四十八:復活
俗に言う『復活のじゅもん』が完成した翌日。
アタシ・メシア・セエレ・よっすぃ~・黒呼・木苺は、早朝に狼の洞窟へとやって来た。
奥へと向かい、群れのボスの白銀狼と母銀狼に、これ迄の経緯を話し、復活の許可を得る。
そして。
アタシとメシアが各々術を行使し、黒呼とよっすぃ~がサポート、木苺とセエレと他の狼たちが、回復後の狼のサポートに回る事になり、復活の作業を開始した。
術式多重起動により、一度にアタシとメシア合わせて15匹ずつの復活で、連続復活を繰り返して約一時間ちょっとの時間で、全員復活を完了させた。
「あ~!流石に疲れたー!!」
「姉さま、メシアも疲れたぁ~!」
アタシとメシアは、その場でごろんと寝転がる。
よっすぃ~はそんなメシアを抱えて、隅の方にふかふかのラグを敷いて、その上でメシアを休ませてくれた。
アタシは・・・そこへ匍匐前進で近寄って行く。
そして、やっとラグに辿り着くと、黒呼が膝枕してくれた。
ほんとに、黒呼は出来る嫁だよね~。
そのまま一眠りして目を覚ます。
見上げる先は、優しい微笑みの黒呼。
そして、その背後にはすんげえ酷い表情の、セエレがいた。
「・・・セエレ、お前・・・。」
「あっ!ご主人様ぁ!!お目覚めですか?
でも、膝枕なら私に言ってくださっても良いのに・・・。」
「お前、さっきの顔・・・すごい酷かったけど、何かあったのか?」
「えっ!?・・・・いや、何も、ないですよ。」
何か、すっげえハンカチ咥えてキィィ!みたいな酷い顔してたから、気になるんですが。
寝てる間に、アタシ、また何かやらかしたのか!?
すっげー不安なんですけど。
そんなアタシを見て、黒呼は口を開く。
「フミエが何かした訳じゃなく、セエレもフミエを膝枕したかっただけだ。気にするな。」
其を聞いて、子供のおもちゃの取り合いみたいなものか、と安心する。
やらかしてなきゃ、それでいいんだよ。
ふと隣を見れば、メシアはまだ眼が覚めない様子だった。
よっすぃ~が簡易的に枕を作って用意してくれたお陰で、すやすやと眠っている。
ふと、出入り口の方を見れば、新しく仲間になる狼たちがオリエンテーションみたいな事をやっていた。
良かった、元気になって。
遊び回ったり走ったりしてる姿を見て、心底、復活させて良かったと思った。
しばらくして、メシアが眼を覚ました所で、アタシたちは狼に宜しく言いつつ、館へと帰ってきた。
途中通りかかった、日々拡大されていく畑で、セエレの部下達が楽しそうに、使い魔を放って収穫作業している。
そうか、ああやって大量の使い魔を使役することで、沢山の実りを生んでいるのか。
果樹の収穫も同じくで、ただ、とても繊細な収穫作業となる苺やベリー系など、実が弱いものだけ、自ら収穫している。
それを見ていたら、アタシは、あ!と思い出す。
そういえば、ひとつだけやっていなかったなあと。
館に帰り、直ぐに館の裏手横、川に近い場所にある広大な空き地にガッツリ深めな穴を掘る。
そして、内側を魔力コーティングして、大きめな風呂蓋のようなものを上に被せ巻き取り式の装置を設置、その後周囲に木の長椅子や、東屋のような屋根を設置し、屋敷まで伸ばして裏口まで作成。
あとは、飛び石も作って、雨でも移動出来るようにする。
よし、これで召還釣り堀が完成したぜ!!
いや~、そういえば、海のお魚が売れ過ぎて残り少なくなってきていたんだよねぇ。
よっすぃ~にも見てもらって、あとはちょこちょこ内装を変え、釣竿等道具はよっすぃ~チョイスのものを現世から召還・複製・そっと帰還を繰り返して揃え、館の全員分とセエレの駐在部下の分と予備30セットくらいを用意した。
結構一人分だけでも大量だったので、各々自分の無限の腕輪に名前を書いて収納していたが、アタシはふと気がついて東屋の一部に倉庫を作り、そこにも数セットだけ、来客用で置いておいた。
それと共に、調理セットやキャンプ用の机やカトラリー、魔動式コンロやバーベキューセットなども収納する。
これで、このデカイ釣り堀でいつでも海釣りが余す事なく堪能出来るぜ!!
まあ、召還出来る人がいないと、使えないけどさ。
自動召還&帰還にしてもいいけれど、誰かがこの深い釣り堀に池ポチャして、その時に運悪く帰還の魔術が発動したら事だし。
安全面を考えて、アタシかよっすぃ~が付いてないと出来ない事にした。
ここまでやって、メシアがランチ出来た~と声をかけてくれて、お昼を過ぎている事が発覚。
釣りはランチのあとで、という事になった。
皆でしっかりご飯と水分を取り、汚れても良いような動きやすい服に着替え、タオルと帽子、あとは念のためライジャケを腰に装備して、全員で釣り堀へとやって来た。
各々が思い思いの場所に陣取り、よっすぃ~指導の元、釣りの仕掛けを作っていく。
その間にあたしは、大きな作業台と大きなまな板を数個出し、解体用の包丁と調理器具、大きなゴミ入れペールを用意しておく。
釣ったら速攻で絞めて、食べられるように!!
そして、全員仕掛けが終わったみたいなので、生け簀の蓋を開けて、特殊召喚!!
「今回は、北海道周辺からランダム召還!!」
前回同様、適当に海流を3箇所位ピックアップして、そこの海域の海そのもので、生け簀を満たした。
まあ、前回は津軽海峡周辺の海域から拝借したみたいなんだけどね。
現世の人間に見つかると、異常現象ってまた研究されてややこしくなるだろうし、人目につかない所から召還されてるんだろうな。
おお、結構魚影が見えるぞ!?
因みにこの生け簀、横に広い状態で屋敷に沿って作られているせいで、相当な海量を召還することになったので、これだけいてくれないと困る。
各々がよっすぃ~の合図で釣りを始め、しばらくすると、小型の魚が捕れ始める。
釣れてる魚種から見るに、使ってる竿によって仕掛けが各々違うっぽい。
早速、フランと木苺が、釣れた魚を持ってきた。
おっ!?サンマじゃん!!
じゃあ、現世は夏~初秋位の季節なのかな?
アタシは早速炭火を確認し、その場でサンマを処理して魚グリルで焼く。
釣ったばかりだと、サンマにも鱗があるから気をつけないとねー
あと、お子様だと、ワタ取ってあげないと苦いって騒ぐからねぇ。
焼きたてのサンマを大根おろしと醤油かけて渡してみると。
二人とも恐る恐る一口食べ、目を開いたかと思えば猛烈に食べだした!
うん、サンマ美味しいよね。
ただ、もう少し後のシーズンの方がもっと脂乗って美味しいはずだなぁ。
そんな事を考えてる間にごちそうさまをして、二人は再び釣りに向かってしまった。
釣り場をまったり見渡すと、各々楽しそうに釣りをしている。
まあ、一人だけフル装備で、ガンガンに鮪を釣り上げてる乙女がいるけどね・・・その側にはセエレが控え、次々血抜きをして収納している。
やっぱり、サイズ的に初秋あたりかなぁ?
他にも、鮭やマス、ホッケやヒラメ・カレイ、アイナメやタコも釣れていた。
そういえば、タコが釣れた時の全員のパニックぶりには凄く笑った!
結構大きなサイズで、釣り上げたのが月呼だけに、野郎二人も何とかしたくても迂闊に触れず、龍たちも逃げ出す有り様だった。
月呼は乙女モードに入って「何とかしておくんなましぃ~!」って叫んでるし、タコは迦蓮目掛けて潮吹くし。
余りの騒ぎっぷりに駆けつけて、笑いながらタコを外してあげたのが、一番面白かった!
そのタコを処理して、サクッと火を通してから切り、シュババッとたこ焼きを作って月呼と野郎二人に食べさせたら、めちゃくちゃ美味いってショック受けてたな~!
よっすぃ~は、懐かしいって言ってたし。
・・・あれ?懐かしいって??
もしかして、よっすぃ~って、本当に現世のよっすぃ~のドッペルゲンガーなのかもなぁ?
それなら、こんなアタシと戦友やってくれてるのにも納得だ。
まだまだタコがあるので、またの機会にたこ焼き作ってあげよう。
夕方近くになり、みんなお疲れ様だったので、最後はアタシが網をぶん投げてある程度水揚げし、海を帰還させて釣り終了となった。
館に帰って今日の釣果を見れば、各種ものすごい数のストックが釣られていた。
まあ、一番最後の投網漁が効いてるのかもしれないが。
でも、鮭が手に入ったのは、正直嬉しい!!
今日の夕飯は鮭のちゃんちゃん焼きにしよう!
あと、刺身と煮つけといももちとオハウとサラダ、あとはチタタプ作って酒のお供にしようっと。
途中から畑を終えたセエレの部下もがんばって釣っていたから、館の全員分を全力で作って、その日もディナーは戦場と化したのだった。
これで、町に卸す魚の量は更に増え、魚屋のおっちゃんは堅実なる職人富豪へと登っていくのだった。




