五十六:聖都①
「あーーーあとさ。」
「はい、何でしょう?神よ。」
追加のお茶に口をつけていたがカップを置き、牧師ーーー大司教が此方をむく。
「もし、もしもの話だよ?」
「ええ。」
「もし、アタシたちに危害を加える奴が現れたらーーーー消すけど、いい?」
本気で、アタシは大司教に伝える。
大司教はにこやかな笑顔のまま、ティーカップを静かに置いた。
「それは、勿論ですとも、神よ。
それは、貴女の権利です。世の悪事は罰せられなくてはなりません。」
「そう。なら、いい。」
アタシは腕輪からメレンゲ菓子を取り出して、大司教に渡す。
「お礼といっては何だけど、これ、家で簡単に作ったモノ、お茶菓子で食べて?」
「かっ・・・神の造りたもうた茶菓子!!
ありがとうございます!!」
「じゃ、アタシは仕事に戻るから・・・あぁ、像の下の入口、ついでに直しておく?」
「ああ、何から何まで感謝致します!!」
うん、じゃあパパッと直して、この国の他の転移陣探しに行こうっと。
アタシたちはまた大司教に先導されて聖堂(という呼び方だった)へ戻り、古来からの姿へと入り口を修復し、更に結界式の自立型AI的な鍵を着けておいた。
鍵のキーワードは特になく、名前と行き先とご用件を伝えると、本当に転移陣が必要な場合にのみ鍵が開く設定だ。
まあ、鍵が開いてもAIが中の陣を動かしてくれるとは限らないけどね。
その作業を行ったあと、大司教はAIにこの国の事を口伝で教える為にそこへ残り、アタシたちは聖堂から外へと出る。
「へえ・・・」
「すっご~い!姉さま、この国?この都?すごく綺麗ね~!」
聖堂自体が小高い丘の上にあるからか、見渡す景色がとても美しく。
山や湖、そして眼下に広がる整然と並ぶ街並み、空と雲、それらが一枚の絵画の様だった。
「あ~・・・あそこに似てるな、この景色。」
「え、姉さま、どこ?」
「あれ・・・京都から比叡山延暦寺行く時の、ケーブルカーから見た景色。」
「あ!確かにそうね!!雲の流れもそうだし、何となく空気も似てるわ!!」
「・・・懐かしいなぁ~」
隣でよっすぃ~も頷き、少しだけ、過去に思いを馳せていると。
「ヒエーザン・・・それが、ご主人様たちの思い出の場所、ですか?」
「あ、うん、セエレ。前に観光に行った場所が、ここの景色とそっくりなんだ。」
ちょっとだけ寂しそうな顔のセエレが、アタシの腕に抱きつく。
あ、会話に入れない、のか。
申し訳ない事したかな?
しかし、その考えはニッコリ笑ったセエレに打ち消される。
「ふふ、本当に美しい景色です。それにまた一つ、ご主人様の過去に触れて、私もその中に一緒に居れて、幸せです。」
「・・・っ、セエレ。」
本当に、セエレは。
いつもは変態だけれど、頭が良いからか、こういう時に先ほどまでの疎外感を感じさせずに、ちゃんと側に寄り添うように対応するんだよな。
何て言うか・・・健気だよな。変態だけど。
思わず、ギュっとセエレを抱き締めて。
「ご、ご主人様!?」
「・・・うん、そうだよね。これから、こうやって皆でいっぱい、綺麗なもの見たり、美味しいモノ食べたりして、沢山、思い出作っていこうな?」
「あ・・・・はい、喜んで、お供します!」
最初は戸惑っていたセエレだったけど、今は笑顔満載に、笑ってくれた。
そのうち、横からメシアも、アタシとセエレの両方に抱きついてきて、よっすぃ~も近づいて苦笑を浮かべて、何だか何時もの雰囲気に戻っていった。
それから。
とりあえず街に降りて、街の中のどこかにあるはずの転移陣跡を探そう、という事になり、てくてく皆で歩きだした。
暫くは高級住宅地のような場所を歩いたが、徐々に賑やかになって。
そのうち、高い塔を備えた、左右に何だか見覚えのあるレリーフの刻まれた建物が見えてきた。
「ああ、ギルドってここにもあるんだな。」
「本当ね!ここで、地図とか見れないかしら?」
「それにしても、こんなにも近くにギルド同士が建っているとは。
色々と分かりやすくて助かりますね。」
とりあえず、冒険者ギルドでこの近辺の地図を見せて貰おうと足を踏み入れると。
ーーーシンっ・・・・
先程迄の喧騒はどこへやら、ギルド内の全員が此方を見て、それから別な方向を見てやり過ごそうとしている。
おい、あの大司教。どんな指示出したんだ。
とりあえず、てくてくカウンターに向かう列に並ぼうとしたら。
ーーーーザッ・・・・
一気に人並みが割れ、カウンターまで一直線に行けるようになった。
「・・・モーゼかよ!?」
「姉さま落ち着いて!?」
思わず突っ込んだら、列の人々がビクついたので、ちょっぴり申し訳なく思いつつ、ご厚意に甘える事にした。
むしろ、この空気から一刻も早く逃げ出したい!!
アタシはカウンターのお姉さん(こちらも笑顔が固まっていた)にこの国の地図を貰い、ついでに古地図も見せて貰ってから、すぐに返却。
感謝を述べてから、一目散にギルドの外へと逃げ出した。
外に出て、建物の影に避難し、改めて皆で固まって、貰った地図を見る。
「・・・ご主人様。」
「うん、わかってる。」
何故、建物の影に隠れたか。
それは、ギルドから外に出たら、町行く通行人すら一気に静まったからだった。
もう、本当に、勘弁してくれ。
アタシたちは普通の街を見て廻りたいんだよ!!
心の中で叫びつつ、地図をざっと見てからセエレとメシアに渡し、アタシは古地図(勝手に複製した)を見つめる。
すると、直ぐに場所のヒントが見つかった。
昔の地図にあって、今の地図にないもの。
それは、『祓地』『浄場』という表記の、多分寺社仏閣関係のような表記の場所。
今の地図では、最初に行った聖堂の敷地にあるだけで、他の表記は見当たらない。
アタシは、乙女モードでここ行こう、ここも行きたいと会話する3人に声をかける。
「じゃあ、買い物終わったら、直しに行こうか?」
「え、先に買い物しても良いの、姉さま!?」
「うん、いいよ。」
そう言うと、みんな嬉しそうに笑った。
「わあ!嬉しい姉さま!!ありがとう!!」
「ありがとうございます、ご主人様。
でも、場所の検討は、大丈夫ですか?」
「うん、多分ここかな?っていう目星はついたから。心配してくれてありがとう。」
そう言ってから、とりあえず堂々と買い物しようという事になり、先ずはギルドで両替をしてもらった。
なお、この国の物価は安いらしく、ギルド内が慌ただしくなる位の金額を両側してしまったらしい。
しっかりとお礼を言って、アタシたちは、街へと繰り出した。
各々行きたい目星をつけた所へと共に赴き、目新しい食材や道具、薬草などを買い付け。
ガールズ(?)達が女性用衣類を見ている時、アタシは併設されている手芸等の材料屋の方を見ていた。
そこそこ大型の店だったので、そろそろ必要かな、とか、この先必要だなと思っていた資材が一気に入手出来て、一人大満足だ。
これは、アタシしか取り出せないように鍵をかけた腕輪内の場所に保管する。
会計を済ませたら、ガールズ(?)達の元へと戻り、更に色々な買い物やお土産購入に付き合って廻っていた。
そうそう、よっすぃ~は確りと、白呼くんの為のお菓子と衣類、あとは一対の刀を買っていた。
そのうちの一刀をよっすぃ~は装備し、満足そうに笑っていたのが、もう、恋する乙女過ぎて内心アタシは悶絶していた。
本当に、この二人は上手くいって欲しい!
まあ、普段見るに、白呼くんの方がグイグイ押してるみたいだから、今のところは大丈夫そうではあるけれどね。
そんなこんなで色々買い物を堪能し、街の中央広場で噴水に腰掛けながら、皆で持ってきた軽食を食べた後。
アタシは本来のお仕事を片付けるべく、気合いを入れて、立ち上がった。
本職が忙しくて、更新がままならない!!




