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四十九:仕事

 


 ある晴れた昼下がり。


 マダムの牛乳から改造魔術で遠心分離させた生クリームを作り、メシアに渡してお菓子を作ってもらっていた時。


 クロムから全員に、連絡が入った。



「みんな!あの王が、仕事全部やっつけたから、また逃げて来るって~!

 今日来たいって言ってるけど、いいかな!?」

「お~、大丈夫だぞ~!また夕方に迎えに行こうか~?」

「ん~とね、フミエに個人依頼って事で頼みたいことがあるみたいだから、なる早でギルドまで来れるかなぁ?」

「今直ぐ!?」


 アタシはちらりとメシアをみやる。

 メシアは生クリームの量を確認して、にっこりと言う。


「材料は大丈夫、足りるみたいよ?

 ただ、メシアは今、手が離せないから、早目に行って帰って来てね?」

「うん、わかった。少し離れるけれど、気を付けてな?」

「うふふ、大丈夫よ?お迎えはセエレくんを一緒に連れて行ってね?」



 アタシはクロムに、手を洗ったらセエレと一緒に行く旨告げて、仕度にかかった。






 しばらくして、町に着いたアタシとセエレは、先ずちょっとつまめる物を買ってからギルドへ向かう。


 いや、通信で送って貰えるんだけどね、わざわざお菓子作りを中断させるのも忍びないなぁって思ってさ。


 ギルドに入って、執務室へ向かえば。


 そこには既に正装の王と部下がいた。


「おお、久しいな、フミエ、支配人殿。此度はフミエ、お主にお願いがあるんじゃ。」

「久しぶり、王。依頼って何?」

「それはじゃのう・・・。」


 王からのお願い。

 それは、王都から此方まで来る魔方陣が、経年劣化で痛んできているので、可能ならば修復して欲しい。

 というモノだった。


 あー、確かに、今のところアタシ達にしか直せないかぁ。


 アタシは一度現場を見て、直せるようなら直す旨答え、今度は全員で、その王族のみ使用できる魔方陣のある場所へと向かった。


 なお、王にはギルドに残るよう言ったのだが、

「やだー!!ワシもこんな面白そうなの見てみたいんじゃー!!」

 という駄々の捏ねっぷりに皆が折れて、全員で向かう事になったのだ。


 なお、クロムは直帰すらももぎ取っていたのは、職権乱用なんじゃないかとか思ったのは秘密だ。




 で、結果から言うに。


 簡単すぎる魔方陣だった為、更に耐久性ギガ向上と転移場所拡大もサービスで付けて、修復は完了した。


 10分もかからなかった為、王からのお願いで、そのまま皆で王都に飛び王族側の魔方陣も同じく修復してやった。


 ついでに、深淵の館までの直行ルートも追加してやったので、これは皆に喜ばれた。


 そして。


 何故かお礼に、王からの王室御用達の茶葉やドライフルーツなど、沢山のお土産も貰い、アタシたちは深淵の館へひとっ飛びして帰ってきた。




「ただいま~、王たち連れて来たよ~」

「姉さま、お帰りなさ~い!」

「ほい、王からのお土産。中身は茶葉とか色々だってさ。」

「わぁ!いらっしゃませ、王さん達、お土産ありがとうございます!」


 エプロンをつけたまま、ニッコリ笑うメシアに、王の部下のクールなインテリボーイが照れて動揺していた。

 ーーーやらねぇぞ?


「おお、女将か!久しぶりじゃのう、今宵もまた、世話になりますぞ!」

「うふふ、ゆっくりして行って下さいね?」

「では、私が宿までご案内致しますね。」



 執事モードのセエレが案内して、王達は宿の方へと向かって行った。

 窓から見送る途中、牧場でよっすぃ~と白呼が仲良く闘鶏と戯れているのが見える。

 そこに丁度、ヴェルトと空海がパトロールから帰ってきて、王達を驚かせていた。



 ふと、アタシはメシアを振り返って見ると。

 天使の笑顔のメシアと目が合う。


「うふふ、姉さま、お菓子出来上がったわよ?」

「やった!久しぶりのメシアのお菓子だ!」

「ふふ、そうね。今日は、姉さまの好きな、木苺のパイを焼いたの。」

「あ・・・それは、凄く、嬉しい!!」


 何か新しく始めたり、節目の時とかに何時も作ってくれてた、メシアのラズベリーパイ。

 中のカスタードが工夫してあるのか、木苺の味が染み渡る、そんな優しい味なんだ。


「この世界で、初めて作るお菓子だから、木苺のパイにしてみたの。」

「ありがとう、メシア。これからもまた、一緒にいっぱいお菓子作ろう?」

「うふふ、そうね。森のお菓子やさんっていうのも素敵ね、姉さま。」



 店頭販売かぁ・・・むしろ、販売ワゴンみたいなので売るか、?

 空翔ぶ森のお菓子やさん?

 いや、森の天使のお菓子やさん、みたいな?


 うーん、夢が広がるねぇ~!


 リビングへ戻り、珈琲と紅茶を淹れて、お先にメシアと共にパイを食べる。


 うあああ!幸せだぁぁぁぁ~!


 幸せに包まれながら完食し、そのあとは、女将と料理番の打ち合わせへと移行した。


 今晩のメニューや、明日の朝食など話し合って、その内に戻ってきたセエレも加わり、会議完了!


 粗方の食材を腕輪に入れて、皆で宿の方へと移動した。





 宿の食堂では、ひとっ風呂浴びてスッキリした王一行とクロム、そしてパトロールから帰ってきた龍の子供たちが仲良くおしゃべりしていた。


 月呼は魔術師のチャンネーとガールズトーク、野郎二人と戦士ボーイはボーイズトークして仲が良さそうである。


 よっすぃ~&白呼は二人で色々お話ししてまったりしているので、それには触れずに、アタシはそっとキッチンで無双し始めた。

 メシアとセエレ、黒呼が飲み物を作って皆に渡してくれて、すこしご飯前の会話を楽しんで貰った。


 アタシは無双しつつ、一体だけ薬の調合に廻して胃薬を作成する。

 だって、王おじいちゃんが疲れで少しやつれてきているんだもの!


 そんなこんなで、今日のメニューは


 マグロユッケ・鮭チタタプ・刺身・鮭ネギトロ丼・サンマの塩焼き・魚の煮付け・新鮮サラダ・具沢山すいとん入りオハウ


 以上のラインナップにした。

 食後のデザートは、メシアの焼いたフルーツパイでござる。

 え?木苺のパイ?それはアタシとメシアで全て平らげましたとも!



 もちろん、此度も食卓は戦場です!


 毎度の事ながら、皆の食欲はどうなっているのやら。


 そのうち、うどんとか麺類にも挑戦しようかね?

 あと、久しぶりに蕎麦食べたいなぁ。


 そんな事を考えつつ、とにかく料理無双しておかわりの嵐をひたすら交わし、デザートタイムへ突入!


 インテリボーイがしきりにメシアを褒め称えておる。やらねえぞ!?


 そして、食後の一服をしながら、王がアタシに更なる依頼を発注しだした。


 それは、

「この世界にある他の転移陣を、時間がかかっても良いから、直して欲しい」

 というもの。

 詳しく聞くと、この天上のスイレン国だけでも何ヵ所かあるが劣化が激しく、それ以上に下界の転移陣は崩壊の兆しがあって、やたらと下界に行くことが出来なくなっている、なので、全国廻って修復して欲しい、というお願いだった。


 対価は、アタシ達が好きに決めて良いというので、それ相応の一ヶ所辺りの修復金額を決めて、その上で旅費交通費無料、あと直す直さないはアタシがその土地の王と合って決める事、あとはきちんと相手に話を着けておくこと、そして、アタシ達は何かに属しはしないから、そういう話はノーセンキューな事を一緒に相手に話す事、あとは、アタシ達は仕事はするけど基本フリーダムな事を相手に伝える事を約束して、クロム経由で仕事を承ける事にした。


 いやー、下界の食材とか環境とか、やっぱり気になるじゃない?

 迫害されてる無罪の魔物とかいたら、深淵の森に保護出来るしさー。

 それに、アタシたちは好きに移動出来るから、苦痛なのは行きだけで、帰りは普通に家に帰って来れるだろうし?


 王は大喜びで、とりあえずスイレン国の転移陣の場所を教えてくれたので、明日サクッと行って全部直して来ようと思う。

 因みに、我が家の転移陣に王室の転移陣をリンクさせたら、それ以外の場所のポータルまで記録を奪っ・・・複製吸収したらしく、この国内の転移陣の場所には、深淵の館の者だったら腕輪経由で許可して、直ぐに行けるんだよね~!


 まあ、王には教えないけど。


 なお、修復費用に関しては、クロムとセエレの黒い双子にお任せしたので、しばらく安泰なぐらい収入は増えるだろう。


 それに。


 その転移陣は必要な時はアタシ達も使って良いって事になったから、いつでも王都に行けるぞー!!

 今度、偵察部隊と商人部隊で、王都へ販路拡大の為に一度行ってみようと思う。



 そう思いつつ、アタシは王に、特製のよく効く胃薬を大容量でプレゼントしてみた。

 王は中身が何かを聞いてとても喜んでくれ、何故かインテリボーイからも感謝を言われた。

 どうやら、時々胃痛が過ぎて寝込む事があるらしく、そのせいで執務が溜まっていくので何とかしたいと思っていたらしい。

 プラスアルファで、メシアも何か思う所があったらしく、メシア特製の体に良いハーブティーもプレゼントされていた。

 王は本当に喜んでいてくれたが、その姿がさながら敬老の日の様だったとは言えない。

 王、赤いちゃんちゃんことか、似合うだろうなぁ。




 こうして、王のバカンス初日は過ぎていったのだった。





王の現実逃避、もといバカンス初日、完了!!


次のお話は、外伝的なお話しです~!

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