五十二:静寂と煉獄
翌日。
覚悟を決めたクロム・王一行と共に、曰く付きの山近くの転移陣へ移動した。
外に出ると、とても見晴らしの良い丘の上に建つ教会だった模様で、少し森とは空気が違うせいか、新鮮な気分だ。
天気も良いし、ある意味、ピクニック日和だな!!
「ここからは、徒歩で向かうとしよう。」
そう王が言うので、道程の詳細を聞いたら、これはイケそうだ、と思い。
「セエレ、翔馬出して~」
「承知しました。」
セエレの翔馬をその場でクローン召還し、飛べない人全員分を用意した。
まあ、例の人形の応用だよね。
王一行はとても驚いていたけれど、そのうち王からこっそり、あとでその魔術教えてくれって言われたのは、インテリボーイには内緒だ。
そして、アタシとメシアは自前の羽で行く事にして、王を先頭に出発した。
途中、クロムが黒歴史を注意点として教えてくれたのだが。
あの場所では、魔法が使いづらく、かといって武器での攻撃があまり効かない魔物が多く住んでいる。
その上で、上位種族との交配を狙っている魔物が多いから、クロムは調査の度に嫌な思いをさせられてきた、との事。
それを聞いて同じ体質の黒呼が青ざめていたので、アタシはちょっと考える。
そして其ならば、と言う事で、アタシは翔馬に指示を出し、向かってくる魔物を風圧で跳ねて行く事にした。
まあ、跳ねても死んでないから、無問題!!
まぁ、確かに音をたてずに奇襲するタイプの魔物が多いから、セクハラ紛いの事をするにはうってつけなんだろうけれど・・・
跳ねられてちゃ、意味ないんだよなぁ。
その後、順調にかっ飛ばし、出発から40分程度で目的地の洞窟前に到着した。
「さて、このまま奴の前に行っても良いが、どうするかのぅ?」
王が、少し尻込みしている。
これ、やっぱり過去に痴情の縺れがあったんじゃないのか?
半眼でインテリボーイが『無視して行きますよ。』と言うから、そのまま王を洞窟の奥へ強制連行した。
道中『心の準備をさせてくれんかー!?』とか王が叫んでいたけれど、無視無視。
洞窟の奥、少し明るい広間に到着して、アタシたちは翔馬から降りた。
そこは、氷のような美しい鍾乳洞のホールで、その中央奥に、氷のような玉座があり、そこに、とても美しい者が座っていた。
此方をーーー特に王を見つけたあと、その美しい者は立ち上がり、此方へとやって来た。
天使の様な出で立ちだが音もなく、静かに王の前へと移動して、これまた美しい笑みを漏らす。
「ーーーっ、ひ、久しいのう、クローセルよ。」
「本当に。ずっと待っていたのに、酷いですよ?私は貴方の為に生きていると言うのに。」
「それは済まなかった。おわびーーー」
「でも、放置プレイも、とても甘美で楽しかったです。ご褒美は、ちゃああんと頂きますからね?」
少し妖艶に笑い、王にしなだれかかる、美しき者。
何だか、少し雰囲気がセエレに似てるなぁ。
なんて思ってアタシに抱き着いてるセエレを見やると、驚愕の瞳で美しき者・クローセルを見ていた。
え!?と思いつつ二人を交互に見ていたら。
クローセルもセエレに気が付いて、驚きの表情になっていた。
それに全員気が付き、何も言えない無言の空間になる。
しばらくして、アタシは勇気を持って言葉を発した。
「えっと、二人ともお知り合いーーー」
「セエレ!?なんでこんな所にいる!?というかその格好は何だ!?」
「それはこっちのセリフですクローセル!!どうして貴方がそんな女々しくなっているのです!?」
「それこそこっちの台詞だ!これは、その、あのバカの予言の通りになっただけだ!!お前は何なのだ!」
「私だってそうですよ!」
ああ、これは、二人とも元同僚ってやつなんですね。
一瞬過ったヴァっさんの顔に、ここにも被害者がいたのかーなんて思っていたら。
王が興味深そうに話に混ざってきた。
「二人は友達なのかのう?」
「元同僚ですよ、愛しい方。私はあくまでも貴方だけのモノですからね?」
「そうか、支配人殿と同僚だったのか。世界は広いようで狭いのう。」
「支配人?どういうことです?」
「実はじゃなぁーーー」
王がクローセルにこれ迄の話を語って聴かせている間に、アタシはもう片方に抱き着いてるメシアと共に、セエレから事情を聴くと。
「あの者はクローセル。元同僚で、水にまつわる事柄で役に立つ者です。天使の姿は本人の趣味ですが、昔はもっと雄々しかったはずなのに、あんなにも女々しくなってしまって。」
「聞こえてるぞセエレ!その言葉、そっくり返す!昔は貴様も紳士然としてもっと冷徹だったハズなのに、今の姿は何だ!?女々しい処か女装までしおって!!」
「うるさいですよ、クローセル!ご主人様に出逢ってしまったのですから、変わるのは当然です!それに、この姿は私に似合うから、それも仕方ないでしょう!?」
「くっ・・・確かに似合っているが!」
また口喧嘩が始まりそうだったので、王もアタシも仲裁に入り、話を続ける。
「まさか、クローセルも己の主人を見つけていたとは意外です。そして、こんな山奥で生活している事も。」
そこで、アタシは合点がいった。
「そっか、だから王は、何時でも逢いに来れるように、ここに転移陣を作りたかったんだな!!」
「そ、それはじゃなーーー」
「えっ!?そんな事を、私のために考えてくれていたのですか?ーーー嬉しいっ!!」
クローセルが王に抱きついて、喜びを全身で表現する。
王が少し困ったような表情で此方を見るので、アタシはメシアとセエレを引き剥がして、チャッチャと転移陣を設置した。
「クローセルさん、多分、王は口下手だけど、ずっと貴方の事を気にかけていたんだと思うよ?
これで、いつでもここに帰って来れるから、一度王たちと一緒に出かけて見れば?」
そう、クローセルに言うと、とっても幸せそうな表情で「一緒に行きます!」と言ってくれた。
よーし、これでここの仕事は完了だなー。
振り返り、ちょっと引きながら王を見つめるインテリボーイに声をかけ、このまま隣の山への設置もしてしまうか聴く。
「確かに、時間的には可能そうですが、どうしますか?王。」
「おまっ、仮にもワシ、王なんだけど!?」
「ふふ、少し大人になって渋さが出てきましたね、それも素敵ですよ?愛しい方。」
ふむ、クローセルも褒めて育てるタイプなのかなぁ?
まるでコントの様になってきたけど、結局、これからすぐ隣の山に行くことになり、クローセルは王の翔馬に姫乗りで騎乗して、一緒についてきた。
行きと同様、帰りも風圧で跳ねながら高速移動をし、隣の山脈までやってきた。
クロム曰く、ここは、音で色々セクハラしてくるらしい。
つまり、性的な事を耳から吹き込まれ、その上で媚薬成分のあるガスが辺りを充満させるので、なんの装備もないと、たちまち体に力が入らなくなるとか。
それで、力の抜けた獲物を捕らえ、凌辱するのだと言う事だ。
それはイカンなぁ。
と、言うわけで翔馬でフォーメーションを組み、周囲に外気遮断のバリアを設けて、毎度の事ながら高速移動による風圧で跳ねながら山脈の奥の洞窟までやってきた。
そのまま洞窟へ突入し、やっぱり駄々を捏ねる王を無視しながら、奥の広間へとやって来た。
何だろう、マグマの様に赤い鍾乳石と光で、広間自体が妖しい雰囲気だぞ?
とりあえずバリアを張ったまま翔馬を降り、馬にもアタシたちにも更にバリアを重ねがけして、広間の奥に進むと。
燃え盛る玉座の中心で、触手を使ってソロプレイ遊ばされている美人がいた。
その恍惚とした瞳が王を捕らえた時。
炎を瞬時に消して、触手も全て消していた。
そして、力の入らない足で少しずつ王の前へ行き、クローセルとは反対側にしなだれかかった。
「あはっ・・・久しぶりぃ、しゅぅ・・・ねえ、シよぉ?」
「昔から変わっておらんのう、アミーよ。昔と同じく、ここでそういうのはせんよ。」
「んもぉ、でも、そこが男らしくて好きだよぉ?」
「本当に貴方は昔から自重がありませんね。だから、王も私も昔から心配しているんですよ?」
「クローセルぅ、だってぇ、シュウの事考えてスるの気持ちいいんだもん。」
「はいはい、解っていますよ?」
完全に3人の世界になってしまい、半眼でドン引きな王一向と、更にうわぁ・・。な表情のセエレにより、アタシも色々察した。
とりあえず、適当な隅の場所にチャチャッと転移陣を設置して、ついでにガスが転移先にいかないようにバリアと洗浄魔法も設置してあげた。
設置して皆の元に戻ると、我先にセエレが抱きついてきて、そのまま頭を撫でるとウットリと見上げて来た。
はて?ガスは吸っていないはずだけどなぁ?
不思議に思っていると、セエレが口を開く。
「あの者ーーー歩く色情狂ことアミーは私の元同僚でして。一緒にヴァッサーゴの予言を喰らったのです。元々は攻めな筈なのに、あんな風に堕ちるとは・・・はぁっ、私も少し感化されてしまった、みたいですぅ、ご主人様ぁ・・・」
何その、歩く18禁な感じ。
確かに、少し淫猥な雰囲気はあるけれど、それってただ暇をもて余してるだけなんじゃないのかねぇ?
アタシは腰を擦り付けるセエレに待てと我慢をさせて、あとでご褒美をあげると約束し、他のメンバーを見る。
と、いうか、メシアはセエレと反対のポジションに抱きついてるし、アタシの背中には黒呼が張り付いてる。
クロムは少し迷っていたみたいだけど、結局頬を染めて正面に抱きついてきたし、全員あのアミーの淫気に感化されてるなぁ。
王の部下は顔を真っ赤にしてアミーを見つめているけれど、特に野郎の下半身は正直になっていた。
ふむ、これはイカンなぁ。
「王、ちょっとそこのアミーさんに、手加減するように言ってくれるかなぁ?身動き取れづらいんだ~」
「えっ!?おおう、それはすまなんだ!アミーよ、落ち着きなさい。」
「うふふ、愛しいシュウの為なら、喜んで~」
すぅっと、空気が正常化されて、息が粗かった全員が落ち着きを取り戻した。
ただし、王の部下の様子を見るに、色々と収まってはいないみたいだな。
そこで、王が今回の用件をアミーに伝えると、一気に顔が綻んで、楽しそうな感じになっていた。
「ありがとう、シュウ!僕、ずっとつまらなかったんだよ?これからは、毎晩シュウと一緒にいられるねぇ~」
「それは勘弁じゃが、直ぐに外界に遊びに行けるのは良い事じゃろう?クローセルもアミーも、好きに出かけても良いんじゃよ?」
「うふふ、私は愛しい貴方のお側で、お仕事のお手伝いをしましょうかね?」
「あっ、ズルいクローセル!僕も手伝うー!!」
あー、やっぱり主を見つけた悪魔って、側を離れたくないものなんだなー。
本当に楽しそうに話している姿に、すこし心がほっとした。
そしてふと、セエレを見れば。
うーっとりした瞳で此方を見つめていた。
そのまま、何故か口付けされる。
「愛していますぅ、ご主人様ぁぁ・・・」
え、何のスイッチ入ったの、セエレ!?
我慢させ過ぎたのかな!?
ちょっと混乱していると。
「あっ!?・・・あれぇ?セエレ、だよねぇ?なんでそぉんなに可愛くなっちゃったのおぉぉ?」
流石にアミーもセエレに気が付いたらしい。
セエレは得意気に、更にアタシに抱きついていい放つ。
「ふふ、貴方たちと同じです・・・私も、ご主人様に逢えたのですよ、アミー。」
「へえぇ、そぉなんだぁ?良かったねぇ~!
それにその格好、すっごく可愛い~!僕もそーいう服にしよーっと!」
そう言うと、全裸で色々濡れまくっていたアミーは、一気にかわいい格好へと変化した。
「ねえ、シュウ、似合う~?」
「おお、よく似合っておるぞ?それでは、共に外界にいくかのぅ?」
「うん、行く~!」
こうして、今日やるべき仕事を終え、設置したポータルを使い、皆で深淵の館へと戻ってきた。
その後、王一行は食事の時間まで各々の部屋に隠って出てくる事はなかったらしい。
まあ、何をしてるのかはお察しだ。
アタシたちと言えば、一度火がついたそーいう気分が霧散される事はなかったらしく、何故か嫁候補の皆にアタシ達の寝室に連行されて、そこで、何故か嫁たちのソロプレイを見せつけられるという所業をされたのだが、正直解せぬ。
いや、新月じゃあるまいし、そーいう気分にアタシはなっていないから、まあ、目の保養と思えばいいんだろうか?
あとでメシアに聴いたら、アタシのソロプレイを知ってるから、逆に知って貰う事でおあいこにしようって前から嫁同士で話していたらしい。
まあ、どこが弱そうってわかっただけ、もうけものだったの、かなぁ?
その後、夕飯の時に、インテリボーイも戦士くんも王も、それにチャンネーやクローセルやアミーもツヤツヤとしていたので、もう、本当にお察しな感じで、この夜も更けていったのだった。
王も、隅にはおけない人物なのです。




