五十一:王の実力
王のバカンス二日目。
朝から釈迦力に乱舞する王と、闘鶏たち。
そして、模擬戦をやりまくるBOYS AND GIRLS。
その周囲をひたすら走りまくる闘牛マダム。
うーん、朝からカオスだなぁ。
まったりと珈琲を飲みつつ、窓から見える風景をぼんやり眺める。
庭では珍しく、クロムも龍たちに混じって模擬戦を行っていた。
普段なら物凄くギリギリまで起きなかったりするのに。
どうしたのかねー?と思いつつ観察してると、どうやらクロムは闘いながら、龍達に竜言語魔法の使い方を教えてあげているみたいだ。
小規模ながら、木苺たちも一生懸命練習している。
その中でも、極めて習得が早いのは、意外にも琥珀だったみたいで。
成長が遅くまだ魔力が弱いせいか規模は小さいものの、使える種類がどんどん増えていってるみたいだ。
やっぱ、琥珀は将来大物になりそうだな!(親バカ)
まあ、それ以前に、ああやってクロムが魔法を使っている姿が結構神々しくて、つい目が行ってしまうんだけど。
ーーーあ、眼があった。
と、思ったら、瞬間で顔を真っ赤にして向こうに行っちゃった。照れたのかな?
ふと、龍達を見れば、みんな揃って此方を見てニヤニヤしている。
一体なんなんだ。つーか、真面目に授業を受けなさいよ。
ため息をつきながらも、朝食の準備をする。
今日の朝飯は、焼き魚3種類と、ほうれん草のごま和え、だし巻き玉子、現世から取り寄せてコピーした冷奴(本日は真田豆腐)、つくね入り味噌汁、あとは、米!
なお、洋食が良いなら、チキンライスとスクランブルエッグとソーセージ、パンとコーンスープ、サラダとシリアル、マダム牛乳、果物ジュースのラインナップです!
あとは、ビュッフェ形式で勝手に取って行ってもらおう。
超手抜きでセットアップして、皆が帰ってくるのを、珈琲飲みながら待つ。
お、遠くでメシアが回復魔法を月呼に教えている。
規模は小さいけれど、何とか使えるようになっているみたいだ。
あぁ、そっか。
迦蓮も賽呼も、王の部下と模擬戦してボロボロになってるもんなぁ。
もちろん相手の戦士君もボロボロだけどさ。
ある程度ハッスルして途中休憩挟んだ時に、月呼が駆け寄って3人を治してあげていた。
みんな、仲が良くて何よりだなぁ。
更にその奥では、インテリボーイとチャンネーが、セエレと魔術合戦している。
まあ、外に被害出さないように結界張ってやってるから、あの激しさは此方まで届かないけれど。
てゆーか、電卓叩きながらセエレは応戦してるし。
あれか?
修復費用の相談しながら魔術の練習してるんじゃないの、アレ。
何か書きながらやってるし、ちらりと今日行く町の名前とか見えたけど。
まあ、それに関してはセエレにお任せコースが一番正しい気がするから、勝手にやってもらおうっと。
それにしても、皆集中して鍛練してるなぁ。
あと、1時間位は帰って来ないかもなぁ。
じゃあ、その内にサクッとこの国中の、転移陣直してこよーっと。
アタシは転移部屋に珈琲持って行き、一人でこの国の17箇所の修復作業をパッパと終わらせて、珈琲飲みながら優雅に帰還したのだった。
アタシが帰還して間もなく、皆が朝の鍛練から戻り、ざっと汗を流してから朝食を取っていた。
アタシはキッチンに入って次々無くなる食事の補充無双をする。
そして、〆のフルーツヨーグルトを出して、和やかな会話タイムへと移行した。
アタシはシリアルにマダムミルクを突っ込んで、皆より遅いモーニングを取りながら話を聞く。
「じゃあ、今日からこの国の転移陣の修復を始めますが、一ヶ所につき・・・・このくらいで如何ですか?」
「よかろう、その金額で、可能なら下界の転移陣も修復をお願いしたい」
「宜しいでしょう。ただ、諸経費はキッチリあとで精算して頂きますね?」
「あいわかった。では、今日はドコから始める予定だ?フミエよ?」
お、突然話をふられたぞ?
ちょっと口のなか、まだシャクシャクしてるから、少しだけ待って貰おう。
シリアルを飲み込んで、話を待つ皆を見渡して、一言。
「この国の、全部修復終わったぞ?」
「「「えええええ!?いつの間に!?」」」
「皆が、朝の鍛練してる間に。」
「何と・・・姿が見えないと思ったら!仕事が早いのう。」
「うん、朝御飯作って暇だったから、行ってきた。だから、今日は1日、遊べるよ?」
それを皮切りに、じゃあ今日は何しよう?となり、結果、皆で釣りをすることになった。
因みに、王一行はみんな初めて釣りをするそうなので、よっすぃ~&セエレがガイドとして側に着く事になり、最初の概要や仕掛けなど、親切に説明していた。
その為、アタシは一人で開店準備をせねばならず、料理関係の仕度を途中までやってからメシアに任せ、その後釣り堀の蓋を外して、毎度の如く東北~北海道近海のところから適当ラインナップで海を召喚した。
よしよし、今回も結構魚影が見えるぞ~!
暫くして皆にゴーサインを出すと、一斉に釣りを始める。
特に今回は、初心者ラッキーが発生しやすい王たちがいるので、何が釣れるのか本当に楽しみだ。
とりあえずアタシは皆の姿を見ながら、自分の持ち場へと帰る。
メシアが用意してくれたスポーツドリンク擬きを飲みつつ、炭火や鉄板の様子を確認していると、釣り場が徐々に活気付いてきた。
結構、色んな魚種が釣れてきているみたいだ。
その内、黒呼が困惑しながら大きめなイカを持ってきた。
すぐに預かって下処理をし、一口大に切ったものに澱粉まぶして、鉄板プレス焼きと魔術乾燥したあと、さっと揚げて完了!
簡易的なイカ煎餅を作って黒呼に食べさせてみたら、とても気に入ってくれた。
ならば、あとで焼きそばかお好み焼きでも作ってあげようかな?
そのうち、王の方でも動きがあり、チャンネーがタコを、インテリボーイがマスをつり上げたりして喜んでいたが。
突如、王の竿がとてつもない引きに襲われた。
これは!!!
「よっすぃ~!頼む!!」
アタシはよっすぃ~に叫び、よっすぃ~も即座に応答、王に釣りかたを教えて、王もその全身の筋肉とバネを利用して、少しずつリールを巻き上げる。
そして。
ついぞ姿を現したのは、推定150~200キロ位の大きい鮪だった!!
即座によっすぃ~とセエレが銛を打ち込み、アタシは駆け寄ってマグロ自体を浮かせて陸へと揚げた。
デケぇー!!!
「王、すごい!大物釣れたよ!!」
「ふぅ・・・ふぅ・・・ワシ、久しぶりに本気になったぞぃ。」
「王、見事。」
!!よっすぃ~が!よっすぃ~が誉めた!!
「いや~、しかし魚を釣るというのは、本当に奥が深くて面白いのぅ!!楽しかったぞい!」
「うん、釣ったのを更に食べて、満足するのが釣りの醍醐味だね~!」
「この魚、城に持って帰りたいのぅ。皆に見せてやりたいんじゃ。」
「いいんじゃない?保存はアタシの方で出来るし、何なら魚拓でも取っとく?」
ワイワイと王に相談しつつ、とりあえず製造魔術で大きな紙を作り、麻痺の魔術をかけたマグロに特殊インクを塗布して魚拓を取る。
そして、この国の日付と釣った人の名前を書き込んで、乾燥させて完成!!
その大きな紙と保存用の木筒を王にプレゼントしたら、物凄く喜ばれた。
とりあえず血抜きとか持って帰れるように処理して、アタシの腕輪に収納してあげた。
ついでに、王の腕輪も、特殊制限をかけた無限の腕輪に交換してあげて、王は王だけの私物を入れられる・その上でアタシとメシアだけは王の腕輪に干渉して物を転送・回収出来るようにした。
それから、よっすぃ~が王に腕輪の使い方を教えてあげて、アタシは王の腕輪に釣りたての鮪を転送してあげたのだった。
夜。
疲れた筋肉を温泉で癒し、その後は今日釣りたての魚を使った海鮮尽くしの晩御飯を皆に振る舞った。
シンプルな焼魚もいいけれど、生で味わう丼も美味い!!
前回捕れた魚卵を醤油漬けに仕立てたものも、丼の上に乗せて出したら、これも大人気になったし。
アタシはメシアに、一口サイズの軍艦巻きを数種類作って渡してみたら絶賛で、其を聞いた腹ペコボーイ&ガールたちが要求するので、更に全員分作る羽目にもなった。
まあ、自分で釣った魚を一尾ずつ提供してくれたから、王一行としては美味しく食べれて超満足そうだったから、良かった!
全員満腹になったあと、メシア特製のハーブティーを飲みながら、王に明日はどうするか訪ねる。
すると、とりあえず国内の転移陣の視察は後回しにして、新規に設置して欲しい場所があるのを思い出したから、其処へ行きたいと言う。
なお、仕事兼バカンスで貰った日数は、約5日間だそうで、昨日が初日扱いだそうだ。
アタシは即OKし、一緒にメシア・セエレ・クロム・よっすぃ~の代わりに黒呼が行く事になった。
よっすぃ~は、森の守護者につき、有事になったらその場で転移してもらう、という事になっている。
王に聞けば、その場所から一番近い転移陣まで約3時間との事で、念のため長期戦になる準備を、との事だった。
いや、普通にその場で無理矢理ど◯でもドア展開して帰ってくればいいだけなんだけどね、言わないけど。
とりあえず、明日の行程が決まったので、みんなはこれで解散、という事になった。
そして、明日、王と一緒に出かける者だけがその場に残り、最終打ち合わせとなる。
「で。明日行く所って、結構危険なところなの?」
「・・・よくぞ見抜いたのぅ、フミエよ。」
「いやいや、行く人だけ残すって、其なりの理由なきゃおかしいよね?」
「まあ、そうなんじゃが・・・。」
王がアゴ髭を撫でつつ、少し遠い目をする。
そんな王に、セエレがアタシの腕に抱き付きながら、笑いかけた。
「ふふ、結構な因縁のあるお相手の危険場所に、ご主人様を連れて行くなんて、費用上乗せしてくれという事でしょうかね?」
「支配人殿、それは待って欲しい。因縁、というより、昔は時々様子見がてら遊びに行っていた所でのう。
執務が忙しくて、とんとこの5年、行けてなかっただけに、そこにおる相手が拗ねておるかも知れんのじゃ。」
「なるほど、痴情の縺れですか?上乗せですね。」
「いやいや、相手は女性ではないんじゃ!もっと言えば人間でもなく、むしろ、お主たちに近い感じのよくわからん種族じゃぞ!?」
「知らぬ種族まで手を出すとは、王、恐ろしい子。」
あー、セエレがダークに染まってるー。
そんなセエレをストップさせ、クロムに話を続けさせる。
「で、結局何処に行くのかな?」
「う、うむ、行き先は、ここから真反対の山脈にあるんじゃ。」
それを聴いて、クロムは笑顔のまま固まった。
どうしたのかと、クロムに問いかけると。
「それって、『静寂の神山』と『煉獄の神山』どっち?」
「・・・どちらも、じゃ。」
ふたたび、クロムは固まった。
はて?どうしたんだろう??
しばらく様子を見ていると、ギギギ・・・と此方を向いて、一言。
「断ろうか?」
とりあえず、一体どういう場所なのか、クロムに聴くと。
ちょっと性的に嫌な黒歴史満載な場所だという事だった。
王は、後世『釣王』と言われる程に、釣りが好きになったそうです。
なお、例の魚拓は、王の執務室に飾られるようになったのだとか。
次から、お仕事編?ですな。




