣に飛び乗り、帰還していった。
アタシは、部屋の修復と調整をかけつつ、未だにしがみついて離れないセエレの頭を撫でて、落ち着かせてみる。
しばらくアタシとメシアがセエレの側に寄り添って、ギュっとしてあげていると、ようやっとで、セエレの体から力が抜けていった。
「セエレくん、さっきの使い魔さんの主さんは、セエレくんのお知り合いなのよね?」
「・・・はい。親友とも言える、悪魔です。
ただ、彼はとても真面目な者なので、今の私の姿を見たら、きっと激昂するか軽蔑されるでしょう。」
「そう、すごく真面目さんな方なのね・・・」
少し落ち込んだように、セエレが言う。
「うーん、でもさ、セエレはその格好は好きで着てる訳だし、セエレの中身は昔と変わらないんでしょ?
だったら、外見に関しては、全てアタシの好みでアタシの希望だから着てる、って事にしちゃえばいいと思うよ。
実際、セエレにこの格好は似合ってるし、可愛いと思うし。」
「ごっ・・・ご主人様ぁぁ・・・」
ニッコリ笑ってセエレに告げたら、少し涙目のまま、セエレも笑ってくれた。
まあ、外見に関しては、嘘は言ってない。
下着の中身の仕様については、アタシはノータッチだけどな!!
とりあえず、サクサクと内装だけ整えて、昔よりも使い勝手の良いようにしてから、転移陣の部屋を出た。
外に出てから、AIに管理を任せ、あとは魔の國の人が来たらアタシに連絡した上で丁重におもてなしするように言い付けて、アタシたちは次のあばら家へと向かった。
東、西と同じように一件ずつ修復アップデートし、残りひとつの陣を修復したとき、それは起こった。
何だか地の國に繋がる陣と似てるな~とか思いつつ直していたんだけど。
修復アップデートが完了したと同時に、転移陣が強い光を発して。
中から、勇壮な魔族が飛び出してしてきたのだ。
そして、アタシの側に控えるセエレの姿を見た瞬間。
その魔族は、その場にへたりこんで、呆然とセエレの姿を見上げていた。
あ。
これは、このひとは、さっきのーーー
「オ、オロバス・・・」
「・・・・やはり、セエレ、お前、なのか?」
セエレが泣きそうになりながら、必死でオロバスを見つめる。
久しぶりの親友との邂逅、でも、この空気の重さったら!いたたまれないね!!
アタシはサクッと室内を修復し、セエレの側へ行って抱きしめた。
「ご、ご主人様・・・」
「落ち着いて?セエレは、今日もとても可愛くて素敵な、アタシのお嫁さん(候補)なんだから、そんな顔しないで?」
「嫁・・・私が、嫁・・・」
一言励ましてみたんだけど、意外とハマったらしく、セエレは何時ものうっとりとした表情になっていく。
チラリとオロバスを見ると、恋する乙女の様な表情のセエレに、かなりのショックを受けているみたいだった。
アタシはひとつ、セエレの額にキスを落としてから、そっとセエレから離れて、オロバスの目の前に跪いた。
なんだか、あれだ。
ショックを受けすぎて、オロバスが、お玉を片手にさめざめと泣く団地妻みたいに見えてきてしまった。
アタシはオロバスに手を差し伸べる。
「初めまして、アタシはセエレの今の主で、フミエっていいます。
セエレの昔からの親友の、オロバスさん、で間違いないですか?」
ゆっくりと、オロバスはアタシの手から顔を見上げて、呆然と答えた。
「・・・いかにも、我が地の國の君主の一柱、オロバスである。
セエレが目覚めていたと聴いて、いてもたってもいられず参ったのだが・・・
あれは、本当にセエレなのか?」
アタシは少し苦笑しながら、オロバスの手を掴んで、立ち上がらせる。
「うん、まごうことなく、セエレですね。
ヴァッサーゴ君の予言により、今はアタシと一緒に居てもらってます。
あの格好に関しては、当時メイド服位しかうちになかったのと、とても本人に似合っていてアタシが好きだから、今も着てもらっていますが、中身は普段のキレキレなセエレのままです。
予言に抵触したり関する事以外は、ね?」
すると、オロバスも思い出したのか、ハッという顔になる。
あー、ヴァっさんの予言て、結構悪魔界でも悪名高くて有名なのかな?
「そういえば、雑魚の同輩がそのような戯言を言っていた事がある・・・まさか、それが原因で、あのような有り様になってしまったのか!?」
「まあ、それもありますが、私がご主人様と出逢ってしまったから、こうなったのです、オロバス。」
いつもの調子を取り戻したセエレが、近づいてオロバスへ言う。
そのまま、アタシの腕に絡み付き、頭を肩に乗せながら更に口を開いた。
「ご主人様の魔力は、あのソロモンを凌ぐレベルで強く、美味しくて気持ちいいんです。
私はご主人様と出逢って、本当に今、幸せです。」
「そっ・・・そうか・・・そうなのか。
もう、独身貴族は、我だけとなってしまったのだな・・・」
少し遠い目をしながら、オロバスは呟いた。
それなら、オロバスも好い人見つけられれば、寂しくはないのかな。
何処かに、オロバスのご主人様候補はおらんかのう?
さめざめ泣くオロバスに、どーしたもんかと考えた結果。
「オロバスさん、もし良かったら、今度時間が空いたときにウチの温泉宿に、遊びに来ませんか?」
こんな提案をしていたのだった。
本業が忙しくて、なかなか更新出来ないです。
更新不定期です。




