四十三:新月
★最後らへんに、それなりの表現が出てきます。
さて。
夜も更けてきたことだし。
とりあえず月の様子でも見ようかね?
アタシは夕食後、風呂に入ったあとに一人、外へと出かけた。
目指すは、森の入口のバカ高い大木の上。
そこから、空に浮かぶ月を眺める。
うん、これは、欠けてきている。
ヴァっさんの予言では、新月が来る度に、発情期が来るんだと。
多分、そうなったら。
過去の記憶を掘り起こしてみても、メシアが絶叫するレベルでやらかすのは目に見えている。
なら、アタシが取るべき道はひとつ。
その日は、誰とも会わない!!
アタシはあと何日で新月になるか、必死で計算しまくった上で、どう対応するか対策を練るのだった。
一方その頃、セエレの部屋。
そこに、セエレ・メシア・黒呼・クロムと、何故か仲裁&進行役でよっすぃ~がいた。
もちろん議題は、ヴァっさんの予言についてで。
何のかのと纏まっていく内容に、よっすぃ~が心の底から溜め息を吐き出す事になっていた。
それから数日が経ち。
アタシはよっすぃ~を呼び出して、二人で少し離れた狼達の巣の上、少し荒れた山の頂上付近に降り立つ。
そこで、アタシはよっすぃ~にお願い事をし、よっすぃ~からも意見を聞いて、アタシたちは手をガシッと組んだ。
やっぱり、持つべきものは、戦友だね!!!
その間にも、再生魔術の研究は進めていたけれど、何処か皆、上の空で。
結局、大量にある本の読破も、停滞しつつあるのだった。
そして、月が全て欠ける前夜。
アタシは全ての準備を終え、手紙をよっすぃ~に託し、館の一室に何重にも結界を張って自分でも簡単には解除出来ないようにし、引きこもったのだった。
「姉さま!一体何処にいるのぉ!?」
「ご主人様!せめて、私だけでもお側に置いてくださいっ!!」
「フミエ、・・・っ、逢いたい!!」
「僕、人より頑丈だから、側にいさせてよぉ!!」
ーーーーああ、通信が、うるさい。
アタシは腕輪から魔力を抜いて、ベッドに倒れ込んだ体制のまま、眼を閉じる。
多分、引きこもる旨の手紙を、皆見たのだろう。
外からはこの部屋はわからないようになっているが、
見つけられても厄介だし、
このままうっかり意識を失って、
誰かを引き摺り込んでコトに及んでも、いけない。
身体が、熱い。
次々に思い出される、
過去の情事の最中のメシアの姿とか、
魔力吸いすぎてエロい顔のセエレとか、
顔を紅くして上目遣いの黒呼とか、
ちょっと切なそうな表情で真っ赤になるクロムとか、
色々思い出しては、頭から振り払う様にする。
これは、一人で処理したら、あっという間にその感情に呑み込まれると解っているから。
だから、アタシは必死で、全ての感情に抗って、耐えるのだったーーー。
翌朝。
窓から光が差して、朝を迎えた。
なのに、身体の熱さは、更に増していて。
どうしよう、ずっと、このままなのかな?
ああ、誰か、抱きてぇなぁーーーー
と、扉に向かう途中で我に帰って、自分を戒める。
ダメだ、ダメだ、我慢しろ、我慢しろ!!!
生理的に溢れ出る涙もそのままに、アタシは只管に自分の身体を抱き締め、我慢し続けるのだった。
一方その頃、階下では。
メシア・セエレ・黒呼・クロム・よっすぃ~が、未来を見通す力を持つヴァっさんに、色々な事の次第を視てもらって、慌ててアタシと連絡を取ろうとしてる事なんて、思いもよらなかった。
そして、また、日が暮れる頃。
もう、アタシは、限界ギリギリで、気が狂いそうになっていた。
もう、ダメだ。
日が暮れたのに、月が戻ったのに、止まらない。
もう、限界だ。止まらない。
ならば、最初に謝っておこう。
そう思い、通信を立ち上げると。
「姉さま、姉さま、どこ!?何処にいるの!?」
「ご主人様、今、ご主人様は大変なんです!!」
「フミエ、このまま我慢する方法はダメなんだ!」
「あの悪魔、ヴァッサーゴに聞いたんだ!だから、僕達を側に置いてよ!!」
ーーーー?
どういう事だ??
「フミエ、このままだと、世界を巻き込んで、死ぬって。
諦めて、全員と寝て、嫁さんに、しちゃえば?」
よっすぃ~が!
よっすぃ~が、こんなに喋った!?
というか、内容が正直衝撃過ぎて、どういうこった!?
「よっすぃ~・・・っ、詳しくっ。」
絞り出す様に告げれば。
淡々とよっすぃ~が教えてくれた。
ヴァっさんが、引き込もって我慢するアタシを心配して、未来を視た。
我慢し過ぎて自我を失い、
過去の辛かったこととか、黒い思念に呑まれたアタシは。
メシアが殺された時と同じ精神状態になって。
世界の全てに、特に人間に呪詛を撒き散らしながら、
この世界を魔力全開で滅ぼしていく。
そんな、アタシが見えたそうだ。
ヤバくねぇか!?
よっすぃ~の後ろで、泣きながら逢いたいと言う、メシア。
ああ、もう、いいよね?
結局アタシは、扉を開けて4人を部屋に迎え入れる事はなく。
うっかり、通信を切るのを忘れて。
幾つか繋げた、広いベッドの上でただ一人。
とってもキモチイイ事を
脳裏に過った相手へ
妄想を叩き付けるが如く
気が済むまでやってしまったのだったーーーーー
本能には、抗えないのです。
抗えば、死、あるのみ。




