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四十六:母は強し

 

 翌日。


 朝の鍛練により、野郎二人も闘える、と言うことが判明したので、今日のパトロールは月呼と共に顔見せも兼ねて二人も同行、という事になった。


 必然的に留守番部隊となった黒呼は、うっかりアタシの部屋に来て銀狼の真実を知ってしまい、よっすぃ~の手伝いをしてくれる事になった。


 黒呼にも、こんな心が痛む事を押し付けてしまった気がして謝れば、


「別に構わないし、こういう事、本当はまた自分だけで抱えようとしてたんだろ?

 だったら、気持ちだけでも、俺にも分けて欲しいし、一緒にフミエを支えて生きたいって思ってるから。」


 と、男前な台詞を言ってくれた。

 それに感謝して、アタシたちは古書の解析とヴァっさんの陣の解析に勤しんだ。


 なお、琥珀はよっすぃ~の隣で百科事典と国語辞典を読み、知識を深めている。

 この子、将来は猛烈に頭が良くなるんじゃないかしら?(親バカ)



 時々ティーブレイクを挟みつつ作業を進めていき、アタシはひとつの魔方陣を思い付く。


 それを何度か書き直したあと、メシア・セエレに校正してもらい、とりあえず新魔術式第一段として、実験の為、外に出た。


 地に闘鶏から貰った卵を置き、皆と、その後ろに闘鶏のキングも見守りながら、術式を展開する。


「あー、こう展開してこうやって、こう!

 ーーーよし、OK!いくよ!急激成長(ラスクヴェクスト)!!」


 5色の光が魔方陣から放たれ、卵を包み込む。


 すると、卵が内側からひび割れ、可愛い雛が現れた。と思ったら、すくすく成長していき、最終的には物凄く筋肉ムキムキで王者の風格な闘鶏へと進化した!!


 そして、そこで魔法の光は消え、残ったのは産まれたばかり(?)の闘鶏(最終形態)だった。


 ぼうっと観察するアタシ達より先に、キングが近寄って意志疎通を図っている。

 おお、よく見ればキングの方が筋肉隆々でデカイけれど、何だか親子のように見えるぞ。


 ある程度意志疎通して会話したあと、キングが振り向いて『大成功!!』と甲高く鳴いた。



 いやー、良かった!!

 皆も喜んで、「この組み立てかたの陣形なら、こうすれば回復に使える」とか、少し目の前が開いて見えてきた感覚がある!


 なお、キングに連れられて近寄ってきた闘鶏にキングジュニアと名付けて、早速ジュニアはよっすぃ~に忠誠を誓っていたのだった。


 



 で、だ。


 先程の陣は卵を一気に成長させたわけだが。


 卵には既に魂が宿っているわけで。


 じゃあ、先ほどの術を逆転させたもので、毛皮を赤子未満の細胞まで戻して、その上で反魂の術式にて魂を入れ、それから急激成長をさせたら、どうなるか?


 この陣を切欠に、色々出来ることが、その視野が広がった。


 あとは、三重重ねの魔方陣と、その中の反魂の陣をより適応させれば、あの狼は復活するはずだ。


 アタシは確実に一歩前に進んだ気がして、少し嬉しくなるのだった。




 その後、パトロールから帰ってきた皆がジュニアに驚き、その戦闘能力に管を巻いていた。


 それと共に、よっすぃ~も手加減なしで新参野郎二人に稽古を付けるものだから、この二人もとても強く成長するのだろう。


 迦蓮はどちらかというと格闘が得意で、術式は炎系、賽呼は槍術・棒術・あとは呪符系の術式を使うみたいだ。


 其の稽古を見つめる月呼だが、二人が術を使う時に見せる真剣な表情が好きっぽい。

 確かに、普段は性格がチャラ男とクールヤンデレな感じだけれど、戦いの時は真面目だし男らしいもんなあ。

 いやあ、少し頬を染めてずっと見つめてる姿は、本当に女性らしくて、いいね!


 因みに、相対するよっすぃ~は一つも息が乱れることなく、淡々とあしらっていて、それも清々しい。

 そのよっすぃ~を少し頬染めて見つめるのが・・・まさかの白呼くんで。

 うっとりと

「はぁ・・・よっすぃ~さんカッコいい・・」

 とか言ってるし。

 ついに、よっすぃ~にもモテ期が来たのかな?


 まあ、何にせよ全て上手く纏まって何よりだわ。


 そのとき、クロムが仕事から帰ってきたので訓練は次第に撤収となり、また皆で夕飯の食卓を囲むのだった。






 それから、平和な日々が結構続いて。


 野郎二人も深淵の森に馴染んで、時々セエレの部下と一緒に収穫手伝ったり、森の魔物の子供と戯れたりして、緩やかに生活していた時。



 あの、巨体の母銀が、産気付いて牧場に現れた。


 そういえば、既にあの時お腹大きかったから、あれから暫くの期間が空いたのだと気付かされる。


 急遽、巨体厩舎を解放して寝かせ、メシアとセエレ、よっすぃ~が付きっきりで看病し、月呼と野郎二人は龍のサポート、黒呼と白呼はアタシとよっすぃ~のサポートとして、一晩中皆でがんばった。


 その甲斐あってか、朝日が顔を出す頃。


 母狼は、元気な8匹の仔を産んだ。


 メシアが体力を回復させながら、後の始末の回復の早い仕方を教えて母狼は実践し、それからゆったりと仔狼を暖めつつ授乳していた。


 きぃとヴェルトが喜んで、洞窟へと知らせに駆け出し。


 産まれた所を目の当たりにした男性陣は、感動して微笑み合っていた。


 なお、セエレは体力を回復させるべく、母狼にセエレのミルクを飲ませていたり、

 アタシは母狼と仔狼を慎重に浮遊させて、よっすぃ~と共に汚れた寝具の交換をし、メシアは一緒に浮かんで母狼の傷を癒していた。


 作業も滞りなく終わり、改めて思い返してみれば。


 新しく家族が出来るって、とても、幸せな事なのかもしれないな、と思う。


 ふと、母狼が何か言いたそうにしてるので、近づいて話しかけてみれば。


「メスニトッテ、オスニモトメラレ、コドモツクルノハ、トテモシアワセ。

 アナタハ、マモノトオナジダカラ、コヅクリシタイアイテ、ソレガ、ツガイナハズ。

 ナニヲナヤムノ?

 コドモイル、マイニチ、タノシイワヨ?」


 直球なアドバイスをくれた。


 うん、悩んでるって言うか、時間の問題って言うか。


 例えば番になったとして。


 アタシ、思ったよりも焼きもち焼きだし、嫁への夜伽はしつこいし(過去記憶より抜粋)。


 自分がどうなるのか、正直怖いって部分もあるんだよね。


 で、何より、アタシと番になることで、嫁から笑顔が無くなるのが、一番、怖い。

 いつも、毎日疲労困憊にさせるんじゃないかとか、迷惑かけるんじゃないかとか。

 きちんと家族全員守って、食って行けるようにしなきゃ、とか。


 こういう事って、将来旦那になる者しかわからない感覚なのかも知れないなあ。

 今度、野郎二人に聞いてみようか。


 と、その時、少し離れたところに野郎二人がいたので、母狼と別れて近づく。


「グスッ・・・元気に産まれて来て良かった!」

「ああ、本当に。母とは偉大なものだな。」


 何だか、母狼に感動しているみたいだ。


 そんな二人に、ちょっと木の影に来て貰い、今、母狼に言われた事を相談した。

 あ、迦蓮が驚いて、賽呼はちよっと眉根を寄せて、うわぁ・・・って顔で見てる。


 変なこと言ったかなあ?


「お前さ、そんなの夫婦になってから、どう支え合って生きてくか考えればいいじゃん!?

 一番大事なのは、ずーっと側にいて、誰にも渡したくないって事じゃん!?

 それが、好きとか愛じゃん!?」

「左様。そして、自分を想ってくれるなら、その想いに応えて、逆に愛し尽くす。お互いが他の付け入る隙を与えない。

 それの積み重なりが、夫婦だろう?

 確かに、相手の事を考えて夜伽はすべきだろうが、その相手が動けぬのなら、己が動けばいい。

 妻を護るのは、旦那の役目、役得であろう?」


 二人とも、漢らしくてスゲェ!!

 月呼、すげースパダリが君の将来の旦那様だよ!


 でも、言われた事に、凄く納得した。


 先の不安も、何もかもを分かち合って生きていけばいいんだなぁ。


 そう、考えたら。


 過去のアタシの成分みたいな何かが、半分くらい馴染んだ気がした。



 野郎二人に感謝して、アタシは作業する皆の元に戻る。


 うごうごしてる仔狼、本当に可愛いなぁ。


 やっぱり、アタシも自分の子供、欲しいや。


 それで、嫁4人と家族皆で、月呼夫婦やよっすぃ~&白呼、龍たちと共に、ここで幸せに暮らしていければ、それはとても幸せだろうなぁ。


 そんな、夢を描いてしまった。


 そして、気が付く。


 アタシはやっぱり、メシアもセエレも黒呼もクロムも、大切で、大好きなんだって。




 うん、次の新月は。


 少しだけ、考えよう、かな。




母狼は、龍の子供たちからのタレコミにより、一肌脱いだって感じです。


まあ、動物的魔物の為、表現が真っ直ぐ刺さって痛いという効果がある模様。

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